イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

幸せな時間

2014-12-14 19:00:27 | エジプト編

「まったく飽きずによく見ているねえ…」

エジプトのカイロの市場、ハンハリーリの路地の奥にある、
精巧なイミテーションのファラオニック小物を売る店のおじさん二人はため息をつきながら、私を見ている。
日本大使館はじめ、ツアーガイドにも有名であり、世界のオリエンタルビーズコレクターがやってくる小さな店。
価格は定価で、ほとんど値引きも吹っかけもしない。
その店の大小のざるに入ったビーズを、私は来店するたび、ひっくり返して一粒一粒見ていく。
私が探しているのはイミテーションに混ざった、本物のアンティークビーズ。
私みたいなバイヤーがイタリア、フランス、ドバイ、中国…かつては日本人も訪れた。
革命以降私の独占市場に近かったが、最近また戻ってきている。
買い手が誰もいなかった時期に、たくさん買った私には、特別価格が与えられている。

「いったい何度ひっくり返せば気が済むんだい?」

何度でも、何度でも繰り返しひっくり返すに違いない。
なぜならば、どんなに分類しても、次行くともう混ざっているから。
そして、新たな物をまた足しているから。
いつまでもいたちごっこ。

この店の在庫は、おじさんの家のストックに至るまで、見られるものはほとんど触ったに違いない。
最近はさすがに、ざるの底まで総ざらいはもうしないけど(新しいものは上に撒いているはず)

近頃の私はこの古代のビーズののれんを眺めている。
色とりどりの古代と同じ泳法で今も作られている素朴なビーズ。
これを使って、あれも作りたい、これも作りたい。
アトリエにも、同じようにかけておきたい。
見ているだけで幸せになる。
そんな私を見ている店主兄弟もまた幸せな笑顔を見せる。

この国に起きている問題が嘘のような、暖かな空気と時間が流れている。