日中越境EC雑感

2008年に上海でたおばおに店を作るところから始めて、早もうすぐ10年。余りの変化に驚きの連続

謹賀新年! ファミリーマート中国事業拡大の記事に思う事

2010-01-01 | 日本・日系企業
 香港の報道によると,ファミマが中国の出店を加速するとの事。ファミリーマートは、2010年2月の決算期までに、中国で130の新規出店を行うが、来年はそれを拡大する。ファミマは、日本では7,600店舗。海外に7,900店舗を展開しているが、海外では韓国が4,000、中国は300、残りは台湾とタイが中心で、先週ベトナムにも最初の店舗を出店した。
 
 中国では、セブンイレブンやサークルK,中国のバンガードに加え、昨年8月にはイギリスのテスコがエクスプレスというコンビニを上海に出店。ウォルマートがスマートチョイスというアウトレットをシンセンに出店(何でも中国に千店舗を作るそうです)等、外資系企業の参入が非常に激しい。

 一方、中国企業も次から次へとコンビに市場に参入してきており、上海では既に4,300もある。その90%は中国資本の物だそうです。

 ファミリーマートは、日本の高齢化社会に伴う消費の現象を見越して海外事業の拡大を目指す事業計画を作り、中国以外に韓国でも来年400-500店を出店するそうです。 http://www.scmp.com/portal/site/SCMP/menuitem.2af62ecb329d3d7733492d9253a0a0a0/?vgnextoid=0845221d5f5d5210VgnVCM100000360a0a0aRCRD&ss=Companies&s=Business

 小売業界にとっては当然の帰結と言うべきか、ある程度の規模の企業はやはり海外への進出を狙っているのですね。韓国やタイというのも確かに有力なオプションであるのだなと思わされます。また、競争が中国よりは楽なんだろうとは思います。

 大手の小売が出て行けば、中小の消費者商品メーカーはそれに応じて商品の進出が可能でしょうかね?

 うーん。事はそうは甘くないですよね。上海の日系コンビには日本企業の品揃えが確かに多いので重宝しますが、基本大半は現地生産品ですから。小売の立場から言えば、当然場所を占める商品は売れ筋商品。売れ筋商品とは当然ローカルの人たちが沢山買っていく商品で、決してニッチやプレミアム品じゃない。そうなると、当然現地で広告などにより認知された商品。価格的にも現地に受け入れられる商品。

 結局の所、製造業って、製造機能を海外に移さざるを得ないのかもしれませんね。日本市場を狙う低コスト生産を目指した中国進出はもはや成り立ちがたい面が多々ありますが、中国市場を狙うのならば合理的です。中国人のテイストにあう様に改良する。価格も受け入れられる価格にする。日本製品に拘る人も確かにいますが、それはあくまでもニッチプレミアム品です。マスは狙えない。イコール量は期待できないし、それなりのプレミアム認知度が必要。だから、メインを日本市場にして、ついでに売るという程度でしか考えてはいけない。

 粉ミルクで4社中明治だけが何で人気があるのか?単純に明治は日本かオーストラリアで製粉し、中国で製缶しているものを中国の小売の店頭においている。広告露出もほとんどないし、店頭での扱いも小さいので欧米系の粉ミルクに比べるとゴミの様な存在でしかない。一方で、同じアジア人で中国人の体にアウトされる日本の粉ミルクのブランドについて、明治しか一般の店頭に置かれていないので中国人は明治のみ買い求める。別に味とか価格とかではなく、森永、和光堂、雪印、あいくれおって、単純に知らないんです。知らないから本物かどうかも分からず、知っている明治を好み、結局タオバオで販売される粉ミルクの90%は明治。和光堂やアイクレオは上海の百貨店に置かれるようになってから若干の量が増えたけど、決して全国レベルじゃない。

  さて、明治は成功しているのか?

