イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

見えないところに凝る美しさ

2010-04-26 18:00:00 | エジプト編

 襦袢や、襟足、洋服なら袖口のカフスボタン…
 見えるようで見えないところのおしゃれが大好き。
 イスラーム世界は平安時代と同じ。

 御簾の向こうの姫君。
 詠まれた歌の手に思いをはせ…

 真っ黒な衣装の裾から見える、色とりどりの着物。
 目深にかぶったベールの奥の輝く瞳。
 無防備な指先に感じる知性。
 
 イスラーム全盛期、世界の陶磁器が集まったカイロ。
 美しい、色とりどりの皿や壺。
 中でもたくさんあったのは素朴で、需要が多い水壺。
 ナイルの水をろ過する為に、壺のくびれの下につけられたフィルターは、
 作り手と、誤って壊したものしか目にすることがなかったにもかかわらず、
 美しい文様が彫られた。

             

                  
 ナイルの葦、

          


パピルス、

                                    


小石、

                


 小さな、舌触りの悪いものを取り除くために、

           

美しいアラベスクと、神への言葉が、その存在を自己主張することなく、

           


日々、人々に安らぎを与え続けた。


 割ってしまった壺の、美しいフィルターを、
 蜀台代りにしたのか…

 イスマレーヤの小さな博物館の、誰もが素通りしてしまう、
 小さなコレクション。
 その美しさを知り、追いかけるものが世界に少なからずいる。
 博物館の片隅で、
 かつてはごみをよりわけたフィルターは、
 多くの見学者の中の、一握りの人達をより分け、小さな模様の穴越しに、
 遠く栄えた、大帝国の夢を見せる。


伝統的なイスマレーヤの家

2010-04-09 17:00:00 | エジプト編
 イスマレーヤはカイロから2時間半。
 泊まった事はないけれど、散歩していると気分がいい。
 カイロのようにクラクションを鳴り響かせながら走る車もいない。
 クラクション禁止の看板も、カイロならば無視されるであろうに、ここではきちんと守られている。
 お巡りさんに道を聞いても、タクシーの運転手さんも、みんな「ちゃんと知っている」
 知ったふりで答える人にまだ出会った事がない。
 短い滞在時間の中では、知らない事の方が多いだろう。
 でも、印象はとてもいい街。
 カイロに住むイスマレーヤ出身の人達の、優雅な物腰。
 落ち着いた感じもいい。
 イスマレーヤの一軒家の中はどんな風になっているのだろう?
 外観からは、カイロの農村やルクソールの一軒家とは違い、ヨーロッパテイストの内装しか想像できない。
 スエズ運河で発展した町。外国からもたらされたものも多い事だろう。
 つい、きっとリビングは
フロイトの診察室のような感じかと想像を巡らせてしまう。

イスマレーヤの家

2010-04-02 22:53:04 | エジプト編
 エジプトに住むならどこ…?
 ルクソールも、カイロもいいけれど。
 年寄って、ゆりイスにすわり、居眠りする毎日になったら。
 イスマレーヤの静かな町で過ごしたい。
 大きすぎず、小さすぎず、二階建ての一軒家。
 ブーゲンビリアの生垣に、薔薇をたくさん植えて、ナツメヤシが一本あったらなお良い。

 
手紙もちゃんと届く。
 人々ものんびりとしている。
 夏には、ワニ湖へ出かけて水遊び。
 スエズ運河の入り口。
 カイロから2、3時間という距離も手ごろ。
 小さな見ごたえある博物館もある。

 イスマレーヤ、ここは本当にエジプトだろうか?
 行く度に、つい自問してしまう。
 何か書き物がしたくなる。
 縫い物もいいかもしれない。
 
 静かな、静かな、イスマレーヤ。
 エジプトだけど、エジプトを忘れてしまう町。