日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

電気自動車は電池次第

2018年03月31日 09時40分27秒 | 日々雑感
 次世代自動車の本命である電気自動車のコア技術は電池にあり、その電池性能は電気自動車のパフォーマンスに直接関わる。現在、電池のエネルギー密度や安全性、寿命およびコストにおいては著しい進歩を遂げているようだが、まだ充電時間が長く、価格が高いという欠点が残り、電気自動車が主役になるためには更なる電池の技術進化が必要である。

 現在、電気自動車の電池にはリチウム二次電池が最有力とみられる。経産省の外郭組織であるNEDOの2013年作成の”二次電池技術開発ロードマップ 2013”によれば、2012年当時電気自動車の走行距離は120~200Kmと記されていた。

 ところが、現在市販されているリチウムイオン電池採用の新型ニッサンリーフにおいては、フル充電からの走行距離が400kmとなっているので、ここ数年間の急激な性能向上が伺える。

 今年の夏は猛暑となるそうだ。夏は冷房を掛けながら走るが、お盆の帰省ラッシュで渋滞に巻き込まれると走行距離400kmと言っても、そんなには走ることが出来ないだろう。更なる性能向上が必須である。

 なお、電池は使うほど性能が劣化する。初代リーフの発売から7年経っており、日産は65万円かかる新品交換を再生電池の活用で30万円で済ます新サービスを5月から始めると先日26日に発表した。デジカメや携帯電話に使用されるリチウムイオン電池も劣化が激しく、2~4年で交換する必要性を感じていたので、リーフの場合意外に長持ちすると感ずるが、それでも高価であるだけに早急な改善が望まれる。

 先のロードマップには充電時間に関する記述は見当たらないが、リーフでは急速充電時間は40分となっている。夜間自宅で充電出来る環境下では問題ないが、旅行の途中での充電となると大問題だ。今年2月の大雪の日、豪雪による車の渋滞に伴うガス欠車が話題になったが、電気自動車の場合はどうなるか懸念される。今後充電時間の短縮も重要課題だ。

 車両価格は大量生産するようになれば量産効果により急激に下がる。充電設備も車が増え需要が増せば当然増える。また、これらは政策により促進することも出来るが、走行距離の増大、充電時間の短縮等の技術的な問題であり政策だけでは如何ともし難い。

 電池技術の進歩はかつての予想を上回るスピードで進展しているとはいえ、ガソリン車を超えるためには、様々な課題が残る。一方既存のリチウムイオン電池(LIB)の安全面・技術面・価格面での限界も見えてきたようだ。”必要は発明の母である”、現在主流のLIBの数倍~10倍超の容量を持つポストLIBの有力候補も続々名乗りを挙げている。

 早稲田大学理工学術院応用物理化学研究室は、リチウム蓄電池材料としての新しいシリコン負極材料を開発したそうだ。従来の電極は充放電による膨張・収縮により壊れやすい欠点があったが、シリコン負極材料の採用により大幅な回数の充放電が可能となったそうだ。これによりLIBの容量・出力の大幅な向上が期待できるとのことだ。

 トヨタ自動車と東京工業大学の研究グループは電解液を使わない全固体電池の性能を向上させることに成功したとのことだ。リチウムイオンの伝導率を従来の2倍に高めて、充電・放電時間を3分の1以下に短縮できるそうだ。これが実現されれば、充電時間40分は十数分に短縮されそうであるが、ガソリン車に比べてまだ長い。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と京都大学、産業技術総合研究所などの研究グループは、金属リチウム二次電池をはじめとする新コンセプトの二次電池であるリザーバ型蓄電池の研究成果を発表した。現行のリチウムイオン電池の約5倍となるエネルギー密度が達成可能で、2030年ごろの実用化を目指しているそうだ。

 以上の他にも性能向上のための工夫は、日本ばかりでなく、世界中で様々に行われていると思うが、その目標達成の目途が立ってきたのであろうか、次世代自動車は電気自動車であると世界の企業は一斉に走り始めている。2018.03.31(犬賀 大好-429)

