日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

核抑止力の破綻が本当であればよいが

2023年08月30日 09時15分00秒 | 日々雑感
  今年8月6日に広島市で行われた平和記念式典での平和宣言で、松井市長は「核抑止論は破綻していることを直視する必要がある」と述べ、核による威嚇を直ちに停止し、対話を通じた安全保障体制の構築に取り組むよう訴えたが、ピンと来る話では無かった。

 これについて松野官房長官も、「現実に核兵器などのわが国に対する安全保障上の脅威が存在する以上、日米安全保障体制のもと、核抑止力を含むアメリカの拡大抑止が不可欠だ」と述べ、核抑止力の有効性を主張した。

 ロシアのウクライナ侵攻に際し、米国がウクライナへの強力な武器供与を逡巡しているのは、プーチン大統領の核使用を懸念しているからだと思うと、核抑止力は十分効果を発揮していることに間違いない。さて松井市長の核抑止論が破綻しているとの根拠がどこにあるのか、非常に知りたいところである。

 ネットで調べると、多国間核軍縮交渉を前進させるための国連作業部会でオーストリアが提出した核兵器と安全保障に関する文章に、”人道的観点”と題する作業文書があった。長崎大学核兵器廃絶研究センターが、2016年2月22日暫定訳した文章のようであるが、その中に次のような文章がある。

 近年の研究によって、例え”局限的な核戦争”であっても、それがもたらす大気や気候、食糧安全保障に対する中長期的な影響はこれまでの理解を超えてはるかに深刻かつグローバルであることが明らかになっている。短期的な人道上の危機のみならず、核兵器の使用がもたらす健康、経済、大量移民、社会秩序等に対する複合的で系統的な影響については、現状でも十分に解明されていない。

 ここで指摘されるまでもなく、核兵器の使用に対し人道的な危機があることはよく理解でき、これを根拠に核抑止力の破綻を主張しているようだが、そもそも人道的な配慮に事欠くワンマン指導者には余り耳を貸す話では無いだろう。
 
 プーチン大統領が核兵器に対する考えは、「ロシアが最終的に敗北し軍が壊滅的被害を受けた場合、ロシアは核兵器を使用するかもしれない」という見方が一般的だ。ウクライナ軍が、ウクライナ南部から東部を結ぶロシアが支配する回廊を断ち切れば、プーチン氏にとって軍事的にも政治的にも大きな敗北だろうが、最終的な敗北となるだろうか。この時ロシア国内でプーチン氏に代わる新たな勢力が出てこない限り、最終的な敗北とはならないであろう。プーチン氏であればこのような状況に陥っても、一時的な退避と強弁し、何年か後に再び戦争を始めるだろう。

 プーチン氏は少なくとも国際的な感覚を有し、人道的は配慮も多少は出来るだろう。従ってプーチン氏が指導者である限り、核兵器使用の可能性は低いが、同時に戦争終結の可能性も低い。しかし、プーチン氏に代わり新たな勢力が台頭し、それが強硬派の場合には核兵器使用の可能性が高まる。強硬派は、北朝鮮の金正恩と同様に自国が滅びるときは世界が滅びる時と考えるであろうから。2023.08.30(犬賀 大好ー942)

権力に媚びない野党の実現を願う

2023年08月26日 10時22分28秒 | 日々雑感
 衆議院の国会議員定員465名で、その内自由民主党(自民党)は261名で全体の56%を占める。自民党以外は204名であるが、最大野党の立憲民主党ですら96名で自民党の半分以下に過ぎない。自民党に対抗するためには自民党以外が一致団結でもしない限り不可能である。

 現在日本には、公明党、日本維新の会、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組、等の政党がある。政党とは次のいずれかにあてはまる政治団体である。①所属国会議員が5人以上あるいは②前回の衆議院議員総選挙、前回又は前々回の参議院議員通常選挙のいずれかにおいて得票率が2%以上。かって政権を握ったことのある社会民主党の流れをくむ社民党は条件①を満たさず、かろうじて条件②を満たし、政党の体面を保っている。

