イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

庶民のケーキ屋さん

2006-03-11 00:30:40 | タベルナ・マタアム・食いもの屋

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 私は有名な辛党である。美味しいトウバンジャンがあれば、それでご飯を食べられると言うぐらい辛いものが大好きである。だからといって、なんでも辛くして食べるかと言えば、そんなことはない。風味を損なっては食べる楽しみがない。子どもの頃から塩辛やカラスミが好きで、「これは飲んべになるに違いない」と言われたが、お酒はたしなむ程度。
 甘いものはと言えば、あんこは苦手、チョコレートも買って食べるのは年に数えるほど。自分のためにケーキを買うことはまず無い。そんな私が、スペインにいくとケーキを買う。最初、なぜだか判らなかったが、段々と判明してきた。脳が酸欠なのだ。
 私は語学が満足に出来ない。母曰く「娘は度胸と愛嬌で旅をしています」と言っているが、否定できない。そして、ただの無鉄砲であるから、行った先で不安と恐怖と戦っている。鼓動も早い。行く前はワクワクから、行ってからは不安によって不整脈となる。極楽トンボもここまで来るとあきれるばかりだ。
 脳が疲れると糖分を要求する。私はお茶やコーヒーに砂糖を使わないので、ケーキに走ったと思われる。通常はランチのデザートにフラン(プリン)を食べればもつ。しかし、予想外のことがおきてしまうと大変。朝から菓子パン2個である。スペインで私を目撃した、とある日本人に、「君は糖分を取りすぎるから疲れやすいのだ」と忠告されたことがある。私は、「普段はこんなに甘いものは食べません」と言いたかったが、異常に食べていたので何もいえなかったことがある。ジュースなぞ、風邪を引いた時のりんごジュースと、日焼け予防のオレンジジュースぐらいで、甘味はお酒と同様、付き合いでしか取らないといっても良い。
 そんな私であるが、昔から目が無いものがある。それはメレンゲ。日本ではめったにお目にかかることが無い。その上小さい。大抵はケーキの飾りに見る、イチゴサイズが最大級だ。
 しかし、スペインのメレンゲは大きい。甘食ぐらいの大きさがある。最初バルセロナで見つけたとき、私はお菓子屋に入る習慣がなかったために食べ損ねてしまった。次に行った時は、見なかった。どうやら、どこでも売っている地方と、そうではない地方があるらしい。
 3度目の正直でメレンゲの前に立った私は、ドキドキしながら指差して、一つ買った。カリカリに焼かれたメレンゲは、壊れやすいのに紙袋にポイッと入れられただけだった。
 その次は生メレンゲに挑戦した。パイ皮にはさまれたメレンゲはフワフワ。やっぱりドキドキしながら注文した私は、さらにドキドキしてしまった。なんと、店のおばちゃんはそれを紙でくるんだのだ!このとき私はレモン風味の生ケーキも買ったのだが、一包みにくるっと紙でまいて寄越したのだ!私は生まれて初めて、箱に入っていないケーキを買った。どうやってもって帰ろうか思案していると、スーパーのビニール袋をおばちゃんがくれた。これはもっと怖かった。振り回してしまいそうだ。
 私はまだ高級ケーキ屋で買い物をしたことが無い。いつもパン屋のケーキ売リ場か、村のケーキ屋さん、スーパーの中のケーキ売り場で買う。必ず紙でくるんでくる。かわいいデコレーションも何もあったものではない。気をつけてもって帰らないとえらい事だ。
 さて、近頃は不安を覚えて心臓バクバクという日はかなり減った。   

 そんな訳で写真のカリカリメレンゲと生メレンゲを食べるのに1週間もかかった。最後は粉になってしまい、薬のごとく飲んだ。アンダルシアの村で買って、マドリードまで持ってきてしまったのだ。万が一の時の常備薬…
 ダリの町、カケダスのメレンゲにはナッツが入っていた。これも思い出。
 有ったり、無かったり、甘いものはちょっと有ればいい私にぴったりのお菓子。メレンゲ紀
行は続く。


春を呼ぶ菫キャンディ

2006-03-08 23:48:05 | タベルナ・マタアム・食いもの屋

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 春、菫の花が咲き始めると、私はむしょうにマドリードが恋しくなる。
 プエルタ・デ・ソルからプラド方面に向かうサン・ジェロニモ通りをまっすぐいくと、プラサ・デ・カナレハスに出る。上品な木枠のショーウィンドウは天井まで上品なヴァイオレット・カラーで埋め尽くされている。そしてほのかに香る菫の香り。創業90年になる菫キャンディの専門店、ラ・ヴィオレータ。
 菫キャンディは、マドリードのおみやげ物屋さんでいくらでも売っている。でも、かわいい入れ物と、お店の雰囲気を思い出すと、ついつい足を運んでしまう。

