日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

春闘値上げラッシュは今年限りか

2023年03月29日 09時15分05秒 | 日々雑感
 2014年の春闘から政府が産業界に対し賃上げを求める ”官製春闘”が始まった。春闘は元々労働組合が集団で経営者側に賃上げを要求する戦いであったが、2008年のリーマンショック以来労働組合の弱体化が進み、春闘の盛り上がりは無くなってしまった。

 2012年発足した安倍政権は異次元金融緩和を行い市中にお金を流布させ景気浮上を狙ったが、企業はその金を投資に回すことなく、また従業員に還元することなく、内部留保として蓄えただけであった。

 さて今年消費者物価の前年比上昇率が41年ぶりに4%台に達する中、実質賃金の前年比減少が続いている。春闘に向けて連合は5%程度の賃上げを求める方針を決定し、岸田文雄首相はインフレ率を上回るよう企業に要請した。政府主導の官製春闘そのものだ。

 それが功を奏したのか、春闘の集中回答日の3月15日、大手企業では満額を含む近年にない高い水準の回答が相次いた。例えば自動車総連に加盟する主要12社、電機連合加盟の大手電機12社はそろって労組側の要求通り満額回答を出した。

 国際教養大学の山内客員教授は、日本には同調圧力があると指摘し、賃金を上げるべきという発想が政府中心に企業の利害関係者間で共有され、プレッシャーとなって機能し、経営者も賃上げ方向に動かざるを得なかったと分析するが、正にその通りであろう。

 しかし、この勢いが中小企業や非正規雇用で働く人にまで波及するのか、そして、長年の賃金の停滞から脱却し、持続的な賃上げとなるのか、物価上昇と賃金上昇の好循環が実現されるのか、今後の動きが注目される。今年4月初めに退任する黒田日銀総裁も常々言っていたが、2%物価上昇の定着には持続的な高い賃上げの実現が必要だが、異次元金融緩和の手段をもってしても実現できなかった。

 黒田総裁の狙いは、市中にお金を流布して投資を促進し、好景気を呼び寄せることであった。そこでの好景気は、企業が儲かり賃金上昇があがり消費が盛んになりそして物価上昇がある状況を作り出そうとするものであろうが、現在の状況は景気以前に物価上昇があっての政府主導の賃金上昇だ。

 持続可能な賃上げはまず好景気が無くては望めない。好景気の実現は投資資金のある無しには関係ない。これは異次元金融緩和の失敗が証明している。日本のGDPは世界で第3位と言いながら、その成長率は世界の主要国が伸びているのに対し2000年以降低迷している。その原因は賃金の伸びが無いからだとの解説もあるが、その背景には日本の技術レベルの低下もあるだろう。

 科学技術指標2022によれば日本の世界における科学技術レベルは相対的に低下しつつある。貿易で稼いできたイメージが強い日本だが、近年では、投資収益や配当、利息で得られる金融収支の方が貿易収支よりも多くなっているのが昨今の日本の特徴となっているようだ。技術による貿易立国から金融立国へといつの間にか変化しているのだ。この状態では技術立国を標榜する日本に好景気はやってこない。2023.03.29(犬賀 大好ー901)

ロシアへの経済支援不足でもプーチンは音を上げない

2023年03月25日 15時16分43秒 | 日々雑感
 ウクライナ東部ドネツク州の親ロ派の幹部は3月17日、激戦が続く街バフムトの6~7割をロシア軍が支配したと主張した。プーチン大統領は来年の大統領選挙を控え戦果を焦っており、バフムト攻略に的を絞りロシアの正規軍のほか、民間軍事会社ワグネルの戦闘員を投入し猛攻激して支配を狙ったようだようだ。一時期バフムトからウクライナ軍が撤退するのは時間の問題だとの報道も流れた。

 しかし英国防省の17日の分析では、バフムト周辺のロシア軍が戦闘力を消耗し、3月18日現在膠着状態が続いているとの報道もあり、しかも最近の報道では西側諸国からの支援を受けたウクライナの反転攻勢が強くなっているとのことだ。

 ところで中国の習近平国家主席が3月20日から3日間の予定でロシアを訪問し、空港で書面による談話を発表したが、ロシアと中国の親密なる一層の関係発展を期待する等の文言だけで、ウクライナに関するコメントは無かったようだ。

 習氏が同国を訪問したのはロシアによるウクライナ侵攻が始まってから初めてであり、”ウクライナ危機の政治的解決”を呼び掛ける文書を公開しているが、ロシアを利する内容で反ロシア勢力が到底納得するはずがなく、今回の会談でも、新たな提案があったようには伝えられていない。

 今回の訪問は恐らくプーチン氏にとっては戦争打開のための支援の依頼であり、習近平氏にとっては中国の人民元経済圏構想の下準備だとのことだ。現在のロシアは、欧米から強烈な経済制裁を受け、中国とインドに頼ることで、何とか生きながらえている状態だそうだ。一方習近平主席は、政権を発足させた2013年の秋、米国に対抗する一帯一路という広域経済圏構想を提唱した。