 政党とはならない政治団体は数多くあり、現在3千程度の団体が存在するようで、実に様々な主張がある。現在自民党は公明党と連立政権を組んでおり、公明党は衆議院32名で、岸田派の46名にも及ばないが、歴代国交大臣を独占している。国交大臣は、道路や土木の工事だけでなく、ダムや港湾、不動産や航空など、国交省が所管する業界は幅広く、無数の利権を握っている。自民党が公明党に国交省大臣の席を譲る最大のメリットは選挙時における支援であろう。公明党の支持母体は創価学会である。宗教団体の信者は実に真面目だ。上の指示には忠実に従い選挙の際には手足となって活動するからだ。

 公明党が連立を組む理由は、大臣の席の確保もあろうが、与党となると国交省に関する利権に絡むメリットがあるからであろう。日本維新の会の馬場代表もこれに魅力を感じているからであろう、日ごろの発言も自民党寄りの傾向がある。先日も第1自民党と第2自民党の改革合戦が政治を良くする、と発言し、物議をかもしている。二大政党を目指す趣旨とされるが、野党をまとめようとする姿勢は皆無である。

 国民民主党も現在代表を選ぶ選挙中であるが、候補者二人の意見の主な違いも自民党に対する姿勢の違いであろうが、門外漢にはその違いがよく分からない。

 野党第1党の立憲民主党が野党をまとめようと苦労しているが、先行きの見通しは極めて暗い。野党の役目は与党の権力行使の行き過ぎを正すことであろうが、とかく何でも反対と批判されるが、やむを得ない。兎も角多勢に無勢の背景で自民党議員の気の緩みが目立つ。新たな大臣就任となると必ず起こる政治資金収支報告書を巡る不祥事、最近では洋上風力発電をめぐる秋本衆議院議員の収賄事件や松川るい議員のパリへの観光旅行気分の研修旅行とその対処法等、枚挙にいとまがない。

 岸田首相は、国防費の倍増や原発の再稼働等、の難問をさりげなく実行したが、野党の追及は甘く、その制限や限界等は明確になっていない。
世界は価値観が多様化する現在、二大政党政治は無理かも知れないが、少なくとも権力に媚びへつらわない勢力の拡大を願う。
2023,08,26(犬賀 大好ー941)


岸田政権の支持率回復には何が必要か

2023年08月23日 13時52分51秒 | 日々雑感
  今月19、20の両日の世論調査の結果、岸田内閣の支持率は33%で、2021年10月の内閣発足以降最低だった22年12月の31%に次ぐ低さまで落ち込み、不支持率は54%で支持率を上回る状況が続いているとの報道があった。

 岸田首相の不人気の原因の第1は、マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」で、データが別人とひもづけられるといったトラブルが相次いだことであろうが、その他首相の周辺には不祥事が続いており、支持率低下を促している。

 自民党の女性局長を務める松川るい議員は、外務省出身で防衛政務官を務めた若手のホープであるようだが、7月下旬のパリへの研修が観光旅行気分であるとSNSへの投稿画像が批判された。厳しい研修の合間の観光であれば全く問題ないが、8月22日にあっさり女性局長を辞任したとのことだ。まさに観光旅行を認めたことになる。

 自民党の茂木幹事長はこの辞任をあっさり認め幕引きを図ったつもりであろうが、このような処分では逆効果である。本来は、研修の成果を報告書として公表し、観光はその合間であったことを示すべきであった。岸田首相は9月の内閣改造で支持率の回復を図るため、サプライズ人事で女性議員を登用するかもしれないと噂されるが、女性議員のイメージを下げた松川議員の責任は大きい。

