スペイン食材を手に入れるのに、忘れてはならないのが「やまや」
私の行動範囲にあるのは、新宿南口、池袋P'パルコはす向かい、光が丘の3店舗。
常時手に入るのは100%果汁ジュースとワインの「ドン・シモン」ブランド。
スペインと同じものを日本で手に入れることができる。……そう、まったく同じものを!
私はスペインのデパート、エル・コルテ・イングレス内のスーパーで受けた衝撃を忘れない。何気なく手に取った、ドン・シモンの表示には日本語で品名から、賞味期限まで書かれていた。そして「輸入者やまや」の文字に、「まだ輸出してない!」と、心の中で叫んだ。
ドン・シモンの100%ジュースを集め、ヴィノを手に入れたら、100%スペインのサングリアを作ろうかな。
私は有名な辛党である。美味しいトウバンジャンがあれば、それでご飯を食べられると言うぐらい辛いものが大好きである。だからといって、なんでも辛くして食べるかと言えば、そんなことはない。風味を損なっては食べる楽しみがない。子どもの頃から塩辛やカラスミが好きで、「これは飲んべになるに違いない」と言われたが、お酒はたしなむ程度。
甘いものはと言えば、あんこは苦手、チョコレートも買って食べるのは年に数えるほど。自分のためにケーキを買うことはまず無い。そんな私が、スペインにいくとケーキを買う。最初、なぜだか判らなかったが、段々と判明してきた。脳が酸欠なのだ。
私は語学が満足に出来ない。母曰く「娘は度胸と愛嬌で旅をしています」と言っているが、否定できない。そして、ただの無鉄砲であるから、行った先で不安と恐怖と戦っている。鼓動も早い。行く前はワクワクから、行ってからは不安によって不整脈となる。極楽トンボもここまで来るとあきれるばかりだ。
脳が疲れると糖分を要求する。私はお茶やコーヒーに砂糖を使わないので、ケーキに走ったと思われる。通常はランチのデザートにフラン(プリン)を食べればもつ。しかし、予想外のことがおきてしまうと大変。朝から菓子パン2個である。スペインで私を目撃した、とある日本人に、「君は糖分を取りすぎるから疲れやすいのだ」と忠告されたことがある。私は、「普段はこんなに甘いものは食べません」と言いたかったが、異常に食べていたので何もいえなかったことがある。ジュースなぞ、風邪を引いた時のりんごジュースと、日焼け予防のオレンジジュースぐらいで、甘味はお酒と同様、付き合いでしか取らないといっても良い。
そんな私であるが、昔から目が無いものがある。それはメレンゲ。日本ではめったにお目にかかることが無い。その上小さい。大抵はケーキの飾りに見る、イチゴサイズが最大級だ。
しかし、スペインのメレンゲは大きい。甘食ぐらいの大きさがある。最初バルセロナで見つけたとき、私はお菓子屋に入る習慣がなかったために食べ損ねてしまった。次に行った時は、見なかった。どうやら、どこでも売っている地方と、そうではない地方があるらしい。
3度目の正直でメレンゲの前に立った私は、ドキドキしながら指差して、一つ買った。カリカリに焼かれたメレンゲは、壊れやすいのに紙袋にポイッと入れられただけだった。
その次は生メレンゲに挑戦した。パイ皮にはさまれたメレンゲはフワフワ。やっぱりドキドキしながら注文した私は、さらにドキドキしてしまった。なんと、店のおばちゃんはそれを紙でくるんだのだ!このとき私はレモン風味の生ケーキも買ったのだが、一包みにくるっと紙でまいて寄越したのだ!私は生まれて初めて、箱に入っていないケーキを買った。どうやってもって帰ろうか思案していると、スーパーのビニール袋をおばちゃんがくれた。これはもっと怖かった。振り回してしまいそうだ。
私はまだ高級ケーキ屋で買い物をしたことが無い。いつもパン屋のケーキ売リ場か、村のケーキ屋さん、スーパーの中のケーキ売り場で買う。必ず紙でくるんでくる。かわいいデコレーションも何もあったものではない。気をつけてもって帰らないとえらい事だ。
さて、近頃は不安を覚えて心臓バクバクという日はかなり減った。
そんな訳で写真のカリカリメレンゲと生メレンゲを食べるのに1週間もかかった。最後は粉になってしまい、薬のごとく飲んだ。アンダルシアの村で買って、マドリードまで持ってきてしまったのだ。万が一の時の常備薬…
ダリの町、カケダスのメレンゲにはナッツが入っていた。これも思い出。
有ったり、無かったり、甘いものはちょっと有ればいい私にぴったりのお菓子。メレンゲ紀行は続く。
春、菫の花が咲き始めると、私はむしょうにマドリードが恋しくなる。
プエルタ・デ・ソルからプラド方面に向かうサン・ジェロニモ通りをまっすぐいくと、プラサ・デ・カナレハスに出る。上品な木枠のショーウィンドウは天井まで上品なヴァイオレット・カラーで埋め尽くされている。そしてほのかに香る菫の香り。創業90年になる菫キャンディの専門店、ラ・ヴィオレータ。
菫キャンディは、マドリードのおみやげ物屋さんでいくらでも売っている。でも、かわいい入れ物と、お店の雰囲気を思い出すと、ついつい足を運んでしまう。
マドリード近郊の山に咲く菫から作られるキャンディ。量り売りのほか、かわいい菫の絵のついた陶器の籠やボンボン入れにはいっているものから、造花の菫がついた袋入りのものまで、用途に合わせたさまざまなラッピングも素晴らしい。
