シロスジショウジョウグモの赤色変異型。
11月とはいえ、この暖かさ。
とはいっても、多くの虫は気温だけでなく、日長(昼の時間の長さ)でその生活のリズムを決めることが多いので、
暖かい=まだ虫がいる、というわけにはいきません。
見える虫の姿は日を追うごとに減っている。
でも、あそこに行けば、まだ幾種類かの虫が見つかるに違いない、
と思ってきのう行ってきたのが、川崎のほうの森林公園。
ここには私が勝手に「バグズ・ストリート」と呼んでいる、長い手すりがある。
弥生時代からのシラカシ林やクヌギ、コナラ、ミズキ、エノキなどなどがつくる古い林に沿って、
ゆるやかな勾配があり、そこに設置されているのがこの金属製の手すり。
この手すりの上には、そばの木々から降りてくるらしい虫がたちが集まり、
忙しく行き交う場所になっているようで、最近の好きな観察ポイントのひとつ。
きょうも、
渋い色合いと抽象的な模様が静かで上品な雰囲気をもっているミヤマカメムシ。
8ミリ。
ルーペで見たらちっちゃなゾウムシだった。2ミリ以下。
かわいいなあ、ゾウムシって。
これも2ミリのゾウムシ。顔じゅう眼!
わりと最近日本に入ってきたらしいウスキホシテントウ。
3ミリくらい。体型がちょっと細長目、黒地に薄い黄色の水玉。
テントウムシというと赤い色の入っているものを思い浮かべますが、
こういったモノトーン系のテントウムシも渋くていいな。
この時期、外傷を負った個体を多く見かけるエサキモンキツノカメムシ。
それでも交尾している。
傷を負っているものを多くみるのは、メスが卵や幼虫を守る習性があるから?
ここに来ると必ず会える白っぽいハエトリグモはチャイロアサヒハエトリ。
眼の色も薄めで外人っぽい。
ひゃあ、鮮やかな黄緑色に黄色の筋がはいったこのクモは、
サツマノミダマシ。
よく見かける似た名前のワキグロサツマノミダマシより、
こっちのほうがふたまわりくらい大きくて美しい。
あ、気がつくと、まだセミが鳴いてる!
アカスジキンカメムシの5齢幼虫も虹色光沢のあるオシリを振りながらストリートを闊歩。
横にあるミズキの木から降りてきたのかな。
この虫通りでは、いろいろな虫が出会うので、虫どおしのそのときの行動を見るのも面白い。
たとえば、ハエトリグモがアリを跳ね飛ばしたり、
ケムシがテントウムシの匂いを嗅ぐような行動を見せたり、
もちろん食べるものを探して、戦いが行われるシーンも。
でもたいていは、あまり干渉しないで、てきとうに進路をよけながら往来しているように見える
お互いに知らん顔のエサキモンキツノカメムシとゴマフリドクガの幼虫。
・・・・で、いろいろ見ながら坂をのぼり、上の広場に出て、
クスノキの下でおべんとうとトイレ休憩。
昼食後は近くの雑木林を少しみて、復路もバグズ・ストリートを見て帰るという予定。
ところが・・・・・・この後、バグズ・ストリートに危機が!
ツレが「クモを採ってるみたいな人がいたよ」という。
「割り箸でクモの巣からクモをつまんでた」と。
???
空中の円網からクモをつまむっていうと、
いま園内には産卵前の成熟したメスのジョロウグモがたくさん巣を張っているから、
ジョロウグモを採集しているんだろうか?
ジョロウグモの研究をしている人?
と思いながら帰りのバグズ・ストリートにさしかかると・・・・・
・・・・・・いた。
スーパーのカゴみたいのをさげて、
手にはメダカをすくうような小さな網を持っている男性。
男はバグズ・ストリートに沿って、
ときどき網で虫を捕え、カゴのなかにぎっしりはいっている容器に入れているもよう。
私たちの先を歩いているので、何気に追いついて、
「クモをとってるんですか?」と訊いてみる。
「ええ、クモとかハエとか」と男。
クモとハエ?その組み合わせって・・・・はて。
すると男はこともなげにこう言った。
「カエルのエサにするんです」
なぁぬぅぅぅぅぅっー!
