俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その52

2011年05月31日 20時33分36秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 何だって? どういうこと? ペパー将軍が? 初仕事? 請け負ったの? 
 湧き上がる?マークを制して、ペッピーは二人に事の次第を話して聞かせた。
 続いて作戦の詳細までを話し合うわけにはいかなかった。その前に山積みの書類を何とかしてしまわなければならなかったからだ。しかし手は3人に増えていたし、先程まであぶくのように立ち上ってきていた悪い夢も、意識の深層へと姿を消していて、フォックスの心は軽かった。
 書類の山が姿を消し、やっとテーブルの天板が見えてきたところで、ペッピーは二人に資料を手渡した。
「標的は」
 すっかり遊撃隊の顔つきを取り戻し、重々しく言う。まるで国際テロリストの幹部を暗殺しにいくみたいだ。フォックスは思った。
「名前は、ええ……そうそう、ファルコ。ファルコの、ランバルディだ。惑星間航路の周辺に現れでては、危険な飛行を繰り返しとる暴走族どもの親玉、だった。つい昨日までは」
「昨日?」
「コーネリア防衛軍基地の演習場に侵入し、度重なる警告を無視して飛び去った。肝が冷える曲芸飛行を披露した後は、防衛軍の最新鋭機も顔負けのスピードで離脱し、煙幕と空中発射デコイでまんまと逃げおおせた」
「ただの民間機なのか、それともベノムの攻撃機か。基地の司令官はその点を最後まで迷ったそうだ。防衛軍が民間人を撃墜したとあっては、重責は免れん。だがこれまでに確認されたどんなベノム機とも、機体の特徴が合わん。なにより、攻撃だろうが自爆だろうが、やるつもりならこっちが気づいたときには終わっとるはずだ。いったい何者が、何の目的でやって来たのか、見当もつかん。機体の身元の割り出しを急がせながら、機を捕捉し続けるしかなかった」
 撃墜すべきか、せざるべきか。苦悩する司令官の姿が見えるようで、フォックスは同情した。
「機体の身元が判明したのは、奴が飛び去った7分後だった。ベノム軍の陽動やもしれんと考えて少数で追ったことも裏目に出たようだな。基地ではトップ連中はじめ、パイロットから管制官に至るまで歯ぐきを見せて悔しがっとる。すぐにでも飛び出してふん捕まえに行きたいところだろうが、都市の守りをほっぽり出すわけにもいくまい。そこでワシらにお鉢が回ってきた」
「ちょっ、ちょっと待ってよ」
 スリッピーの声が、興奮ぎみのペッピーの声をさえぎる。
「コーネリア軍基地のパイロット皆がかかって捕まえられなかったものを、オイラ達だけで捕まえようって言うの? たった3人で?」
 スリッピーはそこで口をつぐんだが、その顔には“無理だよ”と言いたげな表情が浮かんでいる。
 受けるべきか否か、この任務――。
「俺たち3人で、捕らえられると思うか? ペッピー」
 資料から顔を上げて、フォックスはペッピーの両眼を見た。
「リーダーはお前だぞ、フォックス。判断するのは、お前だ」
 二人の視線が、フォックスに注がれる。
「勝算はある」
 その答えに、ペッピーは満足そうに頷き、スリッピーは困惑の色を隠さない。
「3機のアーウィンと――アレがあれば」
「アレ? アレって、なに?」
「アレと言ったら、アレしかないだろ?」
「アレだよアレ。アレと言ってわからんか?」
「何だよそれ。アレアレって言われてもさ、わかるわけないよ」
 口をとがらせたスリッピーを見て、二人は苦笑混じりに顔を見合わせた。
「スリッピー、いったいどんな状況を想定して作ったんだよ、アレは」
「えっ? アレッ? オイラが作ったの? ……あああ!」
「やっと思いだしおったか」
 やれやれというようにペッピーが両手を上げる。
「アレアレ言うからわかんないんだよ! あれにはちゃんと名前があるんだからね。『プラズマ冷却弾』って名前がさ!」


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2 コメント

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Unknown (ゆうれん)
2011-05-31 23:35:22
『ファルコとの出会い』、凄まじい勢いで一気に読みました。細かな設定などの作り込みがすばらしく、とてもわくわくするし面白いです!同人誌とか興味ないって思ってたけど、これなら欲しいって思います。
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ありがとうございます (雪月れんげ)
2011-06-01 03:04:28
>ゆうれんさん
 コメントありがとうございます。楽しめていただいたようで何よりです。
 「小説」というにはかなり不完全で、拙い作品ですが・・・完結するまでは書き続けようと思うので、よければまた覗いてみてください。
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