日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

共謀罪法が治安維持法になる体質は依然として日本人には残る

2017年05月31日 09時25分31秒 | 日々雑感
 1999年に成立した「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」の改正案である正式名称「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」が、衆議院を通過し、参議院に送られた。余りにも長い名称の為、その略称として ”テロ等準備罪法案” とか ”共謀罪法案” と呼ばれている。

 この法案の提案理由には、近年における犯罪の国際化及び組織化の状況に鑑み、並びに国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に伴い、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画等の行為についての処罰規定、犯罪収益規制に関する規定その他所要の規定を整備する必要がある、と説明されている。

 今回の法案の条文の何処にも「共謀罪」という言葉も「テロ等準備罪」という言葉も無いようだが、条文の解釈の仕方によって見方が大きく異なることから、二つの言い方になる訳だ。この条文はネットで見ることが可能だが、例によって分かりにくい文章であり、しかも縦書きと一層わかり難くなっている。

 まずこの文面をさらっと流し読みすれば、最近世界を騒がすテロを防ぐための法案らしいと分かり、テロ等準備罪と略称されることが納得できる。

 しかし、細かく読むと、”その他”とか”計画等”とか拡大解釈できる曖昧な文言が含まれており、運用の仕方によっては、戦前の治安維持法となる恐れがあることから共謀罪と呼ばれる所以である。

 すなわち、取り締まりの対象がテロリズム集団ばかりでなくその他の組織的犯罪集団の文言も含まれており、時の政府の運用の仕方によっては、いくらでも拡大応用出来る訳である。

 条文をテロリズム集団と限定すれば極めて限定的になり、多少拡大解釈できる余地を残すことは、法律条文にはよくあることであり、特別なことではない。その場合本来の趣旨にのっとり運用されることが肝要であるが、周囲の状況変化や権力者の都合により、変質する恐れが多分にある。

戦前の悪名高い治安維持法も始めは、共産党などの社会革命をめざす運動を取り締まるものであったが、次第に政府の政策を批判する自由な発言も取り締まりの対象となり、更には軍部に対する反対運動や反戦活動を厳しく弾圧する手段に発展し、軍部の暴走を許し戦争まで突き進むことになってしまった。

 戦前のこのような流れとなった理由は、時代背景も影響したであろうが、日本人の付和雷同体質も一因ではないかと思う。付和雷同とは、自分にしっかりとした考えがなく、他人の言動にすぐ同調することであるが、当時の権力者、あるいは声の大きいものに盲目的に賛同する社会があったのではないかと感ずる。

民主教育が浸透し、情報通信の発展した今日、”テロ等準備罪法案” とか”共謀罪法案” と呼ばれるこの法案が戦前の治安維持法にはなり得ないと主張する論客もいるが、決してそうではない。

 付和雷同する体質の背景には”和をもって尊しとなす”文化の影響が大きいように思える。個人より全体の和を重んずる、と言えば聞こえは良いが、そこにおいては権力者の言うことに従っていれば、個人の責任を追及されることなく、平穏に過ごせるからである。

 全体の和を図るためには、忖度も大いに重要な要素である。森友学園、加計学園問題でも、官僚村における忖度と付和雷同現象が問題視される。まだ、全容が解明されてはいないが、ある時点を境にして、組織が一斉に足並みを揃えて動き出すとは、この典型例であろう。上司の直接の命令は無くても、その意向を忖度して組織一丸となり、役人としての公平性、公正性を無視し、ご機嫌取りする。個人としておかしいと感じても、”みんなで渡れば怖くない”との無責任体質丸出しである。

 忖度と付和雷同は官僚組織におけるばかりでなく、一般企業においても、日本社会一般にもみられる。日本では民主教育が進み、個人が尊重される世になったとはいえ、まだ個人の自立が十分でない。個人の意見を持つより、大勢に従っていた方が楽である。このような状態の社会で、先の法案がいつ戦前の治安維持法にすり替わっていくのか、心配になる。2017.05.31(犬賀 大好-342)

