日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

国会議員の不作為は今回に限ったことでは無い

2022年05月28日 08時59分42秒 | 日々雑感
 5月25日の最高裁判決で在外邦人が最高裁判所の判事の国民審査に投票できない現法律を「違憲」と結論付けた。国は投票用紙の作成や送付に時間がかかり困難だと主張していたが、”現行と異なる方法を採る余地が無いとは言い難い”、すなわち工夫すればどうにでもなると退けた。これを改善する為には国会の立法が必要であるが、最高裁は国会が検討を怠っていたと国会の不作為を指摘した。

 最高裁が国の方針に対し違憲と断定するのは意外である。三権分立の立場から違憲は違憲と断定するのは当然であるが、国に忖度することはままある。典型は1955~57年の砂川事件である。この事件に関する訴訟において、自衛隊は違憲であるとの主張に対し、最高裁判所は高度な政治的な判断は出来ないと判断を避けた。

 さて最近の国会の不作為の別の例は総選挙における1票の格差問題に関してである。昨年10月の衆院選において格差が2倍以上になっているのは投票価値の平等に反し違憲だとして、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の判決で、高松高裁は違憲状態と判断した。

 判決は“最大格差が2倍以上になると、到底看過できない程度の投票価値の著しい不平等状態にあると解される”と指摘し、2021年の選挙では29選挙区で格差が2倍を超えたとして違憲状態と認めるのが相当としたのだ。

 同様な訴訟に持ち込まれた選挙はこれまでに何回もある。その度に裁判所は違憲ではなく違憲状態にあると国の行政に忖度した曖昧な表現の判決を下してきた。

 これに対し国会は選挙区画の変更や定員の変更でお茶を濁してきた。少子高齢化に伴い、地方の過疎化、都会の人口集中等によりこの程度の変更では間に合わないことは目に見えているが、このような変更ですら国会議員は自身の当落に関係するとなると必死に抵抗する。裁判所もこのような社会情勢の変更に耐えるような抜本的な改正を示唆しているが国会は一向に動かない。

 不作為とは行動すべきと分かっているのにあえて積極的行為をしないこと、である。先述の国民審査の件は国会議員にとって直接の影響が無いため消極的な不作為であろうが、投票権の格差問題は自身に直接関係するため積極的な不作為であろう。

 更に積極的な不作為は文書通信交通滞在費(文通費)に関わる問題である。国会議員に月100万円支給される文通費を巡り、与野党は日割り支給への変更に合わせ、名称と目的を変更する法改正案をまとめた。文通費は議員の国会での活動を支えるための経費であり、税金で賄うため領収書の添付は当然と思われるが、手続きが煩わしいとの理由で見送られた。税金の使い道を明確にせよとの国民の声に対し議論を避けるのは不作為以外の何物でないが、これは不作為よりもっと質の悪い作為である。2022.05.28(犬賀 大好ー817)

ロシアからのLNGの輸入と原発回帰の動き

2022年05月25日 09時49分57秒 | 日々雑感
 ロシアのウクライナ侵攻はプーチン大統領の思惑通りに運ばず、一進一退のようであるが、その影響は遠く離れた日本にも及んでいる。西側諸国はロシアへの経済制裁を強めており、海外企業はロシア事業の一時停止や撤退を迅速に決めた。

 日本は石油・石炭・液化天然ガス(LNG)などの化石燃料のエネルギー資源が乏しくほとんど海外に依存しており、原油の3.7%、LNGの8.7%(2021年)をロシアから輸入しているようだ。

 日本の総発電量の内火力発電が76.3%(2020年度)を占めており、内訳は石油が6.3%、石炭が31.0%、LNGが39.0%だそうだ。LNGは石油や石炭に比べて炭酸ガスの排出量が少なく、2050年のカーボンニュートラルに向けての無くてはならないエネルギー源だ。

 LNGの輸入先はオーストラリアが39.2%(2019年度)と最も多いが、ロシアはマレーシアの次の第3位の8.3%である。ロシアからのLNGの輸入が始まったのは、サハリン沖の石油・天然ガス開発事業が始動した2009年からで比較的新しい。この事業は、カムチャッカ半島北東部沿岸に存在する石油および天然ガスの開発事業で、資源量が豊富で日本に近いことから日本企業は将来を見越して莫大な投資をしている。

 しかし、ロシアへの経済制裁の為この事業からの撤退が西側諸国の声であるが、今年3月31日岸田首相は「自国で権益を有し、長期かつ安価なLNG安定供給に貢献しており、エネルギー安全保障上、極めて重要なプロジェクト」と強調し、即時撤退はしないと明言した。

 一方、ドイツはロシアのウクライナ侵攻前、石油輸入の3分の1をロシアに依存しており、EUの禁輸制裁に反対してきた。しかし5月1日ドイツがロシアからの石油の輸入禁止に前向きな姿勢を示しことから、EUは石油禁輸の実現に大きく踏み出した。