人事権をすべて握る首相は独裁者となり得る

2018年03月28日 09時28分05秒 | 日々雑感
 森友学園や加計学園問題では、官僚の忖度が話題になっている。官僚が政治家の意向を忖度するのは当然であるが、特に内閣人事局が設立されて以来酷くなったという声が特に霞が関から湧き上がっているそうだ。

 内閣人事局が出来て依頼、官僚は政治家の言いなりになってしまったそうだ。官僚は国民全体の奉仕者であって、特定の勢力への奉仕者ではない、としばしば官僚は強弁するが、官僚も人の子であり、出世したいに決まっている。官僚になったからにはそのトップである事務次官に誰でもなりたいだろう。その人事権を握る政治家に気に入られるためには、一を聞いて十を知る才覚くが無くてはならない。

 官僚にとって絶対権力を有する内閣人事局が出来たのはそう古いことではない。内閣人事局は安倍政権下で2014年に設置された。「国家公務員の人事管理に関する戦略的中枢機能を担う組織」と位置付けられ、幹部公務員600人(全省の課長以上)の人事や天下り先の決定権を握る。安倍首相がその権利を有効に利用した初めての首相なのだ。

 それまでは内閣は各省庁から推薦される人事を追認する立場にあった。日本の政治は馬鹿な政治家に任せておくより、長年の経験のある官僚に任せておいた方が信頼できるとの信仰があったからだ。

 しかし、この官僚制度も長期に亘ると弊害が目立つようになった。その典型が1998年に発覚した大蔵省を舞台とした汚職事件であろう。この事件は別名ノーパンシャブシャブ事件として有名になった。

 元々は証券会社による総会屋への利益供与事件であったが、その背景には、銀行幹部の大蔵官僚に対する接待があり、大蔵官僚は接待の見返りとして、第一勧業銀行など大手銀行への検査に手心を加えていたのである。

 官僚は国家公務員試験により選ばれ、余程の不祥事を起こさない限り、首になることもなく生涯安泰の職業である。政治家のように選挙によって交代させられることも無い。しかし、同じ仕事を長年続けることは、経験を積み重ね、より高い見識が得られる利点があるが、業界との癒着に繋がる原因となる欠点がある。

 内閣人事局が設置されるまでは、省益あって国益無しと揶揄されてはいたが、政治家の言いなりになることは無かった。何しろ人事はその省のトップである事務次官が決めていたので、事務次官の意向に従えばよく、政治家の言いなりになる必要は無かったのである。

 安倍首相は、内閣人事局の設置により官僚トップたちの首根っこを抑えつけることに成功した。従って、官僚は安倍首相にばかりでなく、その夫人にまで忖度し、ご機嫌を取ることとなってしまった。首相は実質的に三権の長であるばかりでなく、官僚の長となり、独裁者の地位を築いてしまったのだ。

 三権の長とはそれぞれ三権(立法権、行政権、司法権)を司る機関の長を指し、憲法でその独立性が定められている。立法府においては衆院、参院の議長、行政府においては内閣総理大臣、そして司法府においては最高裁判所長官である。

 内閣総理大臣すなわち首相は元々行政府の長である。立法府の長である衆議院議長と参議院議長は大した権限は持たず、実質的に権限を有するのは与党の3役であり、そのうち幹事長あたりが筆頭であろうが、彼らの人事権を有するのは首相である。また、最高裁判所の長官の人事権も首相にある。そこで人事権から見れば首相は実質的な三権の長となる訳である。

 内閣人事局の設立で、官僚の人事権まで掌握した首相は自分の思い通りに国を動かすことが出来るようになった。首相の意向を理解しない官僚は無能の烙印を押される。官僚に政治家の意向を忖度したかと質問すること自体が愚問である。

 まだ、意に従わないのに野党とマスコミが残されている。野党は如何ともし難いが、安倍政権になって、いよいよ放送への介入も強まっているようだ。これを反映しているのであろうが、天下のNHKも政権には随分気を使っているようだ。森友学園問題で、麻生財務相は佐川前国税庁長官が犯人と決まっている訳でもないのに”佐川”と度々呼び捨てにして、悪評を買った。しかし、佐川と呼び捨てる麻生財務相が映る画面の字幕では、”佐川氏”とわざわざ氏を付け加えていた。政権に対する典型的なおべんちゃらである。2018.03.28(犬賀 大好-428)

