厚生労働省発表の発表によると今年(2016年)、2月の有効求人倍率は1.28倍で、前月に引き続き高水準とのことである。新規求人数は、特に宿泊業、飲食業に多いとのことだ。アベノミクスの成果として、よく株高と人手不足現象が挙げられる。株高の方は、大分怪しくなってきたが、現在でも人手不足であることは間違いないようである。
2012年末に安倍晋三内閣が発足して以降、雇用者数は増加が続いている。安倍首相も「アベノミクスによって雇用を100万人以上増やした」と繰り返し自慢発言してきた。しかし、ここで言う雇用者数は、正規労働者の数とは限らない。
有効求人倍率は公共職業安定所で扱った求人数、求職者数であり、その中身は正規社員ではなく、ほとんどが非正規労働者社員とのことだ。日本における非正規労働者の割合は1984年の15.3%から2014年には37.4%まで大きく上昇しており、いまや労働者の3人に1人以上が非正規労働者として働いているようだ。
非正規労働者であっても、雇用が増加することは良いことである。しかし、非正規雇用の増加の一番の原因は、使用者側の経費削減のためと聞けば、デフレ脱却を目指す安倍首相の自慢話のトーンも下がることであろう。
さて、この求人難はアベノミクスの成果であろうか。成果とすれば3本の矢のうち何が一番有効であったのであろうか。第2の矢、機動的な財政政策の一環である東日本大震災の復興事業においては、2011年度から5年間で、国費のみで26.3兆円を投じた。その多くは土木事業であろうので、それに携わる労働者が大量に必要であろう。どれくらいの雇用増をもたらしたかは不明であるが、ゼネコンの株高を見れば、さぞかし多くの労働者が雇われているものと思われる。
また、東京電力第1福島原発での事故に伴う復旧作業では現在でも、一日当たり7000人の作業員が従事しているとの報道がある。更に、福島県には昨年数万人の除染作業員が、居住地の汚染を取り除くために働いていたそうだ。労働者不足の一因であることには間違いない。
これらの雇用増は全体の求人数からすれば、大したことで無いかも知れない。確かに、求人難は土木の仕事より、介護の仕事や接客・給仕などのサービス分野で特に大きいようだ。介護の仕事は、高齢者人口の増加の反映であろうし、接客・給仕の仕事は外国人旅行者の増加の反映であろう。
従って、これらの雇用増はアベノミクスの直接の成果と言うより、自然災害や東南アジア諸国の経済発展等の影響が大きいのではないかと思われる。ただし、外国人旅行者の増大は、アベノミクスの観光事業を成長戦略とする一環としてのビザ発給の緩和も寄与しているのは確かであろう。逆に、アベノミクスの成果はビザ発給の件位しか無く、後は巡り合わせに過ぎないと言えるかも知れない。
アベノミクスの成果は、有効求人倍率の面ばかりでなく、新規学卒者(新卒)の面より見る必要もある。厚生労働省と文部科学省は今年3月卒業の大学生の就職内定率(2月1日現在)が、前年同期比1.1ポイント増の87.8%になったと発表した。前年を上回るのは5年連続で、2008年以来8年ぶりの高水準を記録したとのことだ。厚労省は「雇用環境の改善が内定率にはっきりと表れた」(若年者雇用対策室)と指摘した。
雇用環境の改善とは、円安効果による自動車産業をはじめとする輸出産業の好調さ、観光事業の活性化などであろう。また、団塊世代の定年退職に伴う新人補給の必要性がかなりのウエートを占めるようである。これも雇用環境の改善と言えなくもない。これらの比率がどうなっているか不明であるが、異次元金融緩和の円安誘導による雇用環境の改善はアベノミクスの成果であることに間違いない。
しかし、大規模金融緩和による円安は、各国の金融緩和により効果が薄れてきた。また、現在の外国人旅行者の増加は、東南アジアの経済発展に負うところが大きい。いつまで続くか分からない。観光事業は先進国からの旅行者が増加して本物となろう。いよいよアベノミクスの真贋がはっきりして来る。
