イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

沙漠の奥地で

2010-01-12 17:52:22 | チュニジア編
 キークルクル、キークルクル、糸車を回しているのが日課だったころ、
 ペダルを踏まない日が来る事など考えてもみなかった。 時には、スピンドルを使い、 手元でしんの強い糸をひねった。
 都会に根を張る、緑の濃い葉っぱからは黄色い色をもらい、
 ネズミモチのたわわに実った実からは、
 濃い紫の煮汁に染まった羊毛を取り上げ、
 風にさらされると鮮やかなグリーンに姿をかえる。
 芽吹いてきた幹をバッサリと惜しげもなく切ると、
 花の色を、映し出す。

 まだ、雨の匂いのチュニス。
 地中海の冷たい風から、少し暖かな沙漠の風にふれ、
 乾いた泥レンガの家の中。
 何年も、何年も、
 そこにあるのが当たり前で、
 とはいえ、もう手を触れる人もなく、ただ、置かれている、錘。
 ふと、毎日手にしていたかのように、
 手に取ってしまいそうな己の手に、我に返る。

沙漠のフレーム

2010-01-06 17:55:26 | チュニジア編

 トズールの土産物屋の奥、所せましと並べ、積まれた古い織機と、紡績の道具に、吸い寄せられるように近づいて行く。
 錆びた鉄の赤い釘を化粧するように、砂がこびりついている。
 刈った羊毛をすくブラシブラシ、絨毯を引き締めるブラシ…

                

 羊毛を載せる鉢と、すき台。

                       

 何より、沙漠に突き立てる立て機に、強く惹かれる。
 機を立てるだけで、そこにはいくつもの物語が生まれてくる。
 機のフレーム越しに見える、どこまでも続く沙漠。
 青い青い空。
 緑のナツメヤシの森は、実りの時期になれば、真っ赤に色づく。

 経糸を張り、糸越しに見える景色に、
 沙漠の女たちのベール越しに見える情景を思い、
 立膝をついて、リズミカルに糸を結んでゆく、うしろ姿を想像する。
 
 しばし時を忘れ、立て機の向こうに見える物語に酔いしれる。