大阪地検特捜部は官僚の壁に穴を開けられるか

2017年05月27日 09時19分05秒 | 日々雑感
 米司法省は5月17日、昨年の米大統領選にロシア政府が干渉した疑惑の捜査を指揮する特別検察官にロバート・モラー元連邦捜査局(FBI)長官を任命したと発表した。トランプ大統領は、魔女狩りだと感情的に反論しているが、どうも窮地に追い込まれたようだ。

 この特別検察官は、大統領が任命する司法長官が任命するのだそうだ。この点で司法長官は大統領の意向に逆らえないことになるが、司法長官はこの件を副長官に任せたとのことで、大統領の意に反する決定がなされた分けだ。米国では三権分立を守る個人の信念が強固であると改めて感ずる。

 一方、我が日本でも安倍首相に関係するかも知れない捜査が始まっている。森友学園が大阪府の補助金を不正受給したとされる問題で、府が5月19日に行政機関として初めて大阪地検特捜部に告訴したのだ。

 特捜部はこれまでに、国の補助金に関して籠池前理事長に対する補助金適正化法違反容疑と、学園に大阪府豊中市の国有地を格安で売却したとする近畿財務局職員への背任容疑でそれぞれ告発状を受理している。

 また、学園への国有地売却に関しては、近畿財務局が地下からごみが見つかったとして、国有地の鑑定額からごみの撤去費8億円余りを差し引いて昨年6月に学園に売却した。これに対し豊中市議らが、国に損害を与えたなどとして、近畿財務局職員を氏名不詳のまま背任容疑で大阪地検に告発している。

 特捜部と云えば東京地検特捜部が有名であり、過去に田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件、未公開株を受け取った政治家や官僚らが起訴されたリクルート事件、ライブドアの粉飾決算事件などを手がけてきた輝かしい歴史がある。

 一方、大阪地検特捜部も有名ではあるが、こちらには不名誉な前歴で有名である。大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件である。2010年に、大阪地方検察庁特別捜査部所属で、主任検事であった前田恒彦が、証拠物件のフロッピーディスクを改竄したとして証拠隠滅の容疑で、元特捜部長の大坪弘道、元副部長の佐賀元明が犯人隠避の容疑で、それぞれ逮捕された事件である。これは、単なる個人の犯罪のみではなく、組織ぐるみの犯罪であった点で、大阪地検の名誉を著しく傷つけた。

 日本も三権分立を憲法で定めているが、米国に比べて日本の司法はだらしない。最高裁の判事は、政府の意向を忖度して、砂川裁判においては高度な政治的判断は出来ないと言ったり、また、国会議員の定数問題では違憲状態であると曖昧な表現しか出来ないのだ。判事の任命権を首相が握るため、政府の意向には逆らえないのだろうが、米国に比べるとやはり個人の気骨に欠けている。

 その気骨に欠ける最高裁の下部組織にあたる大阪地検の特捜部だが、ここで一発奮起を期待したい。例の事件後特捜部の組織、人事は一新されたと思うが、森友学園問題でどこまで真相に近づけるか、名誉回復のチャンスである。

 安倍首相は本人または夫人が関係していると分かれば、首相は当然議員も辞すると大見得を切っている。しかし、特捜部がいくら頑張っても安倍首相または夫人が直接指示したとの、証拠や証言は出てこないであろう。日本の官僚機構は組織としては鉄壁である。この組織の壁に穴をあけることが出来るか、心許ないが期待しよう。

 期待していると言いながら、一方では残念な結果が予想される。恐らく、この事件は首相周辺が勝手に忖度して動いた事件であるで落着するであろう。この場合、責任の所在は曖昧になり、精々関係者が減給何か月で処分されるのが落ちであろう。よくある話である。2017.05.27(犬賀 大好-341)

民進党に明日はあるか

2017年05月24日 16時32分36秒 | 日々雑感
 7月の東京都議会議員選挙を前に、民進党では公認候補36人の内、離党届を出した候補が現職6人を含む13人となり、公認ではない議員2人を合わせると、4月26日時点で15人が離党届を出したことになるそうだ。しかも、旧民主党系の「都議会民進党」も旧維新系の「民進党都議団」も、そろって「民進党」という看板を捨て「東京改革議員団」なる会派名に変更しているとのことだ。

