日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

登山のリスク

2014年11月14日 10時59分27秒 | 日記
  御嶽山の噴火は、57名の死者と6人の行方不明者を出す未曾有の大惨事となった。これに対し、もっと観測装置を充実させるべきとか、避難設備を完備すべきとの意見が聞かれる。人命尊重の立場からはその通りであろうが、安直な意見であろう。そこには人間は何のために生きるのかの問題も含まれるからである。
  エベレストに挑みエベレストで死んだジョージ・マロリーの「なぜ山に登るのか」の質問に対し、「そこに山があるからだ」の返事は有名である。登山には、夏山であっても天候急変や体調変化などリスクが付きまとう。エベレストともなれば、そこに薄い大気、雪崩等の何倍ものリスクが伴う。リスクに直面しそれを克服してこそ、生きている実感も得られる。リスクの無い山登りでは、達成感は少なく、生の実感は得られない。
 安全のためリスクをすべて排除しようとするのは社会的なコストが余りにも高く、馬鹿げている。また、問題が生ずると社会的な迷惑が大きいからと、少しでも危険なことはやらない方がいいと自己規制するようなれば、社会全体が萎縮してしまいかねない。規制で得られるメリットよりデメリットの方がはるかに大きいと、探検家の角幡唯介氏も言っているが、まさにその通りである。
  最近安全が余りに前面に出すぎている感がする。小学校や中学校の運動会で、組体操や棒倒しのような危険を伴う運動を避ける傾向があるそうだ。まさに社会全体が萎縮しつつあるのだ。大人たちが「最近の子供たちは海外へ出ていこうとする覇気がないよね!」と嘆くのは、自分たちの教育方針が着実に結びつつあることに気がついていないからだ。
日本は自然豊かな国である。自然を楽しむと共に、自然災害に備える感覚を常日頃養うことが必要である。(犬賀 大好―75)