日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

斜陽化する銀行

2019年05月29日 09時08分08秒 | 日々雑感
 銀行は一般庶民から金を集めて企業に投資し、利ザヤを稼ぐ商売であると学校では教えられた。リーマンショク以前はバブル経済で、銀行は机に座っておれば企業が頭を下げて金を借りに来る状況で、利子による儲けは十分あり、我が世の春を謳歌していた事だろう。

 しかし、異次元金融緩和の低金利政策による利益減少、製造業からサービス業への社会の構造変化と投資先の開発努力不足、ATMの進歩・発展等事務の自動化・省力化、人工知能(AI)の進化、等で銀行業務は斜陽化を迎えることとなった。

 斜陽化の典型が地方銀行のスルガ銀行である。低金利政策の為少しでも融資先を増やそうとし、本来なら融資基準を満たさないケースでも、審査部門に提出する書類を基準に見合うように改ざん、偽装して融資を承認させるなどの不正を行っていたのだ。

 不適切な融資はシェアハウスやアパートなどの投資用不動産への資金を必要とするオーナーに対してのみ行われていたかと思っていたが、婚活を装い金銭をだまし取るデート商法にまで加担し不正融資していたとは、驚きだ。融資先開拓の過度のノルマを課せられた行員が不正を行ったとのことであり、机にふんぞり返る時代は過去のものとなった。

 銀行の斜陽化は地方銀行ばかりでなく、いよいよメガバンク3行にも押し寄せ、大リストラ時代に突入するのだそうだ。みずほ銀行は、今後約10年間で、全従業員の約3割である1.9万人分程度の業務量を減らす方向で検討、三菱東京UFJ銀行では今後10年で全従業員の1/3にあたる9500人分の業務量を減らす予定、三井住友銀行では2020年度までに4000人分の業務量を減らす予定だという。

 某就職情報サイトによると2020年卒の就活生を対象とした昨年11月の志望業界調査で、前年1位だった銀行が8位に下がったそうだ。2019年卒から銀行が一般職を中心とした採用抑制を進めたためか、これまで定位置であった1位から陥落したが、今後銀行離れが一層広がりそうとのことだ。

 しかし、就職活動をする学生にとって銀行への就職の魅力はまだまだ十分に残っている。銀行は給与水準も高く、福利厚生はしっかりしており、お金を扱う信頼できる存在として社会的にも認められているのだ。

 一方銀行を取り巻く環境は大きく変化している。各種の規制緩和を受けて、異業種から金融ビジネスに参入する例は後を絶たない。新しい便利なサービスを提供するベンチャー企業、豊富な顧客情報を持つ小売業界、ビッグデータを保有・活用するIT業界など、従来の銀行とは異なる武器を持った異業種から続々と銀行事業に参入している。

 先日某企業への現金振り込みのため某銀行を訪れたが、そこでコンビニから振り込んだ方が簡単だと教えられた。お客様第1主義も結構であるが、商売敵に塩を送るとは複雑な気持ちであった。

 銀行自身も他の業界との連携が盛んである。例えば、みずほグループは無料通信アプリ大手LINEと、三菱UFJグループは米IT大手と、三井住友グループはネット決済大手と、生き残りをかけて必死である。

 これまでの異次元緩和により、銀行には運転資金は十分あるが、有望な融資先が無いとの嘆き節がよく聞かれたが、銀行自身の新しい融資先の開拓努力が無かったことも事実であろう。異業種との連携によりキャシュレス社会への脱皮等、これまでの業務を大きく変化させざるを得ないであろう。銀行員に求められるものも高く厳しくなっているが斜陽化を防ぐためには当然だ。2019.05.29(犬賀 大好-550)

原発の再稼働は昔の夢よもう一度ではあるが!

2019年05月25日 09時26分49秒 | 日々雑感
 福島第1原発事故後中止していた原発の運転を再稼働をするためには、原子力規制委員会の承認を得なければならない。このためには安全性の確立や地域住民の承認が必要となる。

 さて、事故後に出来た原発の安全性に関する新規制基準で、”特定重大事故等対処施設”と呼ばれるテロ対策施設の設置が義務付けられた。

 この施設は、原子炉がテロの標的となり大型航空機の衝突等を受けた際に原子炉を遠隔で冷却する緊急時制御室などを備える大規模な施設だ。当初は2013年の施行から5年以内に設置しなければならないとされていたが、2015年に設置期限を本体施設工事の認可後5年以内に変更された。

