イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

コルドバ~メスキータを平和の象徴に

2005-02-27 22:54:54 | アンダルシア
 コルドバといえば誰もがまず思い浮かべるのはメスキータであろう。メスキータの存在は、その栄華を極めた頃、コルドバを欧州のメッカと呼ばせた。レコンキスタの後、モスクをカトリック教会にしたことで知られている。
 メスキータは8世紀、後ウマイヤ朝に立てられ、その後3度の修復により世界最大級のモスクになった。13世紀にキリスト教国軍の手に落ち征服され、カテドラルに改造される。
 光を多く取り込んだ、明るいモスクの入り口は一つを残して全て塞がれた。真っ暗な中でゆれるランプと宗教画。丸天井には天使が戯れ、鳩が翼を広げている。百合と薔薇があしらわれ、気高さと純粋さを表している。壁には聖人がかかれ、天窓から差し込む明かりが、幻想的である。暗い壁に、大きなクルアーンの石板が立てかけてあるが、目を留める者は少ない。足元には聖者の遺骸が納められ、髑髏や獅子が守っている。誠にふしぎな空間である。
 赤と白の馬蹄型アーチ。856本の柱が整然と立っている。壁際にしゃがんで柱を見上げると、どこまでも続いているかのような錯覚を覚える。この柱は、ナツメヤシの林を思わせたとも言われている。
 モスクであった頃、この柱の隅々にまで光が行き届いていたのである。その柱に寄りかかって居眠りする人。メッカに向かって祈る人。疲れを癒すために寝転ぶ人。いろんな姿が目に浮かぶ。今は失われたその床に敷いてあった絨毯はどんなものであったのか。スペイン原産のメリノで織られたものか。それとも土耳古?波斯から?
 美しきミフラーブ。このメッカの方向をさす壁のくぼみは、現在鉄柵の向うである。スペインにはモロッコからの移住者や労働者をはじめ、多くのイスラーム教徒がいる。イスラーム教徒は、今日メスキータでの礼拝を望んでいる。地元のイスラーム団体は「イスラーム教徒に還して欲しいというのではない。昔のイスラム統治時代のように異なる宗教が共存できる場にしたい」とローマ法王に許可を求める手紙を出している。しかし、コルドバ司教区では「モスクでキリスト教のミサができないように、聖堂でイスラム教の礼拝が出来ないのは当然」と言う。法王庁も「イスラーム教徒は歴史的事実を受け入れるべきだ」と拒否している。しかし、実際にイスラームの民と共存している地元の人々は、「礼拝してもいいのでは。それが共存していく上で大事」と考えているそうだ。
 キリスト教徒聖壇は中央。ミフラーブは壁。キリスト教の礼拝は日曜。イスラーム教の礼拝は金曜。重なり合うことはない。住民の反対もないのであれば、祈りの場を与えて欲しい。もとはモスクであったのだ。イスラームとキリスト教は兄弟宗教。世界に類を見ない、この特殊な建物を、世界の平和のためにも、二つの宗教が分かり合ってあることを示す手本にしてもらいたい。
 コルドバのように、キリスト教徒とイスラーム教は分かり合えるのだと、スペインは世界に訴えてもらいたい。
 中庭で、ミナレットの鐘の音を聞きながら、かつてはアザーン(祈りの時間を知らせる声)が響いた時代に思いをはせる。オレンジの木々の間で、祈りの前の清めを行う人々。手を洗い、口をすすぎ、頭と耳と足を洗う。そして、美しいアラベスクのモスクへ入ってゆく。
 水場の脇にあるオリーブの木は、幹の中身が殆どなく、皮ばかりという姿である。それでも毎年たわわに実をつけている。オリーブの幹の隙間から見える空。そこに歴史は息づいている。