週末に八王子の知り合いの家を訪ねました。
古くて大きな、縁側のある家。
縁側って、世界に類をみない日本建築のすばらしいアイディアだと思う。
ベランダともバルコニーとも違う、室内と外(人と自然)を濃密につなぐ場所。
豆のサヤをむいたり、
梅酒用に梅を選別したり、
ちょっとした針仕事をしたり、
緑をながめながらお茶したり、
干し柿をつるしたり、
折り紙したり、
月をながめたり、
花火をしたり、
思い出にふけったり・・・・
もういろんなことがここでできちゃう。
でも今では多くの日本人が
「縁側」を失ってしまった・・・・・・。
この日も室内よりも縁側で、とお願いして、足をぶらぶらさせながら、美味しいお茶とお菓子をいただきました。
ふと庭の向こうの生垣に目をやると、
そのあたりには白い花が今を盛りと咲いていて、
なにやらほのかな香りがするような気がする。
「あれは何の花?」ときくと、「卯の花」と。
平岩弓枝の『御宿かわせみ』シリーズに、『卯の花かおる』という一篇があります。親の仇討ちをする青年が、仇を前にしたとき、あたりに満ちる卯の花の香りに、仇討ちを思いとどまる、という話。
「仇も、仇を討とうとするものも、同じ卯の花の匂いのなかにいた・・・・」という、シリーズのなかでも心に残る名篇です。
それで・・・卯の花のにおいって?とずっと気になっていたのです。仇討ちを思いとどまらせてしまうほどの、いい匂いって、いちどかいでみたいものだ、と。
ああ、これが卯の花の匂いか・・・金木犀とか沈丁花とかのはっきりした芳香とはちがう、あたりの空気に溶け込むようなごくかすかな香り。とうっとりしていると、アオスジアゲハが蜜を吸いに飛んできました。
早く飛ぶのでなかなかクリアな写真が撮りにくいチョウですが、きょうは夢中になって蜜を吸っているところが、白い花がレフ版効果を生んで顔までちゃんと撮れました。
卯の花の和名は「ウツギ」。ウツギはアオスジアゲハの食草です。
あ、花の奥にハナムグリがいる。
すると、もう1匹のハナムグリが、いい娘みっけー、という感じでびゅーんと飛んできて・・・・・・
「きゃー、いきなり何するのよぉ!」
やっぱりいきなり、っていうのはね、いくらハナムグリでも。
まずは、卯の花の蜜のお茶を飲みつつ
語らいなどすることからはじめることにしたようです。
でも「ハナムグリ」って、きれいな名前。
ハナムグリさん、なんて呼ばれてみたい。
人間じゃこの名前はムリでしょうか。
家の裏にはちょっとした雑木林があるというので、帰りに寄ってみました。
葉っぱの裏にぶら下がっている丸いかわいいものは、クモの卵だとおもう。
コナラの枝には小さな虫の落とし文。
なぜか枝から切り離されていません。
一枚の葉っぱを使って、タマゴをこんなにきれいにきっちり包装するなんて驚きです。ぜひこんどは作業中のオトシブミを見てみたいものです。
あ、ウスキホシテントウ!
図鑑では見たことがありますが、
実物に出会ったのははじめて。
4ミリくらいの小さなテントウムシですが、
ドットの散らばりかたも色のバランスも、とてもステキです。
よく見てみるとほんとうに種類が多くて、
テントウムシ観察はなかなか奥が深いです。
こんどはすぐ近くのヤマグワの葉に、
1センチくらいの大きさのヒメツノカメムシを見つけました。
お肌つやつやぴちぴちの、若さはちきれそうなメス。
最初、写真を撮ったときには気がつかなかったのですが、
彼女のおなかの下には、ミントグリーンのきれいなタマゴが!!!
そこへ、悪もの(?)のアリが、
背後から近づき、タマゴを狙っている。
ツノヒメの若いお母さんは、すぐに臨戦態勢にはいると、
アリを撃退しようと果敢に戦います。
あ、アリがずうずうしく、体に上ってきた!
おかあさん、危ない!
タマゴをおなかの下にかばいながら、それでもなんとかアリを撃退。
母卵ともにぶじで、よかった、よかった~
すぐそばで見ている私の鼻には感じられなかったのですが、
たぶんヒメツノのおかあさんは、カメムシの最強武器である
臭いにおいも出してアリを撃退したのではないでしょうか?
ヒメツノの孵化と変態は見たことがないので、
ヤマグワの枝と共に採集することにしました。
家の近くの原っぱのふちにも、ヤマグワがあるのを覚えていたので、
なんとか食草を確保できそうだから。
このおかあさん、家にきてから、片時もタマゴの上を離れません。
飲まず、食わず、動かず。
本能による行動とはいえ、見ていると心うたれるけなげさです。
でもごくたまに、体を横に傾けています。
同じ姿勢をつづけて肩がこったのか、
あるいは睡眠中?
そういえば、虫の睡眠ってどうなっているんでしょうか?!
これから孵化と変態がどんな風に進むのか楽しみです。
卯の花を見たきょう、
『うーのはなーの におうかきねに
ほぉととぎーす はやもきなきて
しーのびぃねもぉらぁすー なつーーぅはきーぬー』
という童謡も思い出しました。