俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その57

2011年08月13日 22時35分34秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 絶対に奴等に、一泡吹かせてやる。そのためには焦らないことだ。冷静さを失えば、死ぬのを早めるだけだ。
 ファルコは自分にそう言い聞かせた。が。
 その一方で、湧き上がってくる思いを振り払えずにいた。
 冷静さを失えば、死ぬのを早めるだけ――?
 そういう事なら、仲間の制止にも応えず、自分の意地と苛立ちのままに軍の演習場へ突っ込んだ時点で、すでに死を早めていたことにならないか。
 今この場で追手を振り切ることは、あるいはできるかもしれない。だが自分の目の前で、翼に生命を宿したかのように空を駆けた青い機体のことは、敗北の味とともに長く記憶にとどまることになるだろう。
 なぜ今になって、こんな奴等が現れやがったんだ!
 ファルコは嘴をギリギリと噛み締めた。チームを率いて、空を自分の庭のように飛び回っていた頃。同じように粋がったパイロットにちょっかいを出しては、即席の空中レースを挑んでいた。ペイント弾で空中戦のまねごとをしたこともあった。それでも心の底から「負けた」と思える相手には出会わなかった。
 ファルコは悔しかった。これだけのテクニックをもった相手から、ただ逃げなければならないことが。できるなら、このパイロット達に1対1の勝負を申し込みたい。持てる限りの力で闘い、勝利したい。しかし今の自分には、無理な話だった。

 そこまで考えたとき。ファルコの背後で、緑色の閃光がはじけた。
 死――ファルコの脳裏をそのイメージが走る。今のはまちがいなく、レーザーの光だ。相手は業を煮やして、生け捕りを諦めたらしい。このままレーザー砲で自分を撃ち落とし、燃えカスになった機体が海面に浮かんだところをカメラに収め、軍に報告するに違いない。『ファルコ・ランバルディは死にました。』と!
 それは早計だった。自分の機体を見直しても、どこにも破損はなかった。
 じゃあ、なぜ?
 混乱するファルコの頭を、次なるレーザー光が襲った。ぱぁん、ぱぁん、という音とともに、機体表面に命中する。しかし機体をおおう電磁シールドがレーザーを減衰させ、傷ひとつつかない。
 相手のレーザー出力がこっちのシールド出力を下回っている。ダメージを与えられない攻撃だけが繰り返されている。なぜ?
 なぜ? なぜだ?
 ファルコの頭の中に疑問符が浮かび続けた。必死で答えを探すが、思い至らない。まさか、ただの威嚇か。
 その間にもレーザーは容赦なく命中する。ファルコは操縦桿をひねり、レーザーの雨から脱しようとした。が、機体の反応が、わずかに遅れる。
 その遅れを狙ったかのように、ペッピーのアーウィンからプラズマ冷却弾が打ち込まれ、ファルコ機の左翼で炸裂した。

(――やられた!)


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