 4月9日には、民進党東京都連幹事長の長島昭久衆議院議員が離党の意向を表明した。民主党政権時代には防衛副大臣も務めた人物だが、共産党との協調路線をとる党執行部の方針に賛同できないとの理由からだ。

 また、4月13日、民進党の細野豪志代表代行は代表代行の辞任届を野田佳彦幹事長に提出した。憲法改正を巡る蓮舫執行部の消極的な姿勢に不満があるとの理由だ。

 国会では共謀罪の法律化、憲法改正等の大きな問題に直面しているにも関わらず、また森友学園、加計学園問題の攻め手があるにも関わらず、民主党内のごたごたは続いている。

 5月14日、民進党の蓮舫代表は熊本市で開かれた党会合で、長島氏や細野氏を最低だと厳しく批判したようだ。代表は代表として党の一致団結を図りたいのであろうが、民進党を一本にまとめる大義名分が無いことには土台無理な注文ではないだろうか。

 安倍首相が今年5月3日の憲法記念日に、憲法改正に向け、9条を含めた具体的な改正項目とスケジュールを示したことは、民進党にとっては不意打ちだったとの好意的なマスコミ論調もあるが、普段の努力が無かっただけで同情には値しない。民進党内部では憲法改正に向けた意思統一がなされていないことは前々から分かっていた。絶対反対の議員から、安倍氏に近い主張の議員も少なくない現状をどのように打開するか、代表としてまとめ切れなかった。代表は人を非難する前に己の力量を恥ずべきである。

 蓮舫代表は安倍首相の改正案の表明直後に強い反対姿勢を表明した。一方、野田佳彦幹事長は5月8日の定例会見で安倍氏の発言に違和感こそ表明したものの、改正内容そのものに対する批判には踏み込めなかったようだ。民進党の現状をよく表している。

 5月15日のNHKの世論調査によると、安倍内閣を支持すると答えた人は51%、支持しないと答えた人は30%であったそうだ。相変わらず半数以上の人が安倍政権を支持している。支持する理由では、他の内閣より良さそうだからが断トツの45%であるが、これは野党第1党の民進党のだらしなさのお蔭である。一度政権を担った民主党が民進党と名前を変えたくらいで、過去のていたらくは消えるものではない。首相は、事あるごとに”民主党政権では出来なかった”と民主党をよく利用するが、民進党は反論できない。

 このままでは社会党と同じ道を辿ると思われる。1994年に村山政権が出来たが、その後社民党と名前を変えたものの凋落の一途であり、現在、衆院2名、参院2名となってしまった。凋落の一番の原因は政権を取ることによって、従来の主義主張が現実に合わないことが露呈してしまったからであろう。これは民主党でも同じであり、このままでは社民党の歴史を辿ることになるだろう。

 日本は、現在様々な問題を抱えているが、すべて問題先送りで、まともな議論が聞こえてこない。例えば、現在1000兆円を超す借金を抱えているのに関わらず、相も変わらず赤字国債発行で予算を組んでいる。2020年までにプライマリーバランスを図ると言いながらその努力は見られない。

 また、原発の再開は粛々と進められているが、使用済み核燃料の処分法は決まらず、廃炉に伴う高放射能廃棄物の処分場は勿論、福島第1原発事故に伴い生じた汚染ごみの中間保管施設ですら決められない。

 いずれも子孫に膨大な負の遺産を残す話であり、今がよければそれでよしとする問題先送り体質だ。安倍政権は消費税10%化に対しても、問題先送りだが、これに対しても民進党の存在は感じられない。

 子孫が安心して暮らせる社会の実現を目指して、今が苦しくても今何をなすべきか。民進党の大義名分の候補の一つは、”持続可能な社会の実現” であろう。このような大きなテーマの下に党内統一できれば、民進党の明日はあるかも知れない。2017.05.24(犬賀 大好-340)