ヨーロッパ系のキャンディが大好きな人にはもってこいのお土産となるが、日本のキャンディしか受け付けない人にはお勧めしない。う~ん。買って見たいけど、考えてしまう…そんな方には、ピルケースに5粒はいったものがお手ごろ。
菫をかたどったキャンディを眺めているだけでも、春の到来を感じて顔がほころんでしまう。まさに、マドリードの春の味。
菫キャンディ一筋だったが、先だってたずねたらお茶も売っていた。

遠足、旅、汽車の中、山のてっぺん…そこに必要なもの。イメージするものの一つに日本人なら「おむすび」があげられるだろう。スペイン人のそれはボカディージョ。小さなフランスパンにケソやハモン、トルティーヤなどをはさむ。専門店は大抵、駅やバス停の近くにある。また闘牛場や競技場の近くにもある。まさに日本のおむすびがボカディージョ。
私はスペインにいくと必ず一回は「ケソとハモン」を食べる。これを食べなければスペインに来た意味が無い。この組み合わせは、ボカディージョの中では高級品。金額的にはランチと同じぐらい。スペインのランチは前菜、メイン、ポストレ(デザート)にビノのフルコースだから、結構なお値段なのが判るだろう。
専門店だけでなく、バルでも置いている。シエスタの時間でも、ハモンやケソなど、乾き物であれば作ってくれるところが多い。そして、「ここで食べるの?外?」と聞いてくれる。「外」と言えば、(というか、私の場合は外を指差す)銀紙で包んでくれる。
ボカディージョを持っての遠足は楽しい。香ばしいパンとドングリを食べて育った豚の熟成されたハモンだけ。それ以外バターも、レタスも何もない。それなのに、これ以上美味しいサンドイッチを私は知らない。
諦めの悪い私は、日本に帰る時も弁当と称して持ち帰り、望郷の念に耐えるのである。
いつでも何処でも覗いていたはずなのに、どうして今まで気がつかなかったのだろうか?それとも今の時期だけなのだろうか?多くのお菓子屋さんにタルタ・デ・サンティアゴが置かれていた。
なぜマドリードに?なぜがいっぱい。
マドリードはスペインの玄関。巡礼帰りの人たちが、懐かしんで持ち帰るためだろうか?
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スペインのドーナツ、チュロス。出かけにバルに立ち寄って、カフェ・コン・レチェとチュロスはデサユノ(朝食)の定番。なんだかむしょうに食べたくなって、食品庫をあけた。スペインにはなかなか行かれない。スペイン禁断症状が出ると、向うで買ってきたレトルト食品のパックを取り出す。それは、スペインで食べるものを懐かしむのに十分な、匂いを持っている。
普段私は出来合いのものを殆ど食べない。しかし、こと外国食品に関しては別である。香辛料のブレンドや、元の素材が違うからだろう。同じように作っても、それは日本の料理に変化してしまい、なかなか現地の匂いや味に繋がらない。

チュロスは初挑戦。おかしいなと思いつつも、書いてある分量通りに水とチュロスの素を混ぜ合わせる。やはり水が多い。外国のレシピは難しい。なぜか日本に帰ってきて同じ分量で作ると、違うものになってしまうことがある。仕方なく粉を足しやってみるが、ゆるすぎた。パッケージには専用の搾り出しもついていた。チュロス独特のギザギザができなかった。食感はなぜかポンディケージョ。モチモチ感が前面に出てしまった。
リベンジするためにも、早くスペインに戻りたいと思う今日この頃。
その方は、最近日本でも有名になった、巡礼の旅、サンティアゴ・デ・コンポステーラから帰国。興奮冷めやらぬ間に、そしてお菓子が美味しいうちに!早速送ってくださったのだ。巡礼中に立ち寄った教会で買ったそうだ。修道女が作っているそうで、必ず十字架が刻まれていると、添えられた手紙に書いてあった。家に来た一切れには残念ながら見ることが出来なかったが。
久しぶりにスペインの空気が鼻を抜けて、ふわーっと広がった。アンダルシアから抜けられない私が、彼の地へ行かれる日はいつのことか。そのときはフランスからはじめたいと思う。歩くのは無理でも、せめて自転車で回ってみたい。ホタテを身につけて、スタンプを集め、ゴールでは煙香に燻され、古の巡礼者気分を味わいたい。一人はさびしいな。この旅をはじめるときは、誰か傍らにいる事を願って。
イスラーム社会でナツメヤシは重要である。ナツメヤシは少ない水で育つ。そして植物の少ない世界で栄養価の高い食物として欠かせないものだ。干し柿のような見た目と味がする。素朴で、何の加工もされずに全世界に出荷されるため、検疫のうるさい日本に入ってくることは殆どない。「アッラーは誠に偉大なお方だ。ナツメヤシは消毒などしなくても、熱い砂漠で腐ることもなく、熟れそして私達の口に入るようにしてくださった。アルハムドリッラー(アッラーのお陰である)」とサウジアラビアの駐日大使がおっしゃっていた。
アンダルシアには、ナツメヤシが多い。ここがかつて、イスラームの国であった名残である。アッラーより与えられた、大地の宝石。その実は、オレンジから熟れると真っ赤になる。たわわになる小さな実は、真っ青な空のアクセントとなる。
南国のイメージと言えば椰子の木。スペインの南国にあるのはナツメヤシ。
ナツメヤシの木を追って、古のイスラーム王国へ。アンダルシアの村へ。