日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

新車の完成検査制度と車検制度の必要性

2018年01月31日 19時09分35秒 | 日々雑感
 自動車の完成検査は、組み上がった完成車に対して、検査員が規定の検査をして完成検査終了証を発行することである。これに合格して初めて自動車メーカは販売会社に卸すことができるのだそうだ。販売会社は、買手が決まった段階で公的機関で新規登録をしてナンバーを付け、お客様に引き渡す。この際、公的機関は、完成検査終了証を確認し、新規登録を許可するので非常に重要な書類となる。従って、本来は国が1台ずつ運輸支局で検査する必要があるが、大量生産車は手間がかかるためメーカーが代行しているのだ。

 この最終検査に検査資格を有さない人が長年従事した等の不正が発覚したため、国土交通省が昨年11月末、新車の完成検査制度を見直す検討会を立ち上げると発表し、早速1週間後、初会合を開いたそうだ。有識者と国交省の担当者で構成し、今年3月中に一定の結論を出す方針のようだ。

 市場に出た自動車に対する一般人の評価は厳しく、悪評はインターネットですぐに広がる。この為自動車メーカ各社は工程ごとに品質管理を徹底している。そこで最終的な完成検査で不具合が見つかることはほとんど無いとのことだ。

 かっては制度の意味があったかも知れないが、現在制度は形骸化しており、後生大事に検査制度を維持しようとしているのはお役所のみだ。面倒な作業は民間に任せていても、お客様が頭を下げてやって来る美味しい商売だからだ。

 輸出車には終了証は必要ないとのことであり、また検査資格を有さない人が検査をしていても、事故が発生したとの事例は無いそうで、この検査制度が廃止されても問題ないと思われる。しかし国交省は車の新規登録する権限を有しており、この権限実行を飯の種にしている人もいる。国交省はこの既得権益をおいそれとは手放さないであろう。

 今年3月までに完成検査制度に関する検討会の答申が出るであろうが、恐らく若干の改善があるものの、制度の廃止まではいかないであろう。

 形骸化している制度と言えば自動車検査登録制度(車検制度)もあり、これも典型的な既得権益である。新車は3年目、その後2年毎の車検を受けなければならない。車検そのものの手数料は現在小型車1700円である。数万円かかる車検の際の費用は自動車損害賠償責任保険料、自動車重量税、そして取り扱いディーラーへの検査料や修理代等であり、車検代そのものは大した額では無い。

 費用の発生する検査には、車検の他にも12か月点検がある。こちらは義務化されてはいるが、受けない場合でも罰則は無い。世界でトップクラスの高品質の自動車生産国のクルマがこんなに頻繁に点検を受けなければ公道を走れないのは不思議な話だ。また、運転距離に関係なく、時間で検査間隔を決めているのも摩訶不思議だ。

 この車検制度により、潤っているのは整備業界だ。何しろ時間で検査間隔が決められているので定期的に仕事があり、安心して商売が出来るのだ。つまり、車検制度は、安全という言葉に隠れたクルマに関わる業者を儲けさせるための法律である。また、許認可権があれば、天下りもあり、そこから利益を得ている政治家もいるだろう。

 車検制度を廃止した場合、無整備のクルマや素人の改造車で事故を起こす輩が頻発すると主張する者もいる。自動車事故には、飲酒運転、わき見運転、高齢者の不注意事故等、様々であり、悲惨な事故は後を絶たない。これらの事故はほとんど車検制度とは関係なく、自己責任に帰せられる。事故全体に占める無整備自動車事故の発生割合がどうなるか不明であるが、自己責任で良いのではなかろうか。

 少なくても車検制度が廃止されなくとも、その検査間隔には走行距離も加味すべきである。走行距離を考慮すると、税や保険の徴収が面倒になるとの言い訳が聞こえてくるが、検査に関係なく自動車税は毎年きちんと請求が来る。この制度に関しても見直し検討会を開いて欲しい。2018.01.31(犬賀 大好-412)

北朝鮮の脅威の煽りもトランプ大統領の商売の為?

2018年01月27日 09時38分57秒 | 日々雑感
 米国の株式市場では、ダウ工業株平均が市場最高値を更新したとの報道をよく耳にする。米国経済が好調な原因は、トランプ大統領の減税政策やインフラ投資政策のお蔭だそうだが、このトランプ景気の恩恵をもっとも受けているのは軍需産業との話だ。

 ロイター通信は1月8日、米国製武器を積極的に海外で販売するため、トランプ政権が輸出制限の緩和など新たな方針を取りまとめていると報じた。米国製の戦闘機や軍艦、迫撃砲などを政府一丸となって売り込み、米国内での雇用創出につなげたいとの考えからだそうだ。

 トランプ氏は北朝鮮やイランの脅威を前面に押し出し、武器商人のように周辺国に武器を売り込んでいるとすれば、トランプ氏は政治家で無く、根っからの商売人である。アメリカファーストや雇用創出のためと口では言いながらも、陰では個人的にもちゃっかり儲けているに違いない。

