「真っ赤な糸玉」を口ずさむ女たちの声で幕を開けた、tpt『血の婚礼』。
その歌声が最後まで響き、今の私の耳の奥でこだまする。
アンダルシア生まれのロルカのペンから流れいずる、その文字が、生々しくいつまでも乾くことのないどす黒い血の色をしていたのではないかと思い…
赤い糸は、運命の糸。
切っても切れない、血の糸は、糸玉となり、フエルト化し、黒ずみ、恨みと嫉妬が大きな糸玉になってゆく。
しかし、時経てば、ほころびもおき、ふとした弾みで転がり落ちた糸玉は、どんどんと転げ落ち、転げ落ち、一本の糸に戻ってゆく。
ジプシーは許さない。
自分の一族の血を汚したものを。
末代までも、その血の怨念は果てしなく続く。
そしてまた、それゆえに愛するものへの情熱も激しい。
真っ赤な、燃える血を滾らせ、その視線で相手を一突きする。
砂の上を裸足で踏み鳴らす踊りを取り入れた演出は、まさにフラメンコの原点。
コンクリート打ちっぱなしの倉庫という無機質な空間に、アンダルシアの痩せた大地をシンクロさせ、巻き上がる砂煙と、黒い衣を染める砂の染みに、ジプシーの日常が見えてくる。
360度客席が囲み、中央で芝居をする役者たち。
見る角度によって、物語のイメージもだいぶ違うことであろう。
一つの芝居であるが、ドラマは角度により、いくつもの展開を見せている。
舞台をさえぎる倉庫の柱で、せりふは聞こえど見えない動き、見えない人物…
糸は絡み合い、糸玉になり、また転げ落ち…ジプシーの血の争いは、堪えることがない。
公演は18日まで。
目の奥に焼きつく、婚礼の日に駆け落ちする花嫁の真っ白なドレスを切り刻むかのような、転げ落ちる真っ赤な血の糸の向こうに、カンテとバイレの踏み鳴らす大地の音と、手拍子…
しばらくは、私の中で渦巻くことになるだろう。
還れない故郷への想いも新たに。
写真は、今年出品する、折り紙。
今年はスペインには縁のないクリムト。さて、これが、どうクリムトに化けますか?
クリムトとスペインと言えば、スペイン風邪でお亡くなりになったということぐらいか。
しかし、モチーフのところどころには、ガウディに共通するイメージも…
折り紙展は11月6日~8日 地域文化創造館(JR大塚または丸の内線新大塚駅より徒歩3分)