 全然。。だって、中国の粉ミルク市場って日本の20倍くらいは見込めるはずなんです。幼児の人口は17倍。そして共働きが当然の社会のため、母乳で育てる家庭はごく少数。可処分所得レベルで外国製品を買う中国人が10%程度しかいないとしても日本の倍。母乳が無い、かつお金の集まる幼児向けだと実際の対象市場は日本の4-5倍は見込めます。欧米系4社の売上見ているとそれは確認できます。欧米系は明治同様海外生産中国製缶商品ですが、明治中国向けに比べなんでこんなに格差があるのか?
 
 日本から中国、香港に輸出されている粉ミルクは60億円程度。正確ではないのですが、中国は共働きの為にミルク需要が高く今年の市場規模は3000-4000億円の間くらいときく。また、60億円の売上では、2007年の中国粉ミルク売上上位10位に入りません。1位企業の売上は280億円あったようで、1社で日本の市場と同じくらいになります(デ-タがどこまで信用できるのか疑問なので、ご存知の方は修正願います)。

 欧米系は、
・大量な広告宣伝投資を行う。テレビでも複数者の欧米ブランドのミルクの広告は良くみかける
・産婦人科病院などとの関係構築(売れたら賄賂あげているでしょう)。新生児を出産する奥さんの所に、看護婦や医者がミルクメーカーその他の代理店として商品の売込みをします。
・外資系だけでなく中国系のスーパー、それも結構な田舎でさえ店頭に置かれている(出店料も払っているでしょう)

 それに比べると、明治の広告なんて見た事ない。病院には入り込めていない。置いている店が少なく、置いていても扱いは隅っこの小さい場所にちょっとだけ。結局の所投資すべき所にお金を使っていない。日本市場向け商品がこれだけ中国に流れており、おそらく昨年は数十億円の売上分(中国市場向けの数倍はあるでしょう)になるでしょうが、これは一種の僥倖としか思えませんし、所詮タオバオなんてニッチなんです。
 
 本来、1兆円企業の明治なら、1桁違う単位の売上を中国でも納められるはずなんです。でもできていない。その他のミルクメーカーは押してしるべしですね。自分がかかわっている分野でこういう姿を見ていると、日本の消費者商品は実はものすごい事業機会のロスをしているのではないかと思います。

 中国は、物価に比べ広告宣伝費が高く、小売ががめつい不動産屋で、利益を出すのが難しい。高額な駐在員経費を賄えない。だから、広告打たない。安いネット広告だけ使う、お店を出店しても安いところにでる。これらは全てコストとして考える必要がある。そのコストを何年かけて回収するのか?そのための投資額は幾らなのか?

 外資系はちゃんとそういう計画を組み立てた上で、大きな投資をしています。当然企業規模により失敗した時の最大のリスクも織り込んでいますので、そのリスク許容度は企業規模により異なります。でも、ミルクメーカーに関して、和光堂や一度こけた雪印はリスク耐性が弱いでしょうが、明治や森永ならそこそこあるでしょう??ヤクルトなんて、もっと売るのが難しい全く新しい概念の商品販売して結構うまく行っていますし。

 他にも同じような大企業なのに中途半端な企業が沢山います。もったいないですよ。

 でも、小売の動きを見ていると、日本の人口=消費者市場の減退が、非常に大きな影響をもたらし、しゃれにならず、アジアって経済面では一体化していくんでしょうね。うーん。生まれてくるのが少し早すぎたかな。後、10年、30年という単位で日本の人口がどんどん減っていき、それに伴い先を見る企業は海外に出て行こうとする。

 落とし穴は一杯あります。リスクはかって知ったる日本国内より高いでしょう。でも日本に留まること事態が長期的にはリスクになる事を考える事。そして、リスクは逃げる物ではなくマネジメントする物である事。自分の目でしっかりと現場を確かめる事。多くの経営者が若いときには、実際に日本国内で自分がやってきた事を振り返ればよいだけだと思うんです。

