日中越境EC雑感

2008年に上海でたおばおに店を作るところから始めて、早もうすぐ10年。余りの変化に驚きの連続

投資銀行に任せられないM&Aの本質

2009-03-16 | M&A
日経ビジネスに、JTのCFOだった方の記事が掲載されています。元々はエンジニアバックグラウンドの方で、経理財務の経験はなかった方ですが、CFOとは何かということについて本質を突いた記事を書かれています。

 実は私がジョンソンエンドジョンソンの日本法人にいた時も、直属の上司であったCFOは一人はバンカメ出身、後任者は証券会社経験者ですがJ&Jではマーケティングが永い方でした。また、アメックスの日本法人からアジアパシフィックのファイナンスダイレクターになった方もマーケティング出身者でした。外資系日本法人のCFOはそのバックグラウンドを見ると会社のファイナンス機能に対する考え方が解るかもしれません。

 自分自身が経理・管理系からキャリアをスタートしたのですが、日本の多くの企業では経理系の方は唯各部門の数字を集計し、あがってきた資料の会計上も間違いを指摘し、帳簿を集計して会計監査と税務調査、必要に応じIR資料を作成するというレベルに留まっており、扱っている数字が実は現金である事、数字が出てくるまでに営業現場や生産現場でさまざまな苦労がなされている事を全く知らない方が多く見られます。

 その為に、予算の作成等に当たっても、何故そういう計画になっているかを見ず、唯根拠も無く売上と利益の数字のみをチェックしているのが多くの企業の現状と思われます。

 まぁ、一方日本の経営者は、経理は唯数字を集計して間違えなければよいという発想の方も多い事も、こういう土壌を育ててしまったのでしょうから、一概に経理畑の人に対する非難をしてもしょうがない面があります。

 さて、JTのような超官僚的大企業でエンジニア出身の方がCFOになられた経緯にも興味がありますが、新貝元CFOのM&Aに対する考え方として、新興企業のかたや、多くの企業の経営者の方は一考すべきかと思いご紹介します。ギャラはーの買収に関してのコメントで、実際に現在どうなっているかはしりませんが、記載している事は的を得ているなと感心しました。実行は大変だと思います。

以下要約:
・M&A(合併・買収)は、1+1を2ではなく、3にも4にもしていくための手段であるが、最も重要なのは統合であり、他人は統合作業はしてくれない。

・M&Aは究極の経験者採用でアリ、異なる文化を背負った数多くの人材が、突然仲間になる事で有る。

・成功の為には、自身で事業を成功に導くコアコンピタンス(価値を産み出す中核となる競争力)や事業のMomentum(勢い)を理解し、事業を支えているキーとなる人材を理解することが、M&Aを成功させる秘訣。無ければ失敗のリスクが大。

・事業を理解することは、過去の、そして自社だけの成績表である財務計数を分析することとは異なり、むしろ、そこから分析し、洞察を得ることが必要であり、CFOと財務機能はその為にも事業を理解しなければならない。事業ごとに、経営環境、競争環境が違います。商品の差別化ポイントが異なります。企業ごとに、コアコンピタンスに違いがあります。それを、自社の中で見極めねばなりません。

・だからこそ、一人ひとりに、顧客・競争から目を離さないで日々の仕事に注力することの重要性を、経営陣、管理職が説き続けることが大事です。そして、統合そのものをできるだけ短期間で終わらせることが、統合成功にとってのカギであると断言できます。

・買収時に、投資銀行が出してくるシナジーの見積もりは、過去の同様のM&A事例を参考に、シナジーが売上高に対してどの程度発現するかなどマクロな手法に限定されます。投資や事業整理損をどう見積もるのかも大変マクロな試算しかできません。一方、統合を考えると買収当事者はそれからが正念場です。この違いが、実は買収のための企業価値評価に如実に表れるのです。

・買収作業のチーム(社内では、Business Development 略してBDチームと呼んでいます)は、財務、税務、法務のインプットを受けながら、事業から生み出されるキャッシュフローを、主要なマーケット毎に、買収後の統合シナリオ、シナジーを加味して作成する。具体的には、各国におけるビジネス環境、競争状況、ブランドとその市場ポジション、強み弱みをまず把握し、それに基づき、事業の価値を上げるために、統合後の各マーケットでのブランド配置、価格政策、マーケティング戦略、マーケティング投資、流通、人員配置などを検討する。

 これらが、売上高増のシナジーやコスト低減シナジー試算、統合後、事業が生み出すキャッシュフロー試算のための作業でした。つまり、一つひとつのマーケットでの統合の青写真を作ったのです。これら企業価値評価分析は、スプレッドシートの枚数にして大変膨大なものでした。

 これら統合の青写真を前提とした価値評価の現実性、妥当性は、M&Aにおける生命線です。これらを踏まえた上で妥当な買収価格が決定され、買収後の事業の実行性が見極められるからです。

・これほど重要なことを他人任せにはできません。そして、何よりこのような詳細な価値評価は、自ら事業に手を染めていない投資銀行には真似のできない仕事です。自ら価値評価の能力を持つことは、M&Aの基本だと思います。

 財務部門で経営管理に携わっている人もBDチームのメンバーでした。財務シミュレーションをしたことのある人は分かると思いますが、スプレッドシートは、前提を少し変えるだけで、いかようにでもアウトプットが変わります。その恐ろしさが分かっている故、ビジネスへの深い理解に基づいた前提を置かずして、この価値評価はできないことを、参画したチームメンバーはよく理解していました。

⇒さて、2000年以降日本でもネット業界を中心にM&Aがはやっています。上のようなことができている会社は何社あるでしょうか?私自身はJTのような大型案件に携わった事が有りませんが、やはり買収後にどうやってインテグレートするかは何時も考えるようにしていました(というかJ&Jの日本法人時代に結構苦労させられました)。でも、多くの人は単純に買い物のように会社を買っている姿も見てきました。

 



http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090311/188818/
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