”健全な精神は健全な身体に宿る”は子供の時の話

2018年03月24日 09時40分36秒 | 日々雑感
 昔からよく使われてきた諺に、”健全なる精神は健全なる身体に宿る”がある。体が健康であれば、それに伴って精神も健全であるという意味である。運動に励む選手は、概して健康的で明るく、はきはきしていて率直のイメージであり、子供の頃であれば大いに好ましい特質であり、微笑ましい。しかし、大人になるに従って、単細胞的な負のイメージが強くなってくる。

 例えば、朝日新聞の絶対的高校野球礼賛に対する違和感である。甲子園に向けて努力する高校生を、一途な練習、ひたむきなプレー、青春の花と称えている。そんな純粋な高校生もいるだろうが、そんな高校生ばかりではない。試合に負けた帰りであろうか、電車の中で、入口付近に大勢固まり、通路に荷物を広げ、他校の悪口を大声で言い合う高校生も結構いる。

 高校野球の強豪校が全国の中学校から有望選手を集めるのは有名である。集めるためには当然金銭も動くことは想像つく。そうして集められた選手も野球部を止めれば即退学となる話も聞こえてくる。ごくたまに地元出身の選手ばかりで編成されるとそれだけで記事になる程だ。

 野球部内の暴行事件もよく耳にする。青森山田高校やPL学園の野球部暴行事件もマスコミを賑わした。そんな話を聞けば、甲子園に向かってひたすら青春を謳歌するなどとは、とんだお笑い草だ。

 高校野球で活躍すれば、大学への進学も道が開け、強いては大企業への就職も可能になる。これを目的に頑張ることも一つの生き方であるが、楽しみながら野球をするとは一線を画する。

 大学の運動部の出身者の一般的特質、上意下達、個人より組織を優先、気合と根性は、企業で重宝されていたが、それも1980年代までであったようだ。目標が明確であった高度成長期、24時間働けますかの時代、そのころは大いに活躍したことであろう。肉体的な強靭さは精神的なタフさだとの前提で猛烈社員として働き、働かせられ、組合対策でも大いに力を発揮したとのことだ。

 目標が与えられれば大活躍できるが、自分で考えることが苦手であることは、五輪のメダリストやプロスポーツ選手がうつ病や不安障害、燃え尽き症候群などを告白する事例が増えているとの指摘もあり、さもありなんと納得できる。

 単細胞的な負のイメージは、年齢が上がるにつれて強くなってくる。最近のレスリング協会、柔道協会等のスポーツ団体の不祥事は、スポーツ馬鹿集団を彷彿とさせる。

 レスリング協会に対するパワハラ告発問題では、告発された日本レスリング協会の強化本部長・栄和人氏が注目を浴びている。そんな中、3月15日には栄氏が所属する至学館大学の学長で日本レスリング協会副会長の谷岡郁子氏が記者会見を開いて、パワハラ疑惑に反論した。しかし、何のための会見か、何を言いたいのか、はっきりせず、更に騒動を大きくした。

 また、昨年10月の秋巡業中、貴乃花部屋の貴ノ岩が元横綱日馬富士関に暴行された件では、単なるモンゴル力士同士の内輪もめと思われたが、貴乃花が暴行行為を非難し、日馬富士は引退に追い込まれた。

 しかし今春場所8日目の18日、東十両14枚目の貴乃花部屋の貴公俊が付け人に暴行した事件があった。貴乃花親方の弟子に対する教育は徹底している筈であったが、それでも起きてしまった。これは単に教育の仕方に問題がある訳でなく、本質的に練習における体の鍛錬と頭の中身の鍛錬は相反するものだとすら思えてくる。

 ”健全な精神は健全な身体に宿る”は、スポーツはあくまでも楽しむためのものであることが前提で、スポーツを職業とする社会では当てはまらないのかも知れない。最近のスポーツ界における、幼時からの早期育成、国を挙げての徹底指導、勝負優先等、は、スポーツ第1優先であり、この世界では、スポーツは楽しむものであるとする一般社会における常識は通用しないのかも知れない。2017.03.24(犬賀 大好-427)