 ロシアがウクライナから撤退し、平和状態が復活すればLNGの輸入も活発化するであろうが、ウクライナ侵攻を止めようとしないため、対ロシア経済制裁を更に強める可能性が高く、その場合日本の独自路線もどこまで頑張れるであろうか。もし撤退すればそこに中国が進出する可能性が高いそうで、岸田首相も難しい判断を迫られている。

 さて、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、石炭や石油を減らしLPGを増やしたいところであるが、LPGの輸入も見通しが悪くなってきた。これを見越してか最近原発回帰の声が高まってきた。

 5月20日の新聞記事に日本エネルギー経済研究所の幹部の意見があった。地球温暖化対策として再生エネルーギ活用の声が高いが出力変動が大きい欠点がある。これに対して原発は安定した出力が得られ、また原子炉の小型モジュールが実用化できれば、より安全になる等の原発の利点が述べられていた。

 しかし、東日本大震災の際の原発事故の後始末や放射能を含んだ廃棄物の保管場所等の負の遺産に関しては何も触れず、すっかり忘れているようだ。過去の遺産を清算すること無しに、原発回帰は現在のSDGsの時代に相応しくない。2022.05.25(犬賀 大好ー816) 

中国と北朝鮮のコロナ感染はこれから本格化するのではないか

2022年05月21日 09時15分52秒 | 日々雑感
 今年5月12日、北朝鮮の朝鮮中央通信が、同月8日に平壌のある団体の発熱者から採集した検体を分析した結果、オミクロン変異ウイルスBA.2と一致したと発表した。世界では新型コロナウイルス感染症の拡大が始まってすでに3年目となるが、2020年1月末に北朝鮮は早々と中朝国境を閉鎖したため北朝鮮国内での感染者は皆無としていた。

 中国との交易は重要である筈だが、この時期に北朝鮮が国境閉鎖するとは余程劣悪な感染症が中国から入り込んで来たのではないだろうか。国境閉鎖と発病者の隔離により、国内での感染拡大はある程度抑え込まれたのであろうが、これが新型コロナウイルスによるとの認識は無かったであろう。

 さて、今年になって突然コロナ感染者が発生したと発表したのは、恐らくコロナウイルスを確認したのは今回が初めてだろうと中国の研究者らは言うが、納得できる。韓国のある教授は、4月末からほぼ確実に新型コロナウイルスの感染が拡大したと思うと述べ、おそらく今年4月25日に行われた軍事パレード等の行事が感染拡大のきっかけになったと説明する。

 5月13日の朝鮮中央放送は、4月末から原因不明の熱病が全国的に爆発的に拡大し、短期間に35万あまりの発熱者が発生したと報じたが、新型コロナウイルスと断定していないところを見ると、PCR検査体制が無いため原因を特定できないのであろう。

 中朝国境は今でも完全に開放しておらず、貿易もわずかに行われているそうだ。ここは、北朝鮮にとって重要な対中国との貿易窓口であり、また国境付近の中国領には朝鮮人が多く住むことから人の交流は盛んに行われていると思われる。

 北朝鮮の4月末ごろから急増している発熱、咳、下痢などコロナ感染を疑わせる症状は、国境の川の対岸にある中国・遼寧省の丹東でも急増しているとのネット情報もあるが、事実だろう。

 一方隣国中国の感染状況であるが、上海市は新型コロナウイルス感染対策として講じられたロックダウンから徐々に脱する方向にあるが、北京市では引き続き感染者が出ている他、他の主要都市でも感染が再び広がりつつあるそうだ。

 中国はゼロコロナ対策を徹底しているが、全国的に感染拡大が拡がった場合、徹底できるであろうか。集団免疫状態は大規模ワクチン接種か感染によって得られるが、ゼロコロナ対策では全員ワクチン接種の話は無さそうだし、しかも中国製ワクチンはあまり効果が無いとのうわさもあり、感染拡大は終息しそうにない。

 既に日本経済は中国にも大きく依存しており、中国経済の衰退は日本の経済にも影響する。2022.05.21(犬賀 大好ー815)

都会における野生動物との共存

2022年05月18日 09時15分10秒 | 日々雑感
 田舎における人間と野生動物の衝突の話はよく聞く。テレビの人気番組、”ポツンと一軒家”でも山の中の一軒家の周りの野菜畑が垣根や電気柵で取り囲まれていることもしばしば紹介される。シカやサルから野菜を守る為の防御策だ。動物にとって自然の木の実より人間の作る野菜の方が美味しくかつ容易く手に入るからであろう。

 野生動物は生きるための環境が整えばいくらでも増える。すなわち食べ物が簡単に手に入り、天敵がいなければ天国となる。人間は一番の天敵であろうが時には餌の供給源の神様にもなる。

 日本全体が人口減少で人家が少なくなったり、空き家の増加が目立つ時代だ。東京23区など都心部でもハクビシンやアライグマなどの目撃が増えているとのことだ。人の目が及ばない空き家や家屋の屋根裏・床下などが、野生動物にとって安全なねぐらになり、また近くのゴミ捨て場が格好の餌場となる。それどころか、人間が野良猫に対するようにペットとして積極的に餌をあげることすらもある。

