砂漠の奥の奥、アレキサンダー大王がご神託を受けた地。
クレオパトラが泳いだという泉は深い緑の底がくっきりと良く見える。
シーワ…
そこはもう、エジプトとは思えない。
つい30年ぐらいまで、エジプト政府が厳しく戸籍調査をするまで、自分の誕生日もうろ覚えの人がたくさんいた。
エジプトの果て、シーワ・オアシス。
ベトウィンの人々の瞳は、シーワの泉のごとく深い。
吸い込まれるような、濁りのない美しい瞳。
まっすぐな瞳に飲まれそうになり、見上げた空は、また美しい。
あの瞳を思い出すと、頭が真っ白になって、
また「還りたい」という、純粋な欲望が湧いてくる。夢遊病にかかったかのごとく、ほかの事が締め出されてしまう。
砂漠の空は高い。
泉は底の底まで見える。
ベトウィンの、静かだが、情熱的な言葉と瞳を思い出してクラクラする。
シーワは遠い。
近いカイロに還りたい。
日本も陽射しが鋭くなってきた…