世の中にはいろいろな人がいることはわかっている。
バッタが好きな人もいれば、
ダニが好きな人もいるし、虫は総じて嫌いという人、
ヘビやカエルが死ぬほど好きという人も。
虫好きひとつとっても、虫の写真を撮るのを目的の人と、
採集を目的とする人が、いっしょに虫さがしに行くと困ることある、
と聞いたことがある。
写真を撮ろうとすると、先にさっと捕まえられてしまうというのだ。
お互い虫が逃げないうちに、と思うから、すばやく体が動く。
このふたりの組み合わせの場合は、「撮る」ほうが圧倒的に分が悪い。
でも、どのみち虫が好きでやっていることだから、話も合うし、
まだ許せるという気持ちにもなる。
でもさ、カエルのエサにするために虫採りをしている人と同じポイントを歩くことになるなんて・・・・。
私もカエルは好きですよ。
オタマジャクシからカエルに育てたこともある。
カエルを飼っている人は、エサが要るのは当然だし、
ネットでコオロギ300匹パックなんていうのを買わずに自分で捕獲したごちそうを愛蛙に食べさせたい、
というその気持ちはわかりますけど。
虫好き的立場からすると、こっちがなにをやっているか一目瞭然なんだから
「アタシの前を歩くな~っ。「撮」ってから「採」る気くばりしろっつーの」
なのでした。
気持ちを泡立たせながら、
なんとかカエルのエサ採り男(ディズニー風にいうと、バグズ・ストリートの悪漢)
に先を越されないように、しぶとく虫を見る。
久しぶりに会ったね!キイロテントウ。
キイロテントウは私のハッピー・バグ。いい思い出があるから。
バグズ・ストリートでは、よくアリグモを見かけるのだが、
これもその一種。
一見アリ?って思うのだが、後から見ると、アリとはなんか雰囲気が違う。
アリに擬態しても、その眼はまぎれもないクモでしょ。
この前、飼育して名前がわかったチャバネアオカメムシの5齢幼虫が、そそくさと歩み去る。
わっ、かわいい!クリシギゾウムシだ。
体と同じくらい長い口吻をもっていて、折れないか心配になる。
もうすぐ、カエルのエサ採り男がくるから、逃げたほうがいいよ。
飛んでった。
これはデーニッツハエトリ。
頭のまわりが眼だらけ。8つも。
このストリートではいつもハエトリグモをたくさん見る。
こちらはキンイロエビグモ。
シラホシテントウも。
カエルはテントウムシを食べるだろうか。
これはもしかして、リリ、っといい声でなくというカンタン?
*道端自然観察会のまいたにさんから、これはトビナナフシという
ナナフシの仲間、と教えていただきました。
丸模様が大きかったり、ゆがんでいたり、斑紋がすごくいろいろなナミテントウ。
こちらは3ミリと小さなヨツボシテントウ。
バグズ・ストリートにはテントウムシも多いようです。
前肢で威嚇するワカバグモの幼体。
名前調べ中のカメムシ。
肢が赤、緑、黄色のアフロカラー。
これはみなさんが大っ嫌いなダニ(笑)。
でも動きがかわいいんだけどな。
日向をちょこちょこしている、よく見かけるダニなので
すぐ名前がわかると思ったが、同じく赤いタカラダニより体が丸いし、
もう少し、調べてみよう。
いずれにしても、人間には害を及ぼさない種じゃないかと。
体の内部が赤く透けて見える、たぶん孵化したばかりのガの幼虫。
あっ、あっ、これはアカイラガの幼虫では?
一部、肉棘が取れてしまっているけれど、
グミキャンディーみたいできれい。大きさは1,2センチ。
ん、背中にいやな気配。
気が付くと、カエルのエサ採り男が迫ってきていたので
急いで葉っぱの上に幼虫を避難させた。
カエルに食べさせるには可愛いすぎるでしょ。
カエルはイラガの幼虫なんか好きじゃないとは思うけど。
エサ採り男の脅威にもめげず、
なんとか帰りもたくさんの虫を見られたなあ、と出口に向かったとき、
アジサイの葉に素敵なものが!
これは、たぶん・・・・・・
やっぱり、この天幕状の住居の中にいたのは、ビジョオニグモでした。
1センチくらいのころころした体型の、一度みたら忘れられない印象的なクモです。
でも、これのどこが・・・美女?
新海栄一さんの『日本のクモ』によると、
『腹部は白色で後方に行くにつれて青緑色が増し、
さらに黄色の横条と黒色の点班が横に並ぶなど
美しい模様から美女オニグモと呼ばれる』とある。
確かに横から見ると、
色の変化がきれいだけれど、
でも、
私には、鼻水が止まらなくて困っている河童の顔に見えますが・・・・・・。
バグズ・ストリート、また見にこよう。
このブログの姉妹サイト、『バニャーニャ物語』も
更新しました。
今回は連載10回目。
『バショーの落としモノ』
バショーが飛べなくなったのはなぜ?
モーデカイの不思議な卵から生まれたものは?
こちらから、どうぞ。