 米国の軍事費は約60兆円で世界でも断トツであり、2016年、2位の中国を3倍近く離している。また、監視団体によれば、昨年1~11月の武器輸出総額は約9兆円だそうで、最大の武器輸出国でもある。

 昨年5月には、トランプ氏はサウジアラビアと、米国史上最大規模とされる約12兆円に及ぶ武器売却の契約に署名したそうだ。アラブ首長国連邦への武器輸出でも合意しており、輸出相手国は世界中に広がる。

 この60兆円で米国の巨大軍需産業が維持されている。逆に、この軍需産業を維持するためには、約60兆円の需要を作り出さなければならない。すなわち、武器を必要とする紛争の火種を作り出さなくてはならないのだ。

 トランプ氏の北朝鮮の金正恩との子供じみた口喧嘩は、実は武器を日本へ売り込むための方便と勘繰ることも出来る。

 日本は世界の中でも軍事費は高い方だが、経済の規模で考えるとむしろ低い方である、は定評だ。トランプ大統領はビジネスマンだ。ここに目を付けない筈はない。そこで、北朝鮮を少々脅かし、日本への脅威を高めればよい。その戦略に安倍首相はまんまと乗った。

 トランプ氏は昨年11月、安倍晋三首相との会談後の記者会見で、日本が米国から兵器を購入すれば、米国は多くの雇用を、日本は安全を確保できる、と強調した。

 日本政府は早速応えた。すなわち昨年12月、米軍再編費などを含む5.2兆円の2018年度防衛予算案を決定した。前年比1.3%と、4年連続で過去最大を更新するそうだ。陸上配備型の弾道ミサイル防衛システム”イージス・アショア”や長距離巡航ミサイルなど、新規装備の調達に向けた費用を盛り込んだのだ。

 紛争の火種作りは北朝鮮にばかりでない。イランの脅威の脅かし、エルサレムへのイスラエル首都移転もそのためと勘繰られる。弾道ミサイル開発を進めるイランと過激派組織ISの脅威をテコに、サウジアラビアへの12兆円の武器輸出拡大を実現したのもこの成果であろう。

 一方、武器輸出に積極的なのは米国ばかりでない。実は、国連安全保障理事国である米国、イギリス、中国、フランス、ロシアが、多くの武器を輸出しているそうだ。アジア、アフリカ、中東、ラテンアメリカへ輸出された武器のうち、その80パーセント以上が、常任理事国から輸出されたものであると言われている。

 また、シンガポールにある国際研究機関は昨年9月、”中国の武器輸出戦略の輪郭”という見出しで、過去10年で、中国は武器輸入大国から輸出大国に変わったと報じた。中国は低コスト、合理的な価格のサービス等を提供し、世界の主な武器輸出国の仲間入りを果たしたとの内容である。

 トランプ大統領の登場前から武器の売り込み軍拡競争はあったのであろうが、そこにトランプ氏が美味しい商売と悪乗りしたのかも知れない。各国の軍拡競争の恐ろしさは留まるところを知らないことである。国対国の争いでは疑心暗鬼が更なる軍拡へと進める。また、武器輸出国は製造設備や人材を維持、育成するために、需要を作り出さなくてはならない。日本もこの流れに乗ったが、行き着く先は恐ろしい結果でしかない。2018.01.27(犬賀 大好-411)

シェア自転車サービスの先にあるもの

2018年01月24日 09時58分32秒 | 日々雑感
 シェア自転車サービスとは、予め利用の意志を登録しておけば、コンビニなどの駐輪場に置かれた自転車をスマートフォンを利用して開錠し、利用出来る仕組みである。レンタル自転車サービスはこれまでにも観光地等で見かけたが、インターネットの普及により、好みの時に借りられ、必要が無くなった時にどこでも放置できるのが大きな特徴であろう。

 中国において2016年に登場したと思ったら、瞬く間に都市生活に浸透したそうだ。シェア自転車は、町中ですぐに見つけることができ、好きなところに乗って行って、そこで乗り捨てればいい、という便利さで爆発的に広まったのだ。

 これと共に多くの企業が参入し、群雄割拠の大競争が繰り広げられた結果、60社以上の中小企業が倒産し、現在モバイク(Mobike)とオッフォ(Ofo)の2社だけが生き残っているそうだ。中国と言えば、ひと昔前の、自転車通勤の大群を思い出すが、何処にでも乗り捨て可能状態が今でも続いているのであろうか。

 先の両社はネット大手の出資を受けて海外進出を試み世界各国の都市でサービスを展開しているそうだ。モバイクは昨年8月、札幌市でサービスを始めたそうだ。競合のオッフォも日本進出を決めているようだ。

 また、自転車大国オランダの主要都市でもシェア自転車サービスが実施されているようである。しかし、これまでどこでも乗り捨て可能となっていたが、このほどアムステルダム市がその流れに待ったをかけたようだ。同市は2017年の秋から商業目的で公道を駐輪場代わりに利用することは、まかりならぬと発表した。そこで利用者は好きな場所に乗り捨てが出来ないことになり、利便性は著しく損なわれることになるが、今後このサービスはどうなるであろうか。

