俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その56

2011年07月10日 12時49分37秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 シールド発生装置の動力源と、プラズマエンジン内で推進剤を加熱しプラズマを作り出す熱電離器の動力源は、多くの場合、共通である。
 レーザーにより削り取られたシールドの電磁場は、たちまちのうちに修復される。だが、その一瞬。シールド生成に向けられた電力消費が、プラズマ化を滞らせ、機体は一瞬だけ、制御不能に陥る――。

 「シールド分析完了! モニターに表示するよ!」

 スリッピーの声と同時に、コクピット内に備えられたモニターの端に赤いバーが現れ、その上に表示された数字とともに細かく揺れ動きはじめた。
 多少の誤差はあれど、このバーの長さがファルコ機のシールド総量を、そして数字がシールドの出力を指し示しているはずだ。

「よし! 二人とも、敵機のシールド出力に常に気を配ってくれ。絶対にシールドを貫通しないレベルまで、レーザー出力を下げる。それから、攻撃開始だ!」

 相手の目論見が見えないことに、ファルコはいら立ち始めている。
 最初の一機のように、重力場発生装置を使って、隙あらば相手の翼をもぎ取ってやるつもりでいる。しかし2つの機体を操るパイロットは、最初のやつよりは腕が立つようだ。自分を狙い発射される弾丸と、なめらかな機体制御のせいで、近づく暇を与えない。

(なんなんだ? あいつらの動きは!)

 ファルコの機体は、払い下げられた大陸間移送機に改造を加えたものだ。家族との一昼夜にわたる大喧嘩のあと、ファルコはこの機体に乗り、文字通り家を飛び出してきたのだった。
 さらに、コーネリア軍とベノムの機体が接触するたび、戦闘のあとを火事場泥棒のようにうろつき回っては、拾い上げたパーツを使い改造を重ねた。今ではこの機体の内部が自宅の間取りのように思い描けるし、自分の体の延長のように操ることもできる。
 血の上った頭で軍の演習場へ無謀にも突撃したときだって、自分以上の操縦者がいるとは思わなかった。なのに。目の前の青い機体の、あの動きはなんだ? まるで当然のように、空を滑っていく、そう、鳥のように自由に――!
 その言葉が頭に浮かび、ファルコの両腕に炎のような熱がこもった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