2016.04.30(犬賀 大好-229)
2012年末に安倍晋三内閣が発足して以降、雇用者数は増加が続いている。安倍首相も「アベノミクスによって雇用を100万人以上増やした」と繰り返し自慢発言してきた。しかし、ここで言う雇用者数は、正規労働者の数とは限らない。
有効求人倍率は公共職業安定所で扱った求人数、求職者数であり、その中身は正規社員ではなく、ほとんどが非正規労働者社員とのことだ。日本における非正規労働者の割合は1984年の15.3%から2014年には37.4%まで大きく上昇しており、いまや労働者の3人に1人以上が非正規労働者として働いているようだ。
非正規労働者であっても、雇用が増加することは良いことである。しかし、非正規雇用の増加の一番の原因は、使用者側の経費削減のためと聞けば、デフレ脱却を目指す安倍首相の自慢話のトーンも下がることであろう。
さて、この求人難はアベノミクスの成果であろうか。成果とすれば3本の矢のうち何が一番有効であったのであろうか。第2の矢、機動的な財政政策の一環である東日本大震災の復興事業においては、2011年度から5年間で、国費のみで26.3兆円を投じた。その多くは土木事業であろうので、それに携わる労働者が大量に必要であろう。どれくらいの雇用増をもたらしたかは不明であるが、ゼネコンの株高を見れば、さぞかし多くの労働者が雇われているものと思われる。
また、東京電力第1福島原発での事故に伴う復旧作業では現在でも、一日当たり7000人の作業員が従事しているとの報道がある。更に、福島県には昨年数万人の除染作業員が、居住地の汚染を取り除くために働いていたそうだ。労働者不足の一因であることには間違いない。
これらの雇用増は全体の求人数からすれば、大したことで無いかも知れない。確かに、求人難は土木の仕事より、介護の仕事や接客・給仕などのサービス分野で特に大きいようだ。介護の仕事は、高齢者人口の増加の反映であろうし、接客・給仕の仕事は外国人旅行者の増加の反映であろう。
従って、これらの雇用増はアベノミクスの直接の成果と言うより、自然災害や東南アジア諸国の経済発展等の影響が大きいのではないかと思われる。ただし、外国人旅行者の増大は、アベノミクスの観光事業を成長戦略とする一環としてのビザ発給の緩和も寄与しているのは確かであろう。逆に、アベノミクスの成果はビザ発給の件位しか無く、後は巡り合わせに過ぎないと言えるかも知れない。
アベノミクスの成果は、有効求人倍率の面ばかりでなく、新規学卒者(新卒)の面より見る必要もある。厚生労働省と文部科学省は今年3月卒業の大学生の就職内定率(2月1日現在)が、前年同期比1.1ポイント増の87.8%になったと発表した。前年を上回るのは5年連続で、2008年以来8年ぶりの高水準を記録したとのことだ。厚労省は「雇用環境の改善が内定率にはっきりと表れた」(若年者雇用対策室)と指摘した。
雇用環境の改善とは、円安効果による自動車産業をはじめとする輸出産業の好調さ、観光事業の活性化などであろう。また、団塊世代の定年退職に伴う新人補給の必要性がかなりのウエートを占めるようである。これも雇用環境の改善と言えなくもない。これらの比率がどうなっているか不明であるが、異次元金融緩和の円安誘導による雇用環境の改善はアベノミクスの成果であることに間違いない。
しかし、大規模金融緩和による円安は、各国の金融緩和により効果が薄れてきた。また、現在の外国人旅行者の増加は、東南アジアの経済発展に負うところが大きい。いつまで続くか分からない。観光事業は先進国からの旅行者が増加して本物となろう。いよいよアベノミクスの真贋がはっきりして来る。
2016.04.30(犬賀 大好-229)