 日本の大企業と、アメリカの大企業に所属した身として、日本の大企業で育つと、そういう自分自身が自分の目で確かめる、という基本が育たない。もしくは偉くなると共に消えていくのかなと思います。特にマーケティングは広告代理店や、調査会社、企画会社にぶら下がって自分で考える機能を持っていない企業を結構見てきましたし、財務系は、経理帳簿付けで終わっている、そしてそういう機能しか求めない経営者も多い。最近増えたのは、現場感ゼロのコンサル系の人がいきなり経営幹部になって海外事業をやろうとする事。日本の本業も知らずに、海外進出って言ってもできる事が限定されているんですよね。素材として優秀な人は多いので使い道は確かにあるけど、限界を把握して使わないと。日本の現場も現地の現場も全く知らずに、人の意見を救い上げて交通整理しているだけになってしまったら結果は悲惨です。

 日本企業の海外展開の下手さは、企業内ファイナンス機能(経営分析、提案)とマーケティング機能(販売戦略構築、プロモーション、商品企画)について自社でしっかりと人材育成をする仕組みが弱いからじゃないだろうか。海外に出た場合、生産系等のエンジニア以外で日本人に求められるのはこの2つしかないはずなんです。でも、この2つの機能を持つ人材が乏しい為に現地で見ると「なんで?」って思う変な失敗をしている。

 だから、しばらく日本企業はどこにいっても苦戦はすると思います。日系で海外進出企業をサポートするコンサル会社も、現状会計税務法務等の基本的なサービス機能しか持っていませんし、日本の会計事務所や法律事務所の大半と同様の機能しか果たせません。優秀かどうかではなく、求める機能が根本的に異なるんです。

 でも、これから10年、20年という時間の経緯が、どんどん日本企業や日本人の海外進出が進み、その中から新しい日本人が生まれて、欧米企業と十分に渡り合えるようになるんじゃないでしょうか?明治維新や、戦後の復興を成し遂げた日本人のポテンシャルを信じたいと思います。客観的に見て、日本人は真面目なのでモチベーションを高め、方向性を示すと非常に強いと思います。人間の脳みそなんて対して差が無くて、才能は多少はあるでしょうがごく一部のクリエイティビティを高く要求される分野を除き、ビジネスなんて努力とかけた時間じゃないでしょうか。センスも訓練である程度は磨けますし。今は過渡期なんだと思います。

 個人的には、おそまきながらその魁になるように今年もがんばっていこうと思います。
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2 コメント

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Unknown (P6)
2010-01-01 11:40:49
90%が国内というのは驚きました。
中国のファミマが日本資本なのかは知りませんが、セブンは7-11ジャパンが関与しています。でもそ成果は10年で北京89店舗。上海は始まったばかりですが、エイアフランチャイズと聞きますので、中国資本で、日本側からはコンサル料金等をもらうと言ったリスクの低い投資なのかなと思っています。日本のコンビニは小売の中ではましだとしても、前年割が続き縮小均衡になっています。少子高齢化もありますが、今の一番の苦戦理由はデフレだと思います。コンビニの主力客層の若い男性世代の厳しい状況を反映していると感じます。ただ、中国でコンビニ、しかも外資が成功するのは難しいのではないかと個人的には思います。ネット販売はセブンもかなり力を入れてますが、国内でさえも惨憺たる状況です。ネットの世界は厳しい、中国はもっと厳しい、競争という意味ですが、そんな気がしています。
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中国小売市場は (うし)
2010-01-01 12:51:44
 外資系のシェアが年々高まっているという危機感を表す報道がなされています。カルフールだけじゃなく、ウォルマートとか活躍しています。

 デフレの要因は幾つかありますが、本質は何が課題なのか。一過性の問題か長期的な課題か。

 厳しいけど、勝たないと企業は成長できない。成長できなければ給与を上げることはできない。そうすると優秀な人材は集まらず衰退する。

 パラドックスのようですが、J&Jは100年成長を継続しています(今年はさすがにダウンかな?)。そういう企業も世の中にはあるんです。

 イギリスは植民地を失って、長期的に実質的なGDPが下がっていたそうなので、参考にすべきでしょうが、蓄積した国富が違いすぎますから、日本は真似はできないですよね。
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