 支持率の回復は見込めず、秋の解散は無理との雰囲気が自民党内で深まった。就任当初、岸田首相に期待していたことの一つに”新しい資本主義”のスローガンがあった。内容は漠然としていたが、異次元金融緩和で拡がった経済格差問題に取り組むと期待があった。最大派閥の安倍派がもたついている間に思い切った政策を打ち出す好機と思われるがその動きは無い。防衛費や少子化対策の財源の確保で苦労しているようで、最近NTTの株売却が云々されているが、増税の話はすっかりトーンダウンした。

 現在中小企業の倒産が、コロナ下を上回るペースで増えているようだ。手厚い公的支援は打ち切られ、中小企業向けの実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済も本格化しており、物価高が追い打ちをかけ、今後さらに増える可能性がある。一方、大企業の内部留保は500兆円を越えたようだが、なぜ大企業はかくも増やすことが出来たのであろうか。

 安倍政権7年半の国内総生産(GDP)の実質成長率は年平均1.03%にすぎず、2009~12年の民主党政権の実質成長率の年平均1.84%を下回る。このような状況で内部留保を増やすことが出来たのは、中小企業向けの「ゼロゼロ融資」と同様な公的な支援があったのではなかろうか。異次元金融緩和では大企業の国債は日銀に買い取られたが、それだけでは内部留保が500兆円を越える理由にはならないだろう。

 岸田政権は予算の財源に四苦八苦しているが、500兆円を超す内部留保を活用する手を考えるべきだ。内部留保は単なる儲けではなく会計上の制限が各種あるようだが、知恵を絞れば抜け穴もある筈だ。岸田政権の支持率向上は、これくらい思い切った政策を打ち出さない限り期待できない。
2023.08.23(犬賀 大好ー940)

三権分立は機能を十分果たされているか

2023年08月19日 11時46分52秒 | 日々雑感
 三権分立とは権力がひとつの機関に集中する弊害を抑止し、人民の権利や自由の確保を保障しようとするシステムである。権力分立の源流をたどると、古代ギリシャまでさかのぼるそうだが、近代的な権力分立の考えはモンテスキュー等により確立したようだ。この考え方は現代に至るまで受け継がれており、主要国家では一般的に国家権力を立法権・行政権・司法権の三権に分類している。

 1788年に発効したアメリカ合衆国憲法は、最も厳格な三権部立を採用したようだが、現在も円滑に機能しているだろうか。合衆国憲法は、最高裁判所の裁判官は大統領が上院の助言と同意に基づいて任命すると定めている。通常は、大統領の政治的立場に近い法律家が最高裁長官や判事の候補となるそうで、トランプ前大統領の時には共和党に近い保守系の判事が指名されていた。その任期は一生涯続くそうで、死亡により席が空くまで次の判事等の採用はないそうだ。

 結果、保守派が過半数となった米連邦最高裁が、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認める1973年の判決を覆す判断を下したのだ。これはバイデン現大統領の意向に反するものであろうが、三権分立の精神から大統領と言えども逆らうことは出来ない。

 イスラエルでは今年7月、ネタニヤフ政権が進める司法制度改革の関連法案の採決が強行されたことに抗議し、市民が国会に続く道路を占拠するなど大規模なデモに乗り出している。改革案では、裁判官任命への政権の影響力を強め、最高裁の判断を国会が覆すことができるようにする内容で、ネタニヤフ政権は議会と司法のバランスを正すのに必要だ、と釈明しているが、立法に対する司法のチェック機能が低下し、三権分立が崩壊するとの懸念が抗議活動を激化させているようだ。

 わが国でも、司法権のトップである最高裁判所の長官は内閣の指名に基いて天皇が任命すると憲法に定めている。しかし天皇の任命は形ばかりであり、実質的には内閣の長である首相に任命権がある。完全分立を実現するとなれば総選挙で決めるべきであろうが、司法の世界は行政に比べその仕事ぶりは国民には広く知れ渡っていない。そこで、実質的に総選挙で選ばれた首相に任命権があるのも致し方ないが、その長官が首相に気兼ねをするようになっては、三権独立の崩壊である。