美人の条件は時代、年齢によって変化する

2017年05月20日 09時01分11秒 | 日々雑感
 美容整形と言えば韓国が有名である。韓国では、儒教の教えが生活規範の一部になっているそうだが、美容整形に対する無抵抗さは理解しがたい。しかも、美容整形は女性ばかりと思っていたら、元大統領の盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏も受けていたとは驚きであった。韓国ドラマに登場する女性は確かに二重瞼の大きな目と日本人好みの顔つきが多い。しかし、どの顔も似通っており、ちょっと見には区別がつかないことも多い。

 以上他所事のように述べたが、我が日本でも美容整形は結構盛んなようである。国際美容外科学会(ISAPS)が発表した統計によると、2014年に施工された豊胸、二重まぶた手術などの美容整形外科手術件数トップ5は、1位アメリカ、2位ブラジル、3位韓国、4位メキシコ、5位日本だそうだ。韓国 44万件に対し、5位日本33万件であるので、そんなに大差ある訳ではない。

 最近の日本女性アイドルの顔つきが似ているのも気になるが、単に髪型や化粧法が同じだけであろうか。日本では未だ美容整形に対する世間の風当たりが強く、それを隠す風潮があるのは、韓国より儒教的であるかも知れない。

 現代における美人の条件、豊かな胸に大きな目は昔からではないようだ。平安時代の美人顔とは残された絵画等から、富士額、おかめ顔、一重瞼の細い目、ちっさい鼻、おちょぼ口と想像するのが一般的である。

 世界の三大美人は日本では、クレオパトラ、楊貴妃、小野小町と言われるが、当時の人々を魅了したとの何らかの記録を基に後世の人が勝手に美人と思い込んでいるだけで、具体的な顔立ちは分かってはいないだろう。

 ただ、きめが細かくて色白の美肌、ふくよかで柔らかそうなほほ、長くあでやかな黒髪といった要素は、平安時代でも今日でも美人の条件であることは誰もが認めるところであろう。

 さて、大きな目は美人の条件というより可愛さの条件である。赤ちゃんはどの動物でも相対的に目が大きく可愛い。人間の赤ちゃんも例外でない。ふっくらとして頬に大きな目は若さの象徴でもあるが、歳を取ってからの皺くちゃな顔に大きな目は不気味さの象徴となることも多い。昔美人であった女優さんの年老いてからの写真を拝見し、その落差に驚くことも度々である。

 肌のつやと張りは美人の必須条件である。最近のテレビコマーシャルでも50~60歳代の女性を登場させ何歳に見えますかと視聴者に問いかけることもあるが、一見20~30歳若く見えるのも驚きである。本当の年齢を偽っているのか、美容整形の為か、お化粧の為か、普段飲むサプリメントのせいか、はたまた画像処理により細工をしているか、区別できないが皆美人に見える。

 人間、歳を取れば誰でも肌のつやと張りが衰えるのが自然の掟である。この掟に逆らうのが、お化粧であり、美容整形であろう。女性の美に対する執着はいくつになっても衰えないようだ。

 テレビコマーシャルでは、昔から化粧品の宣伝は盛んである。化粧品の値段はほとんど香料によって決まるという。美しさの要素は外観ばかりでなく、匂いも重要な要素らしい。朝の忙しい時間は、朝食よりお化粧が優先されるようであるが、どんな化粧でも健康美には敵わないことを心すべきであろう。

 お化粧で誤魔化せなくなると残されるのは美容整形である。中年女優さんの美容整形は昔から有名であったが、最近では一般中年女性の皺取りやしみぬきも結構盛んなようである。高須クリニックの高須克弥氏はテレビに登場し美容整形を宣伝しているが、ジェット機で世界を飛び回われるほど、儲かる商売のようである。美容整形は健康保険が適用されず高価な治療となるが、金に余裕のある団塊の世代が中年に突入したことが、美容整形医が繁盛する原因であろう。

 人間誰もが老いるが、年相応の美しさと言うものがある。外観より内面から滲み出る美しさ、心の美しさが重みを増す。外観で誤魔化すのは何処か無理があり、魔女を彷彿とさせる顔もしばしばテレビに登場するが、本人は分かっていないのであろうか。2017.05.20(犬賀 大好-339)