異次元金融緩和をあくまで続行

2018年03月21日 09時08分22秒 | 日々雑感
 先日、政府が日銀総裁として再任した黒田東彦氏は、デフレからの完全脱却に向け、総仕上げを果たすべく全力で取り組む覚悟だと、大規模な金融緩和路線を続ける方針を表明した。

 総裁が ”2019年度ごろには出口を検討する” とちょっと触れただけでも市場は円高になるなど、緩和縮小の発言は市場を混乱させるため、続行すると言わざるを得ない状況でもあるのだ。某財務省幹部も、日銀が路線変更に動き始めたと市場が感じた時に混乱するリスクを怖れていると発言しているのだ。

 一方では、国債の買い増し量も年80兆円を目途としているが、最近は年40~60兆円程度に縮小し、既に日銀は出口に向かっているのは誰が見ても明らかであるが、”出口を検討”と口にすること自体にそんなに影響力があるとは理解に苦しむ。

 新しく任命された副総裁の一人は若田部早稲田大学教授であるが、・2%達成以前の出口戦略の発動はあり得ない、・達成したからと言って直ぐに出口をやることもあり得ない、・副作用はまだ顕在化していない、と語っているそうだ。

 若田部氏はリフレ派の論客とのことであるが、リフレ派の主張は長期国債を発行して一定期間これを中央銀行が無制限に買い上げることで、通貨供給量を増加させて不況から抜け出すことが可能だとするものであり、異次元金融緩和の根拠そのものである。

 前任の副総裁の岩田規久男 学習院名誉教授は2013年の就任時、2年で2%を達成できない時は辞任する、決して言い訳しない、と大見得を切ったが、現在目標達成の目途すら立っていない。岩田氏はリフレ派の理論家で有名であったらしいが、どうも経済学者の話はまともに信ずる気になれない。

 さて異次元緩和だけでは2%達成困難と見るや、デフレ脱却には財政出動による後押しも必要だ、との声が首相の周辺で高まっているそうだ。この急先鋒が本田悦朗駐スイス大使であり、彼が日銀副総裁候補に挙がっていたが、財務省が猛反対した結果、若田部早大教授に決まったそうだ。しかし若田部氏も財政出動を主張する可能性があるそうだ。

 財政投資とは税金や国債などの財政資金を公共事業などに投資することによって公的需要・総需要を増加させ、国内総生産(GDP)や民間消費などの増加促進を図ることであるが、1000兆円を超える国の借金を更に増加させる方策だ。財政健全化の第1歩であるプライマリーバランスなどどこ吹く風だ。

 既に異次元緩和により市場には資金があふれ、一部不動産バブルも起こっているとの話だ。また、企業の内部留保は400兆円を超えていると言うのに、物価上昇2%は達成されていない。財政投資により、庶民に金が回る勝算があるのだろうか。

 異次元金融緩和による副作用に関しては、将来の金利上昇局面で日銀の財務が悪化する等が指摘されているが、それが庶民にどう影響するか経済素人には理解できないことが多い。しかし、金融緩和中止宣言による市場混乱が副作用の一つらしいことは解る。

 また、銀行に対する副作用も理解できる。すなわち日銀の超低金利政策が長期化すると、銀行の利ざや縮小や収益悪化といった副作用があることは理解できる。何しろ銀行の儲けの基本は多くの人から安い利子で金を集め、企業に高い利子で貸付て、その差で儲けるのを役目とする話は、中学生くらいの時に教えられた。

 銀行の収支悪化や、銀行の業務のAI化による効率化で今後人員整理も避けられないと、銀行業務の先行きはさほど明るくないと思うが、今年も大学生の就職人気度は高く、相変わらず銀行が上位を占めているようだ。銀行には長年培われてきた蓄積があり、給与は高く、福利厚生は完備しており、ここで指摘される副作用は騒ぐほどでは無いようだ。2018.03.21(犬賀 大好-426)

トランプ大統領の対北朝鮮戦略の変化は中間選挙のためか

2018年03月17日 09時45分57秒 | 日々雑感
 トランプ米大統領は先日13日、ティラーソン国務長官を更迭すると発表した。米国の外交を統括する国務長官が北朝鮮に対し話し合い路線を重視していたのに対し、トランプ氏は強硬路線を主張し、両者の意見の衝突があったからだとの噂である。

