日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

春闘値上げと企業の内部留保のお金

2022年10月26日 09時06分54秒 | 日々雑感
 今年5月の全国消費者物価指数は前年比プラス2.5%まで上がってきているそうだ。黒田日銀総裁は物価上昇率2%のデフレ脱却を目標に異次元金融緩和を続行してきたが、最近の諸物価値上がりは賃上げの伴わない物価値上がりは悪いインフレだとしてゼロ金利政策に執着している。

 内閣府は今年度の経済財政白書で、1人当たりの実質賃金について1991年を100とした場合に2020年までにどれだけ伸びたかを調査し、最も伸び率が高いのがアメリカで1.46倍、次いで、イギリスが1.44倍、ドイツが1.33倍、フランスが1.29倍、であるのに対し日本は1.03倍にとどまっていると発表した。

 あるエコノミストは、日本の賃金をめぐる状況について、長く続くデフレ期で、日本では、企業努力が価格を低く抑えるための労働時間の削減などに向かい、付加価値を生み出すことに向かず、その結果、所得は増えず、日本の平均賃金は諸外国と比べて伸び率がかなり低いと分析している。上記の白書も日本の実質賃金がほとんど上がっていないことを裏づけているが、このエコノミストの分析は賃金が上がらない理由を個々の企業努力の欠如にしているが、本質は別の所にある。

 すなわちゼロ金利政策が企業努力を妨げていると考えている。ゼロ金利政策や最近のコロナ禍における各種補助金で企業は低利でお金を借りられるため、それまでの手法に胡坐をかき、企業内の血の出る改革を怠った。このため世の中の変革に乗り遅れてしまいながらもなんとか生き延びることが出来ているのだ。このような状況下では賃上げは難しい。黒田総裁がゼロ金利政策にこだわる理由が、もし金利を上げると倒産する企業が増え、世の中不景気になるからだとの説も納得できる。

 来年の春闘について、労働団体の「連合」は、このところの物価上昇を踏まえ、ベースアップ相当分として3%程度、定期昇給分を合わせると5%程度の賃上げを求める方針を明らかにした。

 日本企業の内部留保の額が500兆円を超え、過去最高を記録したことを受けて ”賃上げなどによってもっと従業員に還元すべきだ”等といった主張が見られる。内部留保というと、企業が内部にお金を貯め込んでいるイメージを思わせる。しかし、実際には利益の中から法人税等を支払い、株主等への配当を行った後に残った金額で、あくまでも計算上蓄積された数字で、従業員の給与等へは振り向けられないとの解説記事も目にするが、単なる言い訳で素人には従業員の賃上げに還元できない理由が理解できない。

 内部留保は経営陣が将来の不況時に備えて蓄えた金だとの説明もあり、現在の不況時に振り向けられない理由と矛盾する。異次元金融緩和の一つの結果は内部留保の激増だ。従業員の為にこの金を有効に使用するのが、これまでの金融緩和で出来なかった経済活性化だ。2022.10.26 (犬賀 大好ー858)