イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

花の都~メディナ・アサーラ

2005-02-25 22:35:14 | アンダルシア
 花、日本で花といえば桜をさす。イスラーム世界で花といえば薔薇。サウジアラビアでは、良いことがあると、噴水に薔薇水をいれる。薔薇の原産国はイラン。花びらの巻きがよく、大輪の薔薇は欧州で品種改良されたものだ。野生の香り高い薔薇野原はあこがれ。

 薔薇と水。イスラームの美。この二つはアンダルシアの家々の中庭、公園には必ずといっていいほどある。スペインの薔薇は、大輪だがふわっとした花びらをつけている。白にピンクに赤、紫。色とりどりの薔薇が、風にゆれる。

 かつてその名の都があった。メディナ・アサーラと呼ばれるそこは、今遺跡である。アルハンブラのようにしっかりとした建物も、庭も残ってはいない。ただ宮殿の遺構と柱、復元された建物があるだけ。メディナ・アサーラ。これをアルファベットに直すと、これがアラビア語のスペイン語訛りであることが直ぐにわかる。Madinat Al-Zahra。アラビア語ならマディーナトルザハラ。花の都。
 アブドル・ラーマン3世が寵妃のために立てた宮殿。妃は生まれ故郷であるシリアの雪山を恋しがった。アンダルシアは言わずと知れた南国。雪のかわりにアーモンドとさくらんぼの木を沢山植えたそうだ。満開になった木々は、真っ白な花びらを風にのせ、妃の心を慰めたであろう。
 宮殿跡から広がる広大な草原。遠くにかすむ街。この草原にかつて、雪山を思わせるほどのアーモンドがあったのを想像する。小高い丘の上の遺跡で目を瞑る。今、杉とオレンジと椰子がぽつぽつと生えているだけの遺跡。…気のせいだろうか。風に乗って白い花びらと薔薇の香りが私を取り巻く。月夜の晩に、中庭の噴水の音だけが響く中、王と王妃が語らう姿が目に浮かぶ。見つめあう二人。花の都には、そんな二人の伝説が残る。