 マドリード近郊の山に咲く菫から作られるキャンディ。量り売りのほか、かわいい菫の絵のついた陶器の籠やボンボン入れにはいっているものから、造花の菫がついた袋入りのものまで、用途に合わせたさまざまなラッピングも素晴らしい。
 ヨーロッパ系のキャンディが大好きな人にはもってこいのお土産となるが、日本のキャンディしか受け付けない人にはお勧めしない。う~ん。買って見たいけど、考えてしまう…そんな方には、ピルケースに5粒はいったものがお手ごろ。
 菫をかたどったキャンディを眺めているだけでも、春の到来を感じて顔がほころんでしまう。まさに、マドリードの春の味。
  菫キャンディ一筋だったが、先だってたずねたらお茶も売っていた。


天気予報とアラビア語

2006-03-03 22:30:26 | 旅の仕方
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 どこに行っても見る番組は、天気予報ではないだろうか?スペインの天気予報を見て、まず思ったこと。それは「あ、女王様の横顔だ!!」ポルトガルのところがちょうど横顔になり、金髪のお姫様に見えた。
 国によって天気のマークは違う。何よりも印象的だったのが、晴れ。日本人的感覚だと、丸くて赤い太陽から光線の線が出ているものを誰しもイメージすると思う。スペインのはどう見ても卵の黄身。黄色くて丸い太陽マークがたくさん並んでいると、目玉焼きが食べたくなる。
 初めてスペインに行った時、私はスペイン語がまったく判らなかった。ひとりで行く海外も初めてだった。今思えば、よく行ったもんだと我ながら感心するが、若さというか、バカさというか…
 イタリアから入ったので、しばらくイタリア語でなんとなく、カタコトを口にしていた。「カフェ・ラテ」と言えば「カフェ・コン・レチェ!」とかえされる。「グラッチェ」と言えば「グラシァス!セニョリータ!!」と、耳をつかまれんばかりに寄ってきて、私の体にスペイン語を吹き込んでくれた陽気なスペイン人たち。
 それはヨーロッパの国にいくつか行ったことがある私にとって初めての経験だった。
 ドイツ圏では、全部「判らない」というジェスチャーでかえされて、とほうにくれた。フランスでは全部フランス語でまくし立てられた。イタリアは、気の無い英語がかえってきた。
 スペインは何かが違った。英語が出来る人でも、とりあえずスペイン語で色々説明し、そして最終的に英語で解説してくれた。英語が出来ない人は、諦めてしまうことなく情熱的に語りかけてくれた。
 この情熱をきちんと理解できないことがとても悲しかった。どうやったらスペイン語を理解できるようになるのか。私はとにかく、スペイン語になれるためにテレビをつけた。宿にいる時でも常に聞いていれば、少しはましになるのではと思ったのだ。
 最初、卵の黄身に釘付けになっていた天気予報。私の耳はひとつの単語を捕らえた。「ブハイラ」予報官の女性は確かにそう言った。ブハイラ…それはアラビア語で湖の意味。地図を広げて見ると、予報官が指差したところには、湖があった。湖水地方だ!
 私はヘレン・ケラーがはじめて言葉を理解した時の気持ちが判ったような気がした。

 スペイン語のうち約1万語はアラビア語源である。私はアラビア語が堪能ではないが、ほんの少し判る。スペイン語よりはだいぶ単語を知っている。さて、この1万語はどんなところに残っているのか考えてみた。日本に残っているポルトガル語はどんなところ?そんなイメージで探し始めた。
 スペインはイスラームがどこまでも攻め入り、小国を作った。イスラームが残した足跡はどこにあるの?疲れきった私は、とにかく何か食べようと外に出た。タベルナでメニューを広げ、めくらばんで頼もうとした時、私の目に飛び込んできた文字は「ガンバス」これはえびに違いない。アラビア語の「ガンバリ」だ。値段も見ずに私はそれを注文した。すばらしく大きなえびが出てきた。
 地名と食べ物にアラビア語源のものが多いと気がついた私は、恐れることなく街に飛び出した。私の行きたいイスラームの香り高いスペインの地は、アラベの名前を持っているに違いない。そして、どんなに苦しい時でも、私は自分の知っている食べ物を要求することができる。アルハムドリッラー(アッラーのお陰で)
 こうして、私は無謀な旅を続けている。そして、スペインの人たちは、私が理解していないことを判っていながらも、情熱的に話しかけてくれる。そこにいることを許されている。そんな気にさせてくれるスペインは素晴らしい。