イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

薔薇園

2008-03-22 22:44:25 | スペインが好きなアラブ

 イランの裁判所が、妻への慰謝料に、赤い薔薇12万4000本を命じたという。ケチでお茶一杯、カフェで飲ませてくれなかったという妻の言い分が認められた。夫は、一日に5輪が精一杯と言っている。
 毎日届く薔薇に、妻の心は…
 毎日薔薇を届ける夫の心は…
 薔薇の毅然とした姿が、柔らかな花びらが、芳しい匂いが、二人の心を癒し、慰め、未来を運んできますように。
 それだけの力が薔薇にはある。
 いつの日か、薔薇園で和解する二人の姿を、神がお望みならば、夢見たい。
 
 薔薇園。
 イスラームのあるところ、薔薇なくして語るものなし。
 
  花瓶の薔薇が汝に何の役に立とう
  わが薔薇園から一輪を摘みとれ
  薔薇の生命はわずかに五日か六日
  わが薔薇園は永遠に楽しい
                 『薔薇園』 サアディー 東洋文庫

 キリスト教徒によって押し出されたイスラーム教徒。宗教的、政治的には、フランスから流れ込む西欧の波に呑まれていったスペイン。
 しかし、文化的な、日々の暮らしからイスラームを消すことはなかった。
 シンメトリーの美しき庭園に、薔薇は今も咲き乱れ、芳しい匂いを水に漂わせる。
 物語の起源は、アラビアの古い物語に起因している。スペインの物語を読むこと、それはすなわち、イスラーム世界への入り口。
 
  薔薇が美しく咲き、これにまさる喜びはない
  そなたの手に酒杯があればさらに楽しい
                  『ハーフィズ詩集』 ハーフィズ 平凡社    

 スペインの愛すべき世界。
 庭園とバルのある生活。
 このルーツを求めて、ペルシアの薔薇園へ私は行く。                           

 

 

 

 


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視線の向こうに

2008-03-03 23:05:04 | スペインが好きなアラブ

 ああ、ハドリアヌスよ

 あなたの視線の向こうにあるもの

 それは、望郷の念?

 それとも…?

 この像はどこで造られたのでしょう。
 エジプトで?スペインで?イタリアで?
 アレキサンドリアの博物館。
 暗く、静かな館内の奥で、眼光鋭く、一点を凝視する、あなた。

 それとも、夜空に輝くアンティノウスの星を見つめているの?
 唯一愛した、アンティノウス。
 ナイルに還った魂を、嘆いて、神として奉り、
 星にまでしてなおも、愛し想い続けたあなたの愛しい人を…
 

 三島由紀夫が、ヴァチカンまで逢いに行ったという、アンティノウス。
 意外にも、近くで逢うことができる。
 地中海で引き上げられ、あなたの、そしてハドリアヌスの想いをよそに、
 遠く、遠くへ
引き裂かれた。
 物言えぬがゆえの悲しみ。

 ハドリアヌスの愛した青年よ。
 ハドリアヌスは、私に、あなたの魂を、スペインへ運べと、私に願うのだろうか?
 アンティノウス、東京にいる、あなたに逢いに行きましょう。
 そして、あなたのいるナイルへと私を導くのか、
 それとも、あなたもまた、愛しい皇帝だけを、なお見詰め続けているのでしょうか?
 あなたの瞳の中に、私はきっとナイルの青を見つけることでしょう。

 ハドリアヌスは、あなたの還ったナイルで、あなたに再び逢うことを願っていると、
 アレキサンドリアで、地中海の向こうのスペインを想いながら、
 私は、青空に浮かぶ白い月を見ながら、ただ…

 

 写真:アレキサンドリア、インターナショナル・ミュージアム所蔵


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