イタリアでは9月25日の総選挙で極右とも称されるイタリアの政党が勝利した。また、フランスでは極右とされるルペン氏の人気が高まっている。このように欧州における右派勢力の台頭が目覚ましい。しかし、極右と言っても、従来の極右政党に見られるような暴力主義的な傾向や、デモクラシーや議会主義に対して否定的な立場をとることは基本的には無い。本音がどこにあるか分からず、人々の人気を集めるために、穏健な政策を掲げているだけだとの説もある。
西欧において台頭する右派勢力の共通する主張は、「反移民」「反既成政党」「反エリート」であり、そうした主張はグローバリゼーションによる経済格差の拡大、移民受け入れや多文化主義への批判であり、基本的には自国第1主義である。
既成政党や政府の諸機関は特権的エリートの利害を代表していると批判・非難し、自分たちの政党だけが一般大衆の利益を守ると主張する、反エリート政治運動であり、ポピュリズムである。米国の前大統領トランプ氏も同様である。
日本の代表的な右派と言えば「日本会議」であろう。主な主張は・先の戦争は侵略戦争ではない、・押しつけ憲法を破棄し、自主憲法を制定、・首相の靖国神社公式参拝実現、・夫婦別姓法案反対、等国家主義的で、そこには西欧の右派におけるような主張はない。せめて共通点を見出すとすれば、自国第1主義であろうか。
日本では、最近外国人労働者が増えていると言っても西欧程でなく、反移民の声もほとんど聞かれない。しかし、今後日本の出生率の低さによる生産労働人口の減少を補うため外国人労働者を一層増やしていくだろう。10年後位には反移民の声が高まるかも知れない。
それよりも日本で可能性が高いのは反エリート政治運動であろうか。現在の国会議員、特に自民党の政治家に世襲が多く、4人に1人は世襲議員らしい。岸田現首相も政治一家だし、次期首相候補とされる林芳正外相の父である義郎氏は大蔵大臣、等を歴任した政治家であり、河野太郎広報本部長の父である洋平氏は内閣官房長官、等を歴任し、福田達夫総務会長の父は第91代内閣総理大臣であった。また国民的人気抜群の小泉進次郎総務会長代理の父元首相の純一氏である。
当面日本を指導する首相は二世議員となりそうだ。またつい最近、岸田首相の長男が公設秘書に就任したとの報道があった。政治家としての知識を今から学ばせるためとのことだ。
国会議員の世襲の弊害は時々マスコミでも取り上げられるが、二世議員は今後増えることはあっても決して減りはしないであろう。このような背景で西欧におけるような右派勢力の台頭は日本でも大きくなりそうであるが、既存の右派勢力とは全く違ったものになろう。2022.10.15(犬賀 大好ー855)