俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その40

2010年04月24日 23時19分24秒 | 小説『ファルコとの出会い』

「ライラットの神話。オレもむかし聞いたことがあります」
「そうだろうさ。コーネリアの歴史……いや、アニマノイドの歴史以前から伝わる話だものな」
「それはつまり、我々はいずれ宇宙へと出てゆく宿命を背負っていたということになりませんか。地上から去っていった神を追って、いつかは自分たちも天上に旅するのだという……。宇宙への憧れが、遠い先祖から我々に受け継がれてきたんだ。この宇宙時代は、まさに、その神話の続きなのかもしれません」
「なんとね。フォックス、おまえさんがそんなにロマンを語る男だったとは知らなかったな」
「宇宙を飛んでいると、不思議な感覚に包まれることがあるんです。オレはここに来るはずだった。遠い昔から、それは決まっていた。そのために膨大な年月をかけて、オレ以前の誰かが道を作ってくれたんだという感覚。生まれ育った星を離れて、機体なしには生きられない真空に浮かんでいるのに、不自然なことをしているとは思わない。まるで、赤く染まった夕焼け空を見ながら、自分のねぐらを目指して飛んでいるような安心感なんです」
 むう、という唸り声が食卓の上にひねり出された。
「フォックス、それは。その感覚には、ワシも覚えがある。宇宙を飛ぶ恐怖を乗り越えるための高揚が、そう感じさせるのかと思っていたが」
「ペッピーも、感じたことがあるのか? もしかして、父さんも? いや、宇宙を飛んでいるものは、みんな……」
「そこまで!」
 ビビアンの声が、フォックスとペッピーの宇宙談義をかき消した。
「戦闘機乗り同士だけで盛り上がって話し込んで、ビビアン・ヘア手製のシチューを冷ましてしまう気? このまま話を進めていたら、『宇宙がオレ達を呼んでいるんだ』なんて結論にしちゃうんでしょ? 全くオトコってのは。このシチューの中のニンジンもジャガイモも、みんな土の中からとれたものなのよ。宇宙で野菜がとれますかっての。宇宙に呼ばれたかったら、空気なしでも生きられる体になってからにすることね。けれどその前に、お皿の中を空にしてしまうの!」
 顔を見合わせた二人が、ヒソヒソと言葉を交わす。
「いったい何を怒っとるんだ。うちのかみさんは」
「わからないよ。オレに聞かれても」
「いいから。お食べなさい」
 食卓の向こうから発される圧力に負けて、二人は無言でシチューを口に運び始めた。

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