 選挙の度に1票の格差が問題になる。最高裁判所は違憲と断定せずに違憲状態であるとの判断を下す。政治の混乱を避ける為であろうが、立法、行政はこれに甘んじて抜本的改革を先延ばしている。政治の混乱は司法の責任ではない。政府に気兼ねなく断固たる判断を下すべきである。

 司法と政府の癒着に関しては、政府は2020年に当時東京高検検事長の黒川氏の定年を半年間延長する閣議決定をし、検事総長就任を可能にしたが、黒川氏の掛マージャン問題が発覚し見送られた。典型的な癒着と思われるが、司法も行政の甘い言葉に惑わされぬよう、襟を正して貰いたいものだ。
2023.08.19(犬賀 大好ー939)


安倍派の分裂は必須だが岸田首相はどう出るか

2023年08月16日 11時54分41秒 | 日々雑感
 自民党の最大派閥「安倍派」が後継の会長選びで迷走している。安倍氏の亡き後、安倍派は塩谷立氏と下村博文氏の両氏を会長代理とした。内閣改造・党役員人事が来月11~13日の間にも行われるとの見方が強まる中、8月10日、派閥の新体制について両氏は会談したそうだ。内閣改造の際に安倍派から多くの人間を登用させるためには、岸田首相に安倍派から圧力を高める必要があり、そのためには一致団結する必要があるとの点では一致するが会長選びの点では異なるようだ。

 塩谷氏は事実上の代表と位置づける「座長」に自身が就く案を主張する一方、下村氏は会長の選任を求めて互いに譲らず、平行線に終わったそうだが、二人の主導権争いはどちらかが退かない限り続くであろう。正に同床異夢の関係である。

 現在、自民党の派閥は、安倍派100名、麻生派55名、茂手木派54名、岸田派46名、二階派42名、その他であり、安倍派は党内最大派閥であり、一致団結すれば怖いもの無しの筈である。そこの会長になれば総裁、更に首相への道の最短距離となるが、それだけに誰もが主導権を握りたいのである。

 森元首相は現在は政治家を引退しているその影響力を誇示するためか、塩谷立会長代理の昇格案を示したが、同派中堅若手などの反対で頓挫したことがある。最近の森氏の頭には安倍氏の後継候補として萩生田、世耕、松野、西村、高木の5人がいるようだが、3月23日、森氏は「どこかで誰か一人、代表を決めなければならない」と述べたが、その中の誰かには決めかねている。誰か一人に決めれば、他の4人は同年代であるため総裁の座から遠ざかり、それ故簡単に納得できる筈が無い。派の分裂は森氏の影響力を低下させることになり、決めかねるのは当然であろう。

 8月はじめに実施されたある世論調査で、岸田総理大臣の次の総理にふさわしい自民党議員は誰かを聞いたところ、石破元幹事長が16%でトップとなり、2位河野太郎、3位小泉進次郎で、5位に岸田文雄が入ったそうだ。最大派閥の安倍派が会長を決められない状況では、安倍派から次の総裁候補も思い浮かばないのであろうが、岸田首相にとって勿怪の幸いである。安倍政権下で辣腕を振るった二階元幹事長であればこのような状況下では腕がむずむずしているに違いないが、岸田派には二階氏のような古だぬきは居そうにない。

 岸田首相は4日夜、東京都内の日本料理店で石破茂元幹事長と会食したようだ。石破氏はかって首相候補として名乗りを上げたことがあるが、最近では石破派も解散し、すっかり大人しくなっている。首相と石破氏とは決して仲良くなさそうであるが、マイナンバーカード問題などで内閣支持率が低迷する中、政権運営などで意見交換したようである。ひょっとすると9月の内閣改造で石破氏の閣僚登用があるかも知れない。
2023.08.16(犬賀 大好ー938)