イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

美味しい秘密

2010-07-25 22:45:23 | ないしょ ないしょ

 Under the rose…
 黙して語らず。

 その花に魅せられ、
 赤く染まる、乳白色の乙女の指先を思わせる棘に釘づけになり、
 語りかけてくるのをただ、ひたすらに待ち続けた。

 Under the rose…
 その名にふさわしく、凛として、閉ざしている。

 毎日、毎夜、
 Under the roseに、
 「ねえ、聞かせて」と、甘い声をかけるも、
 返事はない。

 

 花に見とれ、
 私は、足元に気がつかなかった。
 ある日、びっしりと鈴なりの青い玉を見つけた。
 つややかな、翡翠の実は、青い匂いを放っていた。
 Under the rose…
 真実、秘密は、永遠に、
 でも
作り出したその人の遊び心をどこかに潜ませ
 少しばかり披露してくれた、
 罪のない、かわいらしい内緒を、私に教えてくれた。

 真っ赤なトマトが実るころ、
 実に心奪われている私をよそに、
 Under the roseは、また、新たな秘密をその花に封じ込める。


 


逃れられない運命、スペインがエジプトにくるまれてやってきた

2010-07-13 23:43:52 | タベルナ・マタアム・食いもの屋
ちょっと早い誕生日プレゼントが届いた。
それは魅惑のオリーブオイル、スペイン産。
ボトルを眺めるだけでうっとり。
スペインをこよなく愛す、お姉さまからの贈り物。
活字中毒の私は、緩衝材に入っていた新聞を広げて、読み始めた。
と、そこにはエジプトの記事が…
エジプトよ、どうして私を引き止める。
逃れられないのか…
ああ、スペインに還る日まで、このオイルが慰めになることは間違いない。

薔薇の渓谷で

2010-07-06 17:50:18 | ないしょ ないしょ
 ないしょ話はこっそりと
 開かれた、広い広い処で
 誰も不思議に思わない
 人々が行き交うところで、
 ないしょ話とは
 夢にも思わない
 
 薔薇の渓谷が、
 薔薇色に染まる時刻
 ハートの木の下で、
 駆け落ちの相談

 誰も気がつかない
 ちょっと遠慮して、遠回りしてくれる
 用があれば、遠くから呼びかけてくれる

 秘中の秘
 深く、重たい、秘密ほど、
 広い広い処で

 ないしょの計画
 壮大な、先の見えない秘密こそ、
 開かれた場所で語るに限る

 わが一族に伝わる
 ないしょ話の方法
 
 隠すから見たくなる
 声をひそめるから聞きたくなる

 二人だけの秘密は
 薔薇の渓谷で
 薔薇色に染まる時刻
 ハートの木の下で

 
                                    foto/ Rose Valley Kappadokya

路地に誘われて

2010-07-01 23:28:36 | チュニジア編
テストゥールの路地に迷い込むと、
そこはチュニジアなのか、それともアンダルシアなのか、
まるでわからなくなってしまう

オレンジの匂いに誘われ、
奥へ奥へと迷い込んでゆく
冷たい風と、建物の影のひんやりした空気が、
そのうちやってくる暑くて熱い夏を予感させる

鋭い視線を感じ、
入ることが出来ないオープンカフェ

拒絶するわけではない
ただ、女ひとりがめずらしいだけ

それでも、その刺す様な視線に、
座ることが出来ずに歩み続ける自分がいる

ああ、ここは、イスラームの小さな町

アンダルシアであれば、
一人旅を珍しがられても、
その視線に、突き刺すような鋭さは感じないだろう

砂漠の民の瞳には、半月刀が潜んでいる

その吸い込まれそうな瞳を
正面から見てはいけない
美しすぎるものは、時に凶器

月明かりで磨かれた、
眼差しの奥に、
アンダルシアを見つけてしまったら…

もしも、見つけてしまったら…

どこか、他人とは思えない、アンダルシアの人々が築いた町で、
還りたいと異国人がつぶやいたら…


しかし、これは、もう、遠い昔のこと
いまは、チュニジアのイスラーム教徒たちの町

私は立ち止まらず、
この町をあとにする