 今回のロシア訪問は、中国にとって「紛争は最終的に対話と交渉で解決する必要がある」と主張しつつ、あからさまなロシアへの経済・軍事支援を約束していないようだ。裏で何が約束されているか不明であるが、ロシアの人民元経済への巻き込みを画策しているのは間違いなさそうである。

 さて日本の岸田首相は21日、ウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。その後の共同記者会見で岸田首相は、殺傷能力のない装備品などを供与すると表明し、一方ゼレンスキー大統領は、5月の主要7カ国(G7)広島サミットにオンラインで参加することを明らかにし、訪問成果を誇った。

 更に、これまでに決定や表明をしている総額71億ドルのウクライナへの支援を着実に実施するとした上で、新たに、北大西洋条約機構の基金を通じて3000万ドルを拠出するほか、エネルギー分野などでの新たな無償支援として4億7000万ドルを供与すると明らかにした。

 ウクライナは米国やNATO諸国、更には日本からも様々な支援を受けているが、ロシアへの支援を大ぴらに行っているのは北朝鮮やイラン位であり、中国やインドの大国は米国への配慮から遠慮がちである。ロシアは追い詰められているが、プーチンは音を上げない。2023.03.25(犬賀 大好ー900)

植田日銀新総裁の黒田前総裁の尻ぬぐいは何時から

2023年03月22日 10時56分49秒 | 日々雑感
 日本銀行の黒田総裁は3月10日の記者会見で、任期中の成果としてデフレを解消して経済を活性化させ、400万人以上の雇用創出で就職氷河期と言われた状態を完全に解消したこと等を挙げた。経済の活性化の具体的成果として企業の内部留保が500兆円を越したことも挙げたいのだろうが、その金は投資資金に回ることなく、また社員の給与も増加しておらず、単にお金を移動しただけで有効に使用していない。また雇用創出は対象が女性や高齢者を対象とする非正規労働者が大半だった。

 これらの成果は異次元の金融緩和による経済格差拡大等の副作用を伴っていたが、それよりも経済に対するプラスの効果がはるかに大きかったとした上で、一貫して2%の物価安定目標の実現を目指して大規模緩和を続けてきたことは間違っていなかったと自慢げに話した。当初2%の目標は2年で達成できると胸を張っていたが、その言はすっかり忘れてしまい、黒田氏にはストレスが溜まることが無い能天気さが窺える。

 また、日銀は2013年に始めた大規模緩和で、日銀は国債や上場投資信託(ETF)を買い入れ、大量に保有している。黒田氏にとって、膨大な保有額も負の遺産だとの認識は全く無く何の反省も無いとのことだ。これらの保有する国債や株式が簡単に元に戻せるものであれば負の遺産とならないが、保有すること自体にリスクがあり、能天気さに呆れ果てる。

 黒田氏の認識通り負の遺産でなければ無限に増やすことも出来、日本の各種税金もゼロとしても日本の国家財政は安泰であろう。さて、当初の目的のデフレ解消は、10年かかってようやく達成出来たそうだ。これには大規模金融緩和による負の遺産の上に築かれており、ロシアのウクライナ侵攻による切っ掛けでその効果が出始めた。従って、ウクライナ問題が解消しても、一旦走り始めたインフレは負の遺産によりハイパーインフレへ暴走する恐れがある。

 さて、記録的な物価上昇が進む中、今年の春闘の集中回答日の3月15日、大手企業では満額を含む近年にない高い水準の回答が相次いだ。黒田氏の先述の記者会見で労働需給面で賃金が上がりやすい状況になりつつあるとし、賃金と物価が上がらないという社会規範にも変化が生じていると説明していたが、その通りになるであろうか。しかし、賃金の上昇があってその後に物価上昇があれば生活は楽になるが、現状は物価上昇があって賃金上昇がある状態で、これでは生活は楽にならず、年金生活者は言わずもがなだ。

 黒田氏に代わり新たに就任する植田新総裁は負の遺産の処理で苦労するだろう。しかし、就任演説で黒田氏の緩和路線を継続すると主張した。しかし、これまでの言動から異次元金融緩和のマイナス効果を認識しているそうで、近い将来金利の上昇方向に動くのではないかと推測する。日銀総裁の言動は株価等にすぐに影響するため本音を語ることはまずないだろう。
2023.03.33(犬賀 大好ー899)


原発回帰には日本独自の戦略が必要であるが

2023年03月18日 15時04分26秒 | 日々雑感
 政府は昨年12月にGX基本方針を決定し、原発回帰の姿勢を鮮明にした。これは、東日本大震災時の原発事故以来、原発の新増設や建て替えはしないとしてきた歴代政権の基本的な立場を一変させる方向転換だ。

 GXとは(グリーン・トランスフォーメーション)、温室効果ガスの排出源である化石燃料から再生可能エネルギーへの転換に向け、社会経済を変革させるという概念だ。あらゆる新しいテクノロジーが世界の二酸化炭素排出量の削減と除去を目指すことで、過去の産業革命やデジタル革命と肩を並べるようなイノベーションの波を生み出そうとする世界の技術の流れだ。

