イランの裁判所が、妻への慰謝料に、赤い薔薇12万4000本を命じたという。ケチでお茶一杯、カフェで飲ませてくれなかったという妻の言い分が認められた。夫は、一日に5輪が精一杯と言っている。
毎日届く薔薇に、妻の心は…
毎日薔薇を届ける夫の心は…
薔薇の毅然とした姿が、柔らかな花びらが、芳しい匂いが、二人の心を癒し、慰め、未来を運んできますように。
それだけの力が薔薇にはある。
いつの日か、薔薇園で和解する二人の姿を、神がお望みならば、夢見たい。
薔薇園。
イスラームのあるところ、薔薇なくして語るものなし。
花瓶の薔薇が汝に何の役に立とう
わが薔薇園から一輪を摘みとれ
薔薇の生命はわずかに五日か六日
わが薔薇園は永遠に楽しい
『薔薇園』 サアディー 東洋文庫
キリスト教徒によって押し出されたイスラーム教徒。宗教的、政治的には、フランスから流れ込む西欧の波に呑まれていったスペイン。
しかし、文化的な、日々の暮らしからイスラームを消すことはなかった。
シンメトリーの美しき庭園に、薔薇は今も咲き乱れ、芳しい匂いを水に漂わせる。
物語の起源は、アラビアの古い物語に起因している。スペインの物語を読むこと、それはすなわち、イスラーム世界への入り口。
薔薇が美しく咲き、これにまさる喜びはない
そなたの手に酒杯があればさらに楽しい
『ハーフィズ詩集』 ハーフィズ 平凡社
スペインの愛すべき世界。
庭園とバルのある生活。
このルーツを求めて、ペルシアの薔薇園へ私は行く。