 強硬路線とは、北朝鮮に核放棄を迫り、徹底した経済封鎖や軍事的介入への脅しである。しかし、ここに来て、トランプ氏の対北朝鮮戦略が話し合い路線に変化したようであるが、そうであるならば、ティラーソン氏の更迭がなぜ行われたか理解に苦しむ。

 3月5日に平壌を訪れ金正恩委員長と会談した韓国の鄭義溶国家安保室長ら韓国特使団は、9日米国を訪問し金氏の親書をトランプ大統領に渡した。会談後、鄭氏は、トランプ大統領が金正恩委員長と5月までに米朝首脳会談に応ずる意向を示したと明らかにした。トランプ氏も自身のツイッターで、”金委員長は単なる凍結では無く非核化について言及し、ミサイル試射も中止する”と評価したそうだ。

 そもそもの始まりは、平昌五輪後、韓国特使が北朝鮮を訪れ金正恩委員長と会談した際、”金氏は、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消されて体制の安全が保証されれば核保有の理由がない”、と明らかにしたことからだ。軍事的脅威の解消とは、突き詰めれば全世界から軍事力が無くなることであり、あり得ない状況を前提に、極めて当たり前のことを言っているに過ぎない。

 それでもトランプ氏は、将来の米朝対話を経て北朝鮮が核放棄に踏み切ることに期待を示したのだ。北朝鮮の非核化が話し合いで実現されれば、トランプ大統領はノーベル平和賞にも値するだろう。

 これまでのマスコミ報道で知る限り、トランプ大統領の北朝鮮政策は、”北朝鮮が核放棄をしない限り話し合いには一切応じない”、との強硬路線であったが、ここに来て一挙に状況は変わった。

 北朝鮮の核放棄への原因は、これまでの経済制裁が功を奏したとの論調であるが、果たして核放棄の意志は本当にあるのだろうか。識者の意見も様々であるが、疑問視する方が圧倒的に多い。これまでの金正恩の行いを見れば当然である。

 トランプ大統領は、歴代の米国大統領が金正恩に騙されてきたと非難するが、今回の件で騙されないとの確信があるのだろうか。

 金正恩委員長の核放棄する意志は本当だとする意見は、経済制裁による北朝鮮内部崩壊の一歩手前で、背に腹は代えられないからとの論調である。金正恩は米国と対等に交渉するために、一般国民の疲弊を返り見ず、核兵器やミサイル開発を続けてきた。経済制裁により軍人への給与の支払いも出来なくなるまでに追い込まれているとの話であるが、方針変換はあり得るだろうか。

 もし、核兵器廃止となれば、経済制裁解除となり、先進国の経済支援等で一般国民の疲弊は和らぐであろう。しかし一般国民の経済的な余裕は同時に世界の実状を知るようになり、金王国の崩壊へと繋がるであろうが、そこまでの覚悟がなければ方針変更はあり得ない。

 トランプ大統領の心変わりは、中間選挙に向けての人気取りと理解するのが分かり易い。今年11月には米国議会選で下院全議席と上院の1/3議席が改選され、トランプ政権の政策の是非が国民に審判される。米国大統領の任期は4年であるが、大統領任期のちょうど真ん中にあたる時期に選挙が行われるため中間選挙と呼ばれ、事実上の大統領への信任投票になるようだ。現在、大統領支持率は40%以下で、人気はすこぶる悪い。

 3月11日、ペンシルベニア州で下院の補欠選挙があり、共和党が民主党に負けたようだ。同選挙区はトランプ大統領の熱烈な支持層である白人労働者が多いラストベルトの一角の筈だが、トランプ人気の陰りを思わせる。

 トランプ氏の辞書には深慮遠謀との言葉が無いようだ。金正恩の提案にビジネス感覚で即断即決したとなれば、大問題だ。現在米朝会談の中身が、新任のポンペオ国務長官を交えて話し合われているだろうが、事の重大さに気が付き、5月中開催予定が当面延期となるような気がする。2018.03.17(犬賀 大好-425)