 さて、我が日本では、中国資本の日本での活躍を指を咥えて見ている訳にはいかないと、昨年暮れ、セブン-イレブン・ジャパン,、フリーマーケットアプリのメルカリ、通信企業のLINEが、相次いでシェア自転車事業に参入する意向を示した。

 進出を目論む各社は、中長距離を公共交通機関で移動し、ラストワンマイルを自転車で移動するような移動方法を提案したいと話し、シェアサービスは世界的に成長が見込めると強調している。

 しかし、乗り捨てられた自転車をそのまま別の人が利用することが出来れば、非常に便利に違いないが、いたる所に自転車が放置されているイメージとなり、それはそれで大きな問題となる。

 従って、放置自転車に対する世論が厳しい日本でこの方式を実現するのは極めて困難と思われる。大都市周辺の駅の近くでは、通勤に使用する自転車が道路に放置され、狭い道路を一層狭くし交通の妨げになり、社会問題化しているとの話はよく聞く。駅周辺の駐輪場の整備がなされない限り、大都市近郊でのシェア自転車の普及はまず期待できないであろう。

 そこで日本におけるシェア自転車サービスは観光地における利用に限定されると思われるが、その狭いマーケットに日本の大手企業が乗り出す理由は、単に自転車のシェアリングだけでなく、その先を考えているからであろう。

 シェア自転車サービスの先にある候補の一つは、空いている月極駐車場や、マンション・アパートの駐車場を利用したいユーザーに提供するパーキングサービスであり、自動車のシェアリングもある。

 いずれもこれまでに無い新しいサービスであり、従来の柵に捕らわれた高齢者には思いもつかないビジネスモデルである。シェア自転車サービスは観光地に限ると断定したが、新たな発想で思いがけない展開の仕方もあるかも知れなし、意外に早く衰退するかも知れない。2018.01.24(犬賀 大好-410)

異次元金融緩和の出口とは

2018年01月20日 09時40分43秒 | 日々雑感
 政府・日銀が進める異次元金融緩和の副作用の論議が活発化し始めた。異次元緩和の一環として行われている日銀の上場投資信託(ETF)購入による株式市場のゆがみは、その副作用の一つであり、経済素人の目からもはっきりしている。すなわち日銀が株を購入する限り、その会社の信用は高まり、客は安心して株を購入出来るからである。その逆も真であり、副作用は明確である。

 しかし、国債買い取りによる副作用はその道の専門家により色々指摘はされているが、今一はっきりしない。曰く、日銀が銀行などから買った国債などの資産が巨額になり、将来の金利上昇局面で日銀の財務が悪化する可能性がある。しかし、金利上昇面での財務悪化とは、いかなる状況か等、素人にはよく分からない。

 また曰く、今の国債買い入れペースを続けると、本年半ばにも日銀が国債を買えなくなる限界を迎える。市場に出回る国債が極端に減り、金利が乱高下するなど、金融市場の大混乱を引き起こす恐れさえある、と。

 これらの副作用説も、素人にはよく理解できない。日銀が買えなくなる限界とは? しかし、日銀が国債購入が出来なくなることは、財務の悪化であり、市場の大混乱になるとの両者の主張は同じことを別の表現で言っているに違いない。しかし、漠然としており、余り危機感が感じられない。

 さて、通常、政府は政権運営の為国債を発行し、銀行や保険会社等がそれを買い取り、政府が運営資金を入手する。一方銀行は買い取った国債の利子で儲ける仕組みである。異次元金融緩和においては、銀行が保有する国債を日銀が買い取り、銀行は手に入れた現金を市場に投資し経済を活性化する仕組みとなる筈であった。

 さて個人が保有する国債は資産となることは理解できる。しかし、日銀の保有する国債を資産と考えてよいのだろうか。資産であれば多ければ多いほど結構となるが、そうであるならば国は無限に国債を発行し、日銀はどんどん購入すればよい。しかし、そんな都合の良い話にならないことは明白だ。そもそも、日銀が銀行に支払った金の出処は何処であろうか。日銀はお金を印刷する権利を有しているため、勝手に印刷して支払っただけではないか。

 日銀が保有する国債などの総資産が昨年5月末時点で500兆円を超えたそうだ。2016年の日本のGDPは537兆円とのことであるので、GDPに匹敵する資産を日銀が保有していると思えば、安心出来るが、私には借金のようにしか見えない。

 GDPは1年間に生み出された付加価値の総額で通常定義されるが、日銀は単にお金を印刷したに過ぎない。資産が増えないのに、お金の量が増えると言うことは、これまでの資産の価値を下げることに他ならない。そう考えると、異次元金融緩和の副作用は、インフレによる物価の上昇と思われる。緩和の開始時には物価上昇率2%の目標は簡単に達成され、その後物価上昇の歯止めが効かず、物価上昇は果てしなく続くと懸念された。

 また更に勘繰れば、日本が抱える1千兆円を超える借金もