イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

時の過ぎるままに

2010-02-23 23:40:44 | エジプト編
 静かな午後 
 日差しを求め、 
 椅子を少しずつ動かす。  

 玄関ホールは思いのほか静かで、 
 その向こうの客間と居間のさらに向こうの土間と、 
 TVルームから聞こえる子どもたちの声とテレビの音が遠くから響いてくる。 
 私がいないことに気がつくのはいつか? 
 子どものパタパタ走るサンダルの音か? 
 お祈りを終えたおばあちゃんが、日向ぼっこに来るのが先か? 

 ひと時。 
 時がゆっくりと流れている。 
 私の大好きなルクソールのおうち。 
 いつでも訪れることが許され、 
 いつまでもいて欲しいと懇願され、 
 遠い親戚よりも近しい日本の女に、 
 ここに溶け込むことは許されているのか?  
 すべては、神のみぞ知る。 

 この地で、私をハッジャと呼ぶ人が増えてゆく。 
 ハッジャはメッカに巡礼した人への尊称。 
 私のどこがハッジャなのか? 
 抵抗感のある呼び方に、抗議すれど、 
 「そう呼びたいのさ。 
 君が天国へいけるようにね。 
 イスラームに入信しなければ、君は火で焼かれてしまう。 
 そんなことを、誰も望んでいない。 
 土に還って、大地に還元され、また生まれ変わって欲しいんだ」  
  
 いつの日か、この地で、私が… 
 数珠を指先で繰りつつ、ぶつぶつとつぶやきやきながら、本物のハッジャがやってきたので、小さな陽だまりを明け渡す。 
 子どもの私を呼ぶ声がする。