鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

ファーブルも絶賛!カメムシのタマゴ美

2011-02-01 08:09:03 | 日記
 ミナミアオカメムシがうちに来てから、
カメムシのタマゴをじっと見ることが多くなったので
あ、そうだ!と思いだし、
『完訳ファーブル昆虫記 第8巻 上』(奥本大三郎訳 集英社刊)を
読みなおしてみました。

帯の文句が超マニアック!
 
 この章の扉ページには、なんとオウシュウヒメナガメという
ナガメの一種であるカメムシのタマゴが大きく描かれています。



そしてファーブルは40ページにもわたって、
カメムシのタマゴの造形美と、
幼虫が出てくるときタル型のタマゴを開けるための
T字形をした道具による仕掛けの巧妙さを絶賛しているのです。

ちょっと引用してみると・・・・・・
『鳥の卵は単純な美しさを具え、その美には小さな子供でさえ感動する。
虫の卵にはこうした完璧な美しさをもつものはめったにない。
その例外とも言えるのがカメムシの卵である』

・・・・・・と言い切っておられます。

さらに

『小さな壺のような卵は、葉の上に固めて産み付けられる。
壺には網目模様が描かれ、上部には蓋がついている。
蓋の周囲には細かいギザギザがあり、壺をかっちり密閉している。

卵の殻の蓋側にはT字形をした小さなものがついている。
これらの卵は鳥の卵にも匹敵するほどの素晴らしい造形美を有している。
どうやって幼虫は、この頑丈な卵から孵化するのか。
T字形の奇妙な道具の役割は何か』

さらに

カメムシが臭腺から出すあの匂いを、
「身につけている虫の香水、化粧油」とまで。


 カメムシの卵はたいてい1ミリ内外の大きさ。マクロレンズなんてない時代に、
ファーブルはなんとかその美しさを伝えようと、言葉のもつ力の限りを尽くして、
19世紀チックにカメムシの卵の美しさを、これでもか!というくらい繰り返し賛美しています。

 ファーブルが讃えてやまないオウシュウヒメナガメという小型のカメムシは
関東地方で春、菜の花に集まるナガメにそっくりですが、
体の模様はより複雑で、より美しいです。
 ナガメが大好きで、よく飼育していたので
卵の写真を出してみたら、どうやら卵は両方とも
同じデザインのようです。


 壺形というのが、いかにも手をかけてつくったもののようで
しかも側面にも模様まで描かれている。

これがナガメの成虫。

ファーブルが言う「T字形の仕掛け」とは、卵殻破砕器というもので、
幼虫はこの道具で蓋の周囲を押して、少しずつ破りながら出てくるのです。
このようすは、何度見てもあきません。 


これは『虫目で歩けば』にも載せた写真ですが、
もっと拡大してみました。
逆さになったT字形のものが見えるでしょうか。



 さて、うちのミナミアオカメムシのタマゴ村では、
5つの卵塊の内、残念ながら2つはうまく孵化しませんでした。
でも他の3つではもう2齢となった幼虫が
ちょこちょこ動き回るようになりました。

 ヨウチュウ村では、つぎつぎと脱皮して成虫になるものがあらわれ、
3つの中でいちばん忙しそうな村です。

カラフルな5齢幼虫。有吉立さん撮影。

 そして、今朝なんと、全身ピンクの成虫が羽化しました。



肩の部分だけにピンクがはいっているものは
今までもいましたが、
全身ピンクというのははじめて。
きれいなので、エコヒイキしています。

 週末に葉山の先にあるソレイユの丘という施設へ行ってきました。
ここにはトマトの大温室があり、4種類のトマトの収穫体験ができます。


なかでもプチトマトの枝は、緑、黄色、オレンジ、赤、と
熟度による色のグラデーションが美しく、
ついあれも、あ、こっちもきれい、と買いすぎー。



食べるためというのはもちろんだけど、
ミナミアオカメムシもトマトを食べるので、
このきれいなトマトの枝をつかって、
トマトドームをつくってみようと思ったのでした。
そして・・・・・
けっこう苦労しましたが、
できましたー!



あしたは、この新作ドームに、
セイチュウ村のみんなをお引越しさせようと思っています。


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 そしてきょうは、お知らせがあります。
新しい年になったので、新しいことをひとつはじめることにしました。
それは―この『虫目で歩けば』のほかにもうひとつ、
『バニャーニャ物語』というブログをはじめること。




 『バニャーニャ物語』って???
それは、
『国境の町の向こう、<ナメナメクジの森>をぬけると、
そこには、ちょっと風変わりな生きものたちの国がある―』
・・・と、こんな風にはじまる物語です。
もしこんな世界があったら、ときどき遊びに行きたいなぁ、
という気持ちでつくった、
ふだんの虫目歩きから生まれたもう一つの世界です。

バニャーニャはある大きな大陸から、
タンコブのように突き出た半島の国。
引き潮になると砂州で大陸とつながり、
潮が満ちてくると。海のなかにぽつんと取り残された島になります。
 国境の町がある大陸側とバニャーニャを行き来するには、
ひとつ難関があります。
それがナメナメクジの森?!


登場人物をちょっとだけ紹介すると―

スープ屋のジロ
 ラマル川のほとりで、スープの店をやっています。
半島特産の産物を使ったおいしくて栄養のあるスープの数々がみんなに大人気。
スープのようにあたたかい人柄でみんなに愛されているが―
じつは胸のなかには大きな夢を秘めている・・・・・・。

砂屋のフェイ
 世界中から集めた253種類(現在のところ)の砂を売る砂屋をやっています。
楽天家でかなりおっちょこちょい。でもさまざまな砂を調合して、
半島のみんなの病気を治す薬をつくる、というだいじな仕事をしている。

お使い屋のモーデカイ
 半島でゆいいつ、ナメナメクジになめられずに森を抜け、
大陸の国境の街へ行けるという特技(?)を活かして、
みんなに頼りにされている大きな体の「おつかい屋」さん。

石舞台に住むバショー
 この半島のいにしえの記憶が残る石舞台。
年に一回雨乞いの儀式が行われるこの聖なる場所の近くに住む、
バニャーニャの長老的存在。
そのわりには、いつもバタバタしているけれど。
 
 
ギル族のシンカ

 ふだんはめまいの崖の上にある家に住んでいるが
、首の両脇にあるエラで水中呼吸もできるので、
陸上と海のなかを自由に行き来できるギル族のひとり。
博物学に興味があり、万物の観察をおこたらず、
バニャーニャの歴史ともいえる記録をつけている。

ホテル・ジャマイカ・インの主人コルネ
 見かけはぼんくらだけど、料理の腕は第一級。
ホテルの裏庭には自家農園をもっている。
昔は紅茶やスパイスを運ぶ大きな帆船の船長だったが、
バニャーニャの近くで難破したのを機に、ここに住むことになった。

そして・・・虫目少女カイサ
 小さいものが大好きで、いつもなにかしら虫といっしょ。
いろんなもののなかに入りこめる、という不思議な力をおばあさんから受け継いでいる。

挿絵は大滝詠一さんの『ナイアガラシリーズ』のジャケットイラストでおなじみの
中山泰。

毎月1回、1日に更新していく予定です。
こちらにも、どうぞ、遊びに来てください。

バニャーニャへは、ココから!
『バニャーニャ物語』http://blog.goo.ne.jp/kaika64