イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

クロイスターズ、懐かしさと違和感と…

2007-05-30 00:26:28 | スペインを求めて…

 地下鉄を降り、雑木林に入り込んだ。じめじめとした土の匂い。枯れ草を踏む音。時折、犬の散歩の人が通るくらいで、人気はあまり無い。
 アメリカで、こんなところを歩くなんて、後でそれを知った人たちに沢山お説教をされるだろうなと思いつつ、私は丘をのぼって行った。

 私に必要なもの。飢えているもの。それは静寂。
 一人になりたくて、
 私を知る人のいないところに行きたくて、
 それでいて、どこか人恋しくて 、
 暗く寂しい森をぬけ、青い空にくっきりと浮かんだ城の前に出た。
 
 私は裏口、勝手口が大好きだ。自然とここも裏口から入っていった。急に開いたドアに、他の観光客の驚いた顔。さて、ここは私の求める場所なのか?
 水音に導かれながら、歩みを進めた。
 明らかにアラブ様式を取り入れた、中世スペインの建物。オレンジの木があれば、アンダルシアのパティオに迷い込んだかと、錯覚を起こしそうだ。
 柱廊の柱に身体をあずけ、中庭を覗き込む。柱を見上げる。
 柱は一本、一本皆違うデザインである。植物を模したものから、思わず笑ってしまう人物、不思議な生き物…
 遠くから見ると、モスクから教会に変貌を遂げたスペイン建築のような空間が、その中に身体を置くと、行った事もないフランスを感じるのはなぜか?
 なぜも何も、フランスからの移築である。スペインとフランスの中世美術の融合。
 懐かしいようで、何か違和感を感じながらも、居心地が悪いわけでもない。
 夢うつつのような不思議な気分。
 ここにあるのは、スペインだけれども、私の知るスペインではない。フランスの香りのするスペイン。
 いつの日か、サンティアゴ・デ・コンポステーラを歩いてみたいと思っていた。巡礼の旅はフランスから始めようと決めていた。でもそれは、漠然としたもので、近い将来のことではなかった。つまみ食いのような旅はしない。大好きなアンダルシアもよく知らないのに、スペインの北へ行かれるわけがない。
 しかし、ここを訪れてしまったことで、私の足は北スペインへ向いた。ここへ来たことを、意味あるものにするために、私は北へ行かねばならない。

 不思議なものである。それまで、私の前に現れたスペイン好きはみなアンダルシアに興味を持った人たちだった。それが、にわかに北が好きな人たちへと取って代わったのである。
 私は一人になりたい時にスペインに行く。だから、スペイン人の友達もいないし、在住の日本人にも、ほとんど接触したことが無い。
 北が私を呼んでいる。この後、私はスペイン北部を愛する人たちに沢山出会うことになる。
 でも、この時、私はまだそのことを知らない。

 クロイスターズを出て、私はヘザーの庭で、花と戯れ、花の蜜を求める蜂を追いかける。
 入場券代わりのバッチを落とした事に気がついたのは、丘を下ってから。これがあればメトロポリタン美術館にも入れたのに!(クロイスターズは、メトロポリタン美術館の別館)

 NYの奥、秘密の森にありました。静かなスペイン。私の知らないスペインが…
 知らないけれど、NYではここが私のスペイン。
 NYに再び行くことがあるのかわからないけれど、その時があれば、間違いなく戻ることでしょう。


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オーデュボンテラス、私の求めるスペイン

2007-05-25 01:12:05 | スペインを求めて…

 私にとって、NYは東京にいるのと感覚がほとんど同じであった。
 旅しているのに、なぜ、足取りに弾みが無いのか?
 歩き方が、日常とまったく変らず、目的の方向へとだけ規則的だ。
 ふと、路地に迷い込んだり、ふらりと立ち寄った公園で縫い物(そう!私はよく、スペインの公園でクマを作っている!)をしたりする気にならない。
 絵の具も、色鉛筆もスーツケースにしまいこんだまま、ただただ、美術館にもぐりこみ、一日が過ぎる。
 NY滞在も終わりに近づいた頃、私はオーデュボンテラスへと足を向けた。
 闇雲に旅をするのは好きじゃない。NYの中のスペインを見ないことには、私の旅の意味が無い。
 NYではいつでも、どこでもスペイン語が飛び交っていた。宿の従業員が話すスペイン語が、どこか懐かしいスペインを思い出す拠り所であった。でも、NYのスペインが、これだけではどうしようもない。何しろ彼らの多くはメキシカンで、生粋のスペイン人ではない。
 ハーレムの奥、オーデュボンテラスにある、スペイン協会で、私はやっと安堵感を得た。
 門をくぐって、目に飛び込んできたのは、スペイン北部の空気であった。NYへスペインから来た移民の多くは、バスクの人たちだ。スペインではあるけれど、私の探すスペインではない。イスラームの香りではなく、そこに漂うのは、フランスの香り。もっとも、私はフランスを知らない。なんとなく「そう感じる」だけだ。
 だから、暗く、細い通路を経て、光がさんさんと差日込む、広く高い天井のホールに出た時の事を私は忘れない。
 そこで待っていたのは、ぐるりの壁いっぱいにかけられた絵と、画家の彫像。
 
私の大好きなスペインの画家、ソローリャが、待っていた。

 私はずっとそこにいた。
 ただ、座っていた。
 アンダルシアの喧騒が聞こえていた。
 花と、果物の香りがした。
 
 「ソローリャが好きなんだね。いたいだけいなさい」と、絵の下で絵葉書を売っていたおじさんは言った。そして、私を一人にしてくれた。

 アンダルシアを、地中海を愛したソローリャが、NYで私を待っているとは夢にも思わなかった。


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味なスペイン語

2007-05-05 23:19:59 | リブロ・マクタブ・本屋さん

追記
 5月号の特集で気がついたのですが、特集Para beber?コーナーの取材協力にティオ・ダンジョウとありました。私のお気に入りのお店です!


3/19の記事↓ 
 4月からのNHKテレビスペイン語講座は、食いしん坊なスペイン・ファンにオススメ。俄然勉強する気になるテキストです。
 なんと「料理で覚えるスペイン語」
 レシピも満載です。
 また、Que tal? は「元気?」だけだと思っていたら大間違い!
 調理中の「焼け具合はどうですか?」とか、「塩加減は?」などの「どんな具合?」にも使えるなど、固定概念を覆し、知っている単語で応用を利かせる学習法は、スペイン語をかじったことがある人に、必見です。
 美味しいボキャブラリーを増やして、スペインを食べつくそう!


 


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