憲法改正には外敵が必要

2017年05月17日 09時31分48秒 | 日々雑感
 安倍首相は、総裁選では施行60周年を迎えた日本国憲法を改正すると宣言し、総理就任後の国会で、「現行の憲法は、日本が占領されている時代に制定され、60年近くを経て現実にそぐわないものとなっているので、21世紀にふさわしい日本の未来の姿あるいは理想を憲法として書き上げていくことが必要と考えている」と述べ、憲法改正は自身の長年の夢と宣言したが、その後国会での具体的な進捗は見られなかった。

 安倍首相は、とうとう痺れを切らしたのか、あるいは森友問題から目を逸らすためか、今年憲法記念日、憲法第9条改正と2020年の施行を目指す考えを表明し、在任中の改憲実現に強い意欲を示した。ここでの改正内容は、9条1、2項はそのまま残し、3項に自衛隊を明記するとのことである。

 自民党は今年3月に開いた党大会で、総裁任期を現在の「連続2期6年」から「連続3期9年」とする党則改正案を了承した。これにより、2018年9月に連続2期目の総裁任期が満了を迎える安倍晋三首相がもし3期目に選出された場合、総裁任期は2021年9月までとなり、2020年施行は任期中の功績となり、歴史に名を刻むことになる訳だ。

 そこで早速8日の自民党役員会で改憲に向けた党内や国会での議論を加速させるように指示したとのことだ。安倍首相の憲法改正に取り組む今回の積極的な姿勢は、これまで国会の議論を見守る姿勢をみせてきただけに、与党内にも困惑が広がっているようだ。

 また首相の表明した改正内容は、自民党が野党時代の平成24年に発表した憲法改正草案にはなかった。草案では現行憲法の2項の「戦力の不保持」を削除し、「自衛権の発動を妨げるものではない」と明記した上で「国防軍」の保持を盛り込んでいた。

 そこで石破茂前地方創生担当相が早速嚙みついた。石破氏は草案の起草委員会メンバーで、思い入れが強い。一方、首相は実質的に関与しておらず、これまでの経緯を考慮していない。首相は改正内容の全体の整合はさておき、「自衛隊の合憲化」を優先する方針を鮮明にしたのだ。

 11日に開かれた衆院憲法審査会の幹事懇談会では、自民党は首相の発言は自民党内向けであり、また2020年施行に審査会は縛られないと苦し紛れの釈明をした。憲法審査会は、議席数に応じ各党に委員が配分されている、民主党議員等も参加する会であり、これまでの経緯を無視するわけにはいかないのだ。

 しかし、自民党にはこれとは別に憲法改正推進本部があり、こちらは首相の意向を受けて憲法の草案を作成し、憲法審査会に諮る予定のようだ。憲法審査会はこれまで苦労して草案を練り上げてきた筈だ。推進本部の作成する別案をおいそれと受け入れないと思うが、そこは自民一強時代の首相の意向だ。簡単に靡くかもしれない。

 憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 共同通信社は4月29日、憲法施行70年を前に世論調査の結果をまとめた。これによれば、9条改正を巡っては必要49%、必要ない47%で拮抗(きっこう)し、安倍首相の下での改憲に51%が反対し、賛成は45%だったとのことだ。この世論調査では、憲法改正には賛成・反対が拮抗しており、どちらになっても圧倒的とはならず、国論を二分する状態となるだろう。

 しかし、日本国民は概して急激な変化を好まず、また、憲法の部分的な条項をいちいち改正するという伝統の無い日本では、大きな国民的な感激や興奮が無い限り憲法改正は行われないだろうと予測する学者もいる。すなわち、憲法改正のためには外からの大きな刺激が必要なのだ。

 北朝鮮のミサイル発射実験は相変わらず続けられ、核実験の懸念も残るが、これらは単なる金王国存続の為の威嚇と思われ、韓国国民はさほどの関心を払っていないようだ。しかし、安倍政権はここぞとばかりに不安を煽り、憲法改正への雰囲気作りに邁進しているように思えてならない。2017.05.17(犬賀 大好-338)