 地球温暖化を防止するため、炭酸ガス等の温室効果ガスの削減が差し迫った課題である一方、ロシアのウクライナ侵攻で石油や天然ガスの資源価格の急上昇が電力価格の高騰となり、化石燃料を使わない電力を如何に確保するかが喫緊の問題となっている。

 温室効果ガスの削減には太陽光や風力等の自然エネルギーの活用の他、原子力エネルギーの活用もある。原子力エネルギーの利用は事故が起こった場合の影響の大きさから将来は縮小の方向にあったが、化石資源の高騰で原発が前面に押し出されて来た。

 歴代政府が10年以上抑制してきた原発規制路線を事情が変わったからと言って、岸田政権は国会審議もせずにいとも簡単に路線転換を決断してしまった。再稼働や既存原発の稼働年限の延長、新増設については安全性や地元の了解を得るなど必要な手順があり、またそれ以前に原発事故の後始末の目途が経っていない状態で原発回帰とは議論を尽くした後の決断とは思えず、増して日本独自の戦略があるとは到底思えない。

 脱炭素化の動きが世界的に急速に進む中、電源としての自然エネルギー利用が増加する一方で、自然環境に左右され易く安定した電力供給には大きな問題があり、その穴を埋めるために原発が再度登場するが、原発事故を経験した日本がその経験を十分生かしているとは思えない。

 世界はGXの方向では一致しており、各国政府主導による開発支援や海外展開、国際提携、導入にむけての検討や協議が世界的規模で活発化しているようだ。科学技術指標2022によれば、日本は主要国(米英独仏中韓)の中で科学技術のレベルが低下しているとのことだ。原発回帰と技術レベルに直接の関係は無いが、国の支援はその発展に大きく影響する。

 例えば、太陽光発電はかっては世界をリードしていたが世界戦略を欠き、中国に先を越された。また、現在、電気とガソリンを使うハイブリッド自動車で日本は世界を席巻しているが世界の流れは電気自動車に向かっている。技術レベルの向上、維持には一企業の努力だけでは無理があり、国の支援が必須であるが、国は世界的な規模での日本独自の戦略を持っているのだろうか。2023.03.18(犬賀 大好ー898)


高市経済安全担当相の官僚に対する人事権

2023年03月15日 09時58分41秒 | 日々雑感
 立憲民主党の小西参院議員が入手した総務省の内部文書には、2015年3月9日付で総務省の大臣官房参事官から情報流通行政局長への連絡として、高市議員と当時の安倍首相の電話会談の結果が記されている。この中で総理の今までの放送法の解釈がおかしいとの発言があり、実際に問題と考えている番組を複数例示していたようだ。この文書を、松本剛明総務相は総務省の行政文書であることを認めた。

 それまで放送法4条の定める”政治的公平”の解釈は、ひとつの番組ではなく放送事業者の番組全体を見て判断するするとの原則であったが、2015年、当時の高市総務相は、ひとつの番組だけで判断する場合があると国会で明言したが、長年の原則を実質的に大きく転換する内容だった。この高市氏の発言の根拠となった資料が先述の官邸と総務省のやりとりを示した行政文書だ。

 高市現経済安全保障担当相は今年3月7日午前の記者会見で、文書に記された総務相時代の自身の発言について、この文書は捏造であり内容は不正確であると理解しているとの考えを示した。もし捏造で無かった場合、議員辞職も辞さない考えを示した。

 そもそも10年程前の行政文書が今頃になり話題になるか不思議だが、今頃になって公になったことが切っ掛けのようだ。高市氏は文書が捏造であると主張し、捏造で無かったならば議員を辞職すると言い切ったが、この口調は安倍元首相を思い出させる。

 高市氏は安倍政権下の2014年9月から2017年8月まで総務相を勤めたが、任期の途中の2017年2月、大阪・豊中市の国有地が、小学校の建設用地として学校法人「森友学園」に鑑定価格より大幅に安く売却されていたことが明らかになった。

 これに対して国会では野党が売却の経緯や政治家の関与の有無などを追及した。安倍氏は、国有地に払い下げに私や妻が関係していれば総理大臣も国会議員も辞める等と述べ、関与を強く否定したのだ。

 先の高市氏の辞任発言は安倍元首相の発言とそっくりであり、官僚は政治家の言いなりになると高を括っているのだろう。森友学園に関わる国有地払い下げに関する裁判では国の関与は認定されず、森友学園の籠池夫婦の個人的な問題に帰着された。政治家の問題発言も官僚が何とか取り繕ってくれるとの傲慢な態度が伺われるが、官僚の人事権を握る首相の下では官僚は政治家の言いなりになる必要があるのだろう。

 先の行政文書に関し、高市議員が捏造と主張しているのは、当時総務大臣だった自身の名前が登場する2015年2月13日の「高市大臣レク結果」と書かれた文書であり、高市氏は、この存在をこれまで重ねて否定してきた。しかし、総務省の小笠原情報流通行政局長は放送関係の大臣レクがあった可能性が高いと考えられると証言し、高市氏を支援する発言では無かった。高市議員の経済安全保障担当相の肩書では人事権を発揮することは出来ないのだろうと勘繰ることが出来る。2023.03.15(犬賀 大好ー897)