 しかし、今年4月17日、九州電力、関西電力と四国電力の3社は、工事の困難さ等の理由により最大3年遅れると説明し、原子力規制委員会に期限の延長を要求していた。

 しかし、4月24日、原子力規制委員会は設置期限の延長を認めないことを決めた。これまでに再稼働していた関西、四国、九州の3電力の原発9基は、期限を迎える2020年以降に順次、運転停止せざるを得ないことになる。

 原子力規制委員会のこの処理は、各電力会社が日本ではテロなど起こる筈が無いとテロ対策を真剣に考えず、資金増大の為なるべく先送りしたい意向を察知し、努力不足を促す為であると言われている。

 福島第1原発の事故に対し、東電側は想定外の出来事が重なったと言い訳している。テロが起こったっ場合、この想定外との言い訳が再び使えないようにする原子力規制委員会の配慮もあるだろう。

 さて日本原子力発電東海第二原発は、昨年10月に工事計画の審査を終えているため、テロ対策施設期限まで後4年半を切っている。しかし今なお具体的な設計を検討している段階で、期限に間に合わない可能性が大である。更にもう一つの関門である茨城県と周辺6市村の同意が待ち受ける。地元には慎重な意見が根強く、実際に再稼働できるかは不透明な状況だ。

 再稼働できれば、原発で安定した電力の供給が可能となり、安全神話が信じられた昔のような栄華が蘇ると電力各社は夢見ているようだが、そこにはまだ国が何とかしてくれるとの甘えがある。

 そこで、いつ再稼働できるか不明な状況であっても、最終的には国の支援が受けられると、日本原子力発電が再稼働をめざす東海第二原発に対し、電力各社は資金支援を惜しまない。

 ところで東京電力の2018年度経常損益は、前年度比8.5%増の2,765億円の利益となったとのことだ。福島第1原発の事故で膨大な損失を出しているにも拘わらず、利益を出しているとは驚きであるが、これは国から莫大な支援を受けているからだ。

 電力会社の電力供給は公共としての重要な役目であり、独占が認められ国の手厚い保護下で運営されてきた。重大事故を起こしても、最終的には国が尻拭いをしてくれ、会社は潰れないと、高を括っているようだ。現に東京電力は利益を出すまでに回復している。事故後電力販売の自由化がなされたが、設備は独占状態であり、甘えの体質は十分残っていると見て良いだろう。

 そこで東京電力は、事故の後始末が終結しなくても、将来不安な原発に惜しみない投資を続けている。東海第二原発には約1900億円を支援し、大間原発がある青森県東通村に約4億円の寄付を検討しているとのことだ。ここにも昔の夢よもう一度の願いがありありだ。2019.05.25(犬賀 大好-549)

時代に合わない法律は誰が変えるか

2019年05月22日 09時13分41秒 | 日々雑感
 規制緩和とは、自由競争を制限する公的規制を撤廃・緩和して、経済の活性化を図ることが狙いである。このため、歴代の政権はビッグバンと呼ばれる銀行、証券、保険会社関係の規制緩和をしたり、通信事業や郵政事業の民営化等の規制緩和を行ってきた。

 これらの規制緩和における規則や法律の改正は、時代の流れと共に経済活動の活性化にそぐわなくなった為、経済界からの強力な後押しがあってなされたであろう。しかし、経済活性化とは直接関係が無く、時代に合わなくなった規則や法律も多々あるが、改正によって利益を得る団体が小集団であったり集団のまとまりが無かったりするとなかなか改正が実現されない。

 2017年、日産自動車やスバルで発覚し、最近ではスズキ自動車で発覚した自動車の最終検査での無資格検査がある。最終検査とは、道路車両運送法に基づいて国道交通省が定めた通達によるが、この通達で定められた有資格者とは、どのような技能が求められるかは明確に定義されておらず、能力をもった人を会社が指名するといった程度であるそうだ。

 スズキ自動車は2017年当時無資格検査をしていないと国に報告していたが不正が最近明らかになった。自動車業界は価格競争が激しく、検査要員の縮小や検査工程の省力化が自動車業界の共通の常識のようである。また、各製造工程における検査が十分行われているため、最終検査は不要との雰囲気も現場にあるようだ。この点トヨタに不正が無いとは、さすがに世界のトヨタだ。

