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俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ベノム陥落」その5

2009年05月18日 10時49分56秒 | 小説『ベノム陥落』
 あの日の自分とは、随分違うものになってしまった気がする。
 あの戦士の肩の上で、自分の中に生まれた火は、いつしか変質してしまった。どこかで道を間違えた。そんな気がする。
 それと同時に、そんなガキの時分に抱いた思いが、そのまま叶うわけもない。とも思う。生きるか死ぬかの状況を数限りなくくぐり抜けねばならないのだ。
 甘っちょろい理想を、いつまでも掲げていられるほど生易しい世界じゃない。

 だがどちらにしろ。俺はまもなく死ぬ。
 そこまで考えると、ウルフの緊張は糸を切るようにとぎれた。
 ウルフェンは落下していた。ベノムの大地が目前に迫っている。地表に激突し、粉々に吹き飛ぶ自分の姿が脳裏に浮かんだ。

 記憶が、再びあふれ出した。銀白色の戦士の背中。振り向きもせずに去ってゆく。続々と集まる狼の戦士たち。兵装に身を包んだ狼たちは雄たけびを上げ戦場へと赴く。
 それがウルフの記憶に残る彼等の最後の姿だ。
 それからは生き延びることだけを考えた。泥と砂塵にまみれ、コーネリア正規軍の監視をくぐり抜けた。
 危ない橋を渡るたびに仲間が増えた。いつしか悪党の親玉になっていた。
 イヌ族(ロキオン)とサル族(ハール)の種族闘争は、コーネリアを混乱させていた。数で勝るロキオンが、ハールを辺境の地に追いやる。それに反発したハールが各地で暴動を起こす。捕らえられたハールの多くは重犯罪人としてベノム送りにされる。おおむねそういう図式だった。


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