ロシアのプーチン大統領は10月5日、ウクライナ東・南部4州の併合手続きを完了し、10月20日にはこれら4つの州を対象に戒厳令を導入した。占領する4つの州を戦時体制に移行させることで、そこの住民を兵士に動員し南部で反撃を強めるウクライナ軍に対し巻き返しを図りたい思惑があるそうだ。
プーチン大統領は9月に予備役30万人を召集する部分的動員令を出し、10月14日には、2週間以内に目的の人員を確保できるとの見通しを語り、動員を終了させることを示唆した。この予備役動員には言いながらも一般市民も含まれており、ロシア国内での批判の世論の高まりがあり、これ以上動員できないとの背景もあるようだ。
このところウクライナ軍の反撃が激しく、ウクライナ東部のハルキウ州の奪還に4州の併合宣言前に成功しており、併合も焦りの表れだとの見方が強い。さて、併合地区の戒厳令を受け、ヘルソン州の親ロシア派のトップは、19日、住民の5万人から6万人をおよそ1週間かけてロシア側などに強制的に移住させると明らかにしたようだ。
へルソン州はクリミヤ半島の北側に位置しクリミヤ半島への物資の補給のためのロシアとしては絶対に手放せない地域であり、ウクライナとしてもクリミヤを奪還するための重要な地域であるため、その争奪を巡り戦場となる公算が極めて高いからであろう。
クリミヤ大橋の破壊等のウクライナ軍の反撃に対し、ウクライナ主要都市に計80発以上のミサイルで報復攻撃し、エネルギーのインフラ施設を破壊したようだ。プーチン大統領は14日、攻撃対象の大半を破壊したとして今は大規模攻撃は必要ないと言ったようだがミサイルが枯渇し攻撃できないが本音とのことだ。
さてウクライナのザポリージャ原発の国有化も宣言しており、核兵器の使用の可能性が高まっていると主張するロシア通もいる。米情報当局はロシアの核兵器保管施設を衛星等で常時監視しており、核弾頭がトラックやヘリコプターに積み込まれたり、核兵器を扱うための特殊訓練を受けた部隊の活動が活発化したりする場合に、それを検知することができるそうで、現時点で大騒ぎしていないところをみると、核兵器の使用の可能性は低そうだ。
さて、ウクライナ軍の有利さは西側諸国からの武器援助によるであろうが、最近ウクライナへの武器支援を控えている状況もあるそうだ。表向き西側諸国も武器の在庫が無くなってきたとの説明であるが、ロシアを徹底的に追い込むとプーチン大統領は何をしでかすか分からない、すなわち核兵器の使用の懸念が増すからとも憶測される。そこでウクライナ軍を適度に有利にさせておく一方、プーチン大統領に冷静な状態で停戦の交渉の場に就かせるのが現在の最善の方向と考えているとも解釈できる。2022.10.22(犬賀 大好ー857)