 神戸市のイノシシは住宅地にも現れ、人にも危害を加えることもあるとのことだが、人間による餌付けも問題になっているようである。厳つい顔のイノシシですら餌付けする人がいるのに、見た目が可愛いリスやシカとなるともっと多いだろう。 

 特定外来生物に指定されているタイワンリスは1950年代に江の島や鎌倉市の山林で野生化し、その後も生息範囲を広げ、2000年代に入ると横須賀市や横浜市南部まで広がり、2017年には相模川を越えた横浜市の北部でもその姿が確認されているという。このリスは見た目が可愛く、直接人に危害を加えることがないので、今後も生息範囲を広げていくだろう。

 可愛さの点では千葉県のシカ科の野生動物キョンも有名である。20年以上前に勝浦市の動物園から脱走したものが野生化したと言われている。2020年度の推計では、県内に生息するキョンの数は約5万300頭で、2013年度の2万5000頭に比べて約2倍に増加しているそうだ。生息域も、2004年度には勝浦市など南部の5市町に生息するだけとみられていたが、2020年度は17市町にまで拡大し、更に、千葉県北部の柏市でも目撃されるなど、徐々に都心部に迫ってきているそうだ。

 千葉県では、人口減少や高齢化などで人の管理が行き届かなくなった竹林がすみかになっており、また山を切り開いて設置された太陽光発電のパネルの下の空間は、風雨をしのげるだけでなく、餌となる下草も生えているため、格好の棲み処になっているそうだ。

 タイワンリスは庭の果物を食い荒らすばかりでなく電線や電話線を食いちぎる被害、キョンは顔に似合わない大きな鳴き声に悩まされている多数の住民、更に糞尿や体についているノミやダニなどが感染症につながる懸念もあると報告されているが、見た目の可愛さから今後も増え続け、そのうち都心の公園でも見かけるようになるのではないだろうか。ハクビシンやアライグマはさておき、リスやシカが身近で見られるのは楽しみでもある。
2022.05.18(犬賀 大好ー814)

安倍政権の負の遺産の責任は誰にあるか

2022年05月14日 10時11分16秒 | 日々雑感
 2020年9月16日、安倍内閣は総辞職した。それよりちょっと前の9月3日の朝日新聞社の世論調査では、安倍政権の実績評価を聞くと、71%が「評価する」、28%が「評価しない」だった。反自民党的色彩の濃い朝日新聞の調査ですら評価が高く意外な感であったが、現在再調査すれば同様に高くは無いだろう。

 安倍元首相と言えば黒田日銀総裁と進めた異次元金融緩和である。デフレ脱却を目的に市中の国債を買い上げて資金を市中にばらまき投資を促し景気を回復し、デフレ脱却を目的とするものであった。2022年春、ロシアのウクライナ侵攻等の影響があり、諸物価が値上がりし消費者物価指数が目標の2%を越す勢いである。世界の経済は米国を始めとしてインフレを抑えるために利上げの方向に動き出しているが、黒田総裁はゼロ金利政策を変えようとしない。
  
 財務省はつい先日5月10日、国債などの残高を合計した「国の借金」が2021年度末で1241兆3074億円と、過去最大を更新したと発表した。国の借金はいづれ返さなくてはならないお金だ。国民1人当たりの借金は1000万円以上になるとのことだが、新型コロナウイルス対策で巨額の財政出動を行ったことが影響し、国民1人当たりに換算した借金は約1011万円に上るそうだ。これだけの借金を抱えながら国民が大騒ぎしないのが不思議だ。

 安倍政権発足時時から財政健全化の話はたびたび持ち上がったが、首相は何度も延期した。安倍元首相が今年5月9日、大分市内の会合で”日本銀行は国の子会社”だと発言し、返済の満期が来たら、返さないで借り換えて構わない、と語ったそうだ。

 日本銀行における国債の引受けすなわち買取は、財政法第5条により、原則として禁止されている。異次元金融緩和はこれに違反しているのだが、国会の承認があれば許されるとして、長年続いているのだ。

 戦後のハイパーインフレは日銀の引き受けによる貨幣の膨張が原因であり、これを反省して財政法第5条が成立しているが、その反省はすっかり忘れ去られている。日銀は国の財政の安定を図ることを目的に政府とは独立した機関である筈だが、黒田総裁は安倍元首相と一緒になり、安定より景気回復を優先させた。

 膨大な「負の遺産」は将来世代に重い負担としてのしかかる。世界の経済は利上げの方向に動いているが、日本はゼロ金利政策を止めることが出来ない。もし利上げに踏み切れば膨大な借金の利子が膨らむ。

 安倍元首相はお金は印刷すればいくらでも生まれると語ってきたが、紙で作られたお金は国民の信用があって初めて価値がある。利上げ出来ない日本は円安がどんどん進に、貨幣価値がどんどん下がる。

 日銀の黒田総裁は安倍元首相と一緒になり異次元金融緩和を推し進めて来た。日銀を子会社と考える安倍首相に主導権があったのであろうが、独裁を暴走させるのは取り巻きのご機嫌取りだ。この意味で黒田総裁の責任は重い。2022.05.14(犬賀 大好ー213)