イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

旅人それは羊飼い

2005-02-14 21:31:21 | プロローグ
パウル・コエーリョに『アルケミスト』という作品がある。
貧しい農家の少年が、「広い世界を知りたい。そのために旅に出たい」という大きな希望を胸に父親に相談する。父親は「私たちの仲間で、旅ができるのは羊飼いだけだ」と息子を送り出す。
少年は夢に出てきたエジプトのピラミッドを目指して、アンダルシアの平原から旅をはじめる。彼の前には占い師やセイラムの王様と名乗る老人が現れ、彼を後押しする。羊を売り、マグレブに入った少年はスーク(市場)でだまされて一文無しになる。クリスタル商人に出会い、アラブ式の商売を歯がゆく感じつつも懸命に働き、ピラミッドへの夢をあきらめない。
商人は少年に、そしてこの本を読んでいる間中、私たちの耳に残る「マクトゥーブ」という言葉を印象的に投げかける。
「『それは書かれている』というような意味さ」と商人は言う。
「しかし、アラブ人に生まれなければわからないよ」とも。
そして少年はついにキャラバンと共にピラミッドを目指し、再び歩き始める。そこで出遭ったアルケミスト(錬金術師)に「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力してくれる」という言葉をかけられる。
エジプトのオアシスではべトウィンとの出会いと、恋。
人生においての試練と教訓を学び、人間の弱さに負けそうになりつつも少年は自分の夢を信じて旅を続ける。

私の旅は羊飼いの少年とシンクロする。
欧州の片田舎から列車を乗り継ぎアンダルシアへ。そして船でマグレブへ。飛行機でエジプトへと私は向かった。そこで見た青の数々。
時を越えて、私は糸を紡ぎタペストリーを織って売る。売れるとまたピラミッドの影を感じつつ、青い空と海を渡り、アラブ世界へと帰ってゆく。
「旅をできるのは羊飼いだけ」
私は今様の羊飼いならぬ羊使い。
私は天の子ども、白い雲をつれて青を求める。

それはダーウィンから

2005-02-14 00:18:48 | プロローグ
羊。雲が地上に降りてきた。
天から使わされた子ども達。

私が羊について書くとき、必ずダーウィンの一節を引用する。
「羊の家畜化の起源を探るのは徒労に終わる」
この情緒的な文章は、論文の場合最後に削除することになる。
それでも私は必ず記す。
人類を象徴するもの。それは衣類。
羊は私たちに肉、毛そしてミルクを与えた。
しかし、一番重要なことは文化をもたらしたことだ。
毛を固めフェルトをつくり、そして糸にすることを覚えて織った。
もっとも、糸から織の行程は植物繊維を使ってのほうが早い。
しかし、毛を利用することを思いつくのに、そう時間はかからなかったであろう。
羊は、いつでも私たちとともにある。

羊飼いは語り部。
天の使いを連れて、何処へ…。
月明かりの夜、羊飼いは語る。
さて何から語り始めようか。