イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

望郷

2007-08-28 23:51:32 | リブロ・マクタブ・本屋さん

  君や知る、レモン花咲く国、
  暗き葉陰に黄金のオレンジの輝き、

  私の禁断症状が始まると、この詩が際限なく頭を廻る。
 ゲーテになぜ心引かれるのか、私は長いこと判らなかった。
 ドイツ人で、イタリア好み…私の琴線のどこに触れるのか?
 
 君や知る、レモン花咲く国、
  暗き葉陰に黄金のオレンジの輝き、

 このイメージは、イタリアの隣の国、スペインをほうふつとさせる。
 還りたい、還りたい、還りたい!
 君や知る、レモン花咲く国、
  暗き葉陰に黄金のオレンジの輝く国へ
 日本を飛び出したくなると起こる、望郷の念か?
 私が中学生の時に買った、700円(!)のケース入りのゲーテの本は、いい匂いがする。最近の本は、匂いがしない。開くだけでほっとする感じがない。
 中学生の私は、まだイスラームのこともスペインのことも意識したことがなかった。
 表参道に立ち、この町並みに似たところにある、ガウディの家に住むんだと言い、(後にこれは、ランブラス通りのイメージだったと、バルセロナで確信する)カスタネットがくっついた靴の踊りが気になるものの、タップダンスのことだと思い込んでいた。
 (これはフラメンコのことだった)
 旅に出られない苦しみの中で、読みふるした文庫ではなく、このケースに入った本を久しぶりに引っ張り出して、唖然とした。
 『東西詩集』は丸ごと、イスラーム世界だった。欧州の民が感じたイスラーム。それはまさしく、アンダルシアを懐かしむのに、ぴったりの一冊。
 
 甘い香りでおまえに媚び
 おまえのよろこびをたかめるためには
 莟(つぼみ)ほころぶ千の薔薇が
 まず炎熱の中でほろびねばならぬ

 アンダルシアのいにしえの世界へと、私をいざなう。
 
 

                  ミニヨン、『ゲーテ詩集』高橋健二訳
                  ズライカに、『東西詩集』井上正蔵他訳

 


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薔薇の何たるか…

2007-08-18 00:04:57 | マドリード

 バラの季節、マドリードにいたら必ず薔薇園に行く。
 2月、まだ寒い冬のマドリード。あの、天国のような、薔薇園を想い、カサ・デ・カンポを散歩をしたあと、薔薇園ヘと丘を下った。
 閑散とし、春に向けて株だけになっている薔薇たち。
 通路には、切り落とした枝葉が散乱し、歩くこともママらない。
 噴水が一つだけ水音を立てているだけの、荒れ果てた庭園。
 二組の恋人たちが、ベンチでひっそりと語らうだけの薔薇園。
 行く道を阻む、切られた枝に、まだ息のある薔薇を見つけ、手にする。
 棘の痛みに、枯れゆく薔薇のプライドを感じ、詩の一説を思い出す。

  バラの季節が過ぎたる今にして、
  はじめて知るバラの何たるかを。
  遅れ咲きの茎に輝けるただ一輪
  千紫万紅をつぐないて余れり。

 恋人たちには、いかなる季節でも、満開の薔薇だけが見えていることだろう。
 いま、スペインへいつ還れるのかと思いを馳せる、私の目の前が、常に満開の薔薇、そのかぐわしい匂いが風に乗ってくる錯覚に捕らわれているように。

         (シラーの頭蓋骨をながめてより、一説。『ゲーテ詩集』高橋健二訳)

 


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ご当地饅頭ならぬチョコレート

2007-08-07 23:54:04 | タベルナ・マタアム・食いもの屋

 ハカの町で見つけたチョコレート。
 巡礼の印、帆立貝の形をしてチョコレート。これぞ、ご当地名物土産!
 そんな、安っぽい感じはもちろんなく、上品に並んでいる。
 この日はカーニバル。お菓子屋さんのメインはカーニバルのケーキや、お菓子。ウインドウの片隅に置かれた、シルバーのコンポートに並べられた、金のチョコレート。その存在感は、巡礼の街の歴史を練りこんであるようだ。
 その神々しいような美しさに、見とれていた。なにか、食べるものだと言うことを忘れてしまう何かがそこにはあった。

 


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