 国交省は、規則は規則と民間企業に押し付けている。民間の検査部門では検査担当の要員を減らされた上、営業等の他部門から督促され検査を省くこともあったようだ。多少省いたところでお客さんの所で事故が起こった例もなく、法律違反になるとの認識が無くなったか、あるいは薄くなっていたことだろう。しかし、だからと言って、罪に問わなくてはこの検査を見張るお役所の存在意義が無くなってしまう。

 従って、最終検査の必要性は、自動車の安全性の確保より、お役所の仕事確保のためにあると言えるであろう。このように時代に合わない法律や規則が後生大事に長年守られている例は各所に見られるが、関係者の努力により廃止されたものもある。

 古くは1931年の、強制隔離によるハンセン病絶滅政策という考えのもと、在宅の患者も療養所へ強制的に入所させるようにした、癩予防法がある。この法律は1996年に廃止された。

 最近訴訟問題で話題となっているのは優生保護法である。不良な子孫の出生防止などを目的に、1948年に施行された。遺伝性の疾患や精神障害、知的障害などと診断され、都道府県の審査会で適当とされた場合、本人の同意がなくても不妊手術ができた。

 1996年に母体保護法に改正されるまで、全国で少なくとも男女1.6万人が不妊手術を強いられたとされる。現在、20人ほどの被害者が国を相手に訴訟を起こし、最初の判決は5月末に出る予定だそうだが、癩予防法や優生保護法の廃止、改正は関係者の強い熱意があったからだ。

 さて、現在全国的に空き家が激増し、全国で放置空き家が問題視される中、空家等対策の推進に関する特別措置法が2014年に成立したが、放置空き家は増える一方である。原因の一つに更地にすると固定資産税が高くなると言う決まりがある。更地にするには金が必要で、更地にしても容易に転売できる時代ではなく、更地にすれば税金が上がる。これでは敢えて更地にする人間は居ない。この規則こそ改正されるべき一つであるが、国会議員も票に結びつかねば動き出さない。2019.05.22(犬賀 大好-548)

罪の認識の無い所に罪は発生しないのか?

2019年05月18日 09時11分43秒 | 日々雑感
 隠蔽とは元々”人や物の在りかを隠すこと”と極めて単純で分かり易かったが、厚労省の毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会が定義する隠蔽は、”法律違反や極めて不適切な行為を認識しながら意図的に隠そうとする行為” であると分かり難くくしている。

 この文言では、不適切な行為と認識していなければ故意に隠そうと隠すまいと罪にはならない、とのニュアンスになり、厚労省の統計処理の不正行為を何とか罪に問われないようにする為の労作の結果だ。

 と言いながらも、罪の認識の無い所に罪が発生しない、あるいは罪が軽くなるのは一般的な常識であり、それをダメ押しした感もある。

 小学校や中学校でいじめがよく問題になる。いじめられる方は自殺にまで追い込まれることもあるが、いじめる方はいじめているとの認識が無くただ軽い冗談の気持ちでやっているとの話もよく聞く。

 セクハラにしても各種の差別でも同様であろう。やられる方は深く傷ついても、やる方に罪の意識は無く、その結果余り重大な罪に問われることは無い。

 また、2017年2月に、マレーシアの国際空港で金正恩委員長の兄の金正男氏が殺害される事件があった。実行犯の女性2名は、インドネシアとベトナム国籍であり、両人とも最近比較的軽い罪で放免された。

 両国からの身柄解放要請にマレーシア政府が配慮したのが一因であろうが、両人の殺害するつもりは無く単にいたずらと思ってやっただけだとの主張が認められたのも大きい要因であろう。これも罪の意識の無い所に罪が発生しない一例となろう。

 罪の意識が無い状態での犯罪の典型例は、認知症や精神疾患の患者による犯罪だ。精神的に正常でないと思われる人物が事件を起こした場合、精神鑑定が必要となる。精神鑑定とは裁判所が精神状態・責任能力を判断するため、精神科医などの鑑定人に対して命じる鑑定だ。

 刑法第39条には、1項;心神喪失者の行為は、罰しない、2項;心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する、という規定がある。すなわち事件を起こした者に責任能力がない場合には、違法行為をしたことについて非難することが出来ない、ゆえに犯罪は成立しない、との意味だ。

 責任能力の問題と、罪の認識の問題は本質的に異なるが、責任能力の低さと罪を認識する能力の低さとでは、能力の低さの点で相通ずるところもある。

 ところで、精神鑑定の結果、責任能力が無いと判定されても、無罪放免とはならず何らかの治療が義務付けられるだろう。また未成年者の犯罪も特別に扱われるが、少年院等での更生が義務付けられるが、厚労省の統計処理の場合口頭注意ぐらいで済まされるだろう。

 この厚生省の件では、統計の作業内容が変わらないのに作業人員が大幅に減らされたとの背景もあり、要員配置を行う管理部門の責任の方が大きいようにも思える。

 セクハラやパワハラ、またいじめに対する世間の目が厳しくなった。認識の低さが罪の軽さに結びつく時代は終わりつつある。2019.05.18(犬賀 大好)547

原発は世界的にも衰退の気配であるが?

2019年05月15日 09時10分45秒 | 日々雑感
 国際原子力機関(IAEA)は、原子力発電は世界全体でみると、①発展途上地域における人口や電力需要の増加②気候変動や大気汚染への対策の必要性③エネルギー安全保障④他のエネルギー資源価格の変動などの潜在的な要因から、引き続き世界の電源構成において重要な役割を果たすとしている。安全性と安全対策コストに問題なければその通りであろう。

 2018年初頭、原子力発電所の数は、米国99基、仏58基、中国は37基だそうで、2017年に全世界で運転を開始した原子炉は4基あり、そのうち3基は中国にあり、残りの1基は中国がパキスタンに建設したものだそうだ。中国には原子炉を年間10〜12基建設する能力があり、今後も数年前に建設を開始した原子炉数基が運転を開始する予定だそうで、中国の躍進が顕著だ。

 しかし、中国は当初2018年中の着工予定は6~8基であったが、2016年後半以降、新たな原子炉は着工されていないとのことだ。中国は表向きは原発推進の立場を維持しているものの、原発大手さえも再生可能エネルギーへのシフトを始めているそうだ。

 欧米諸国は、原子力はコストが高過ぎる、国民は安全性の面から原発を望まない、という問題に直面しており、こうした問題に中国の原子力政策も従わざるを得ないという見解が中国政府関係者にもあるそうだ。

 しかしながら、自国の原子炉の能力を世界最高レベルにまで引き上げてきた中国にとって、原発は重要な輸出商品になっているそうだ。中国はパキスタンに原発を建設している他、2016年にケニアとエジプトとの間で輸出に関する覚書に署名し、また、ルーマニアやアルゼンチンからも注文を取り付けるなど、中東やアフリカ地域の市場を集中的に開拓しているようである。

 開発途上国にとって電力は必要不可欠であり、原発は当面の要求を叶えてくれる有り難い設備となる。中国にとってもこれまでの開発費用を回収するため、これらの国への輸出に熱心になるだろう。

 自然災害や人災を想定しなければ原発は安全であるが、開発途上国の資金不足を補うため安全対策に手を抜くかも知れない。恐ろしいのは、導入直後には緊張してマニュアルを守るであろうが、多少慣れてくると手を抜くために起こる人災である。相当規模の自然災害が起こらなくても、慣れは必ずやって来る人間の特質だ。どこかで事故が起こるまでは途上国での新設ラッシュは続くであろう。

 ところで、日本に原発の新たな建設計画はないが、原発事故前に着工され、完成が間近かに迫っていた原発3基がある。その内1基は凍結、残り2基を何とか完成させようともがいている。

 その一つが島根原発3号機だ。中国電力は立地自治体の松江市や島根県から事前了解を得て、昨年8月に原子力規制委員会に安全審査を申請した。一方、国は福島第一原発の事故を踏まえ、原発30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を義務づけた。このため島根原発の周辺6県市は、協定を立地県市と同じにするように再三求めているが、中国電力は応じていない。

 周辺自治体に対する事前了解は再稼働を控えるどの原発でも同じであるが、電力会社はコスト高や時間の長期化の面で逡巡するだろう。しかし、福島の原発事故の教訓は絶対生かさなければならない。

 もう一つの下北半島の大間原発は、プルトニウムとウランを混合したMOX燃料を100%使う原発として、プルトニウム削減の切り札として国は稼働に期待している。島根原発3号機はこれまでの投資した分を取り返すのが第1目的であろうが、大間原発はそれに加えてプルトニウム削減がある。

 原発は事故さえ起きなければ電力会社には安定した収入源であり、消費者には電力が安定供給されるエネルギー源だ。一方福島の原発事故は大きな後遺症を残し、今だ癒えていない。世界の原発の流れは衰退の方向に向かっている。さて、原子力規制委員会はどのように判断するであろうか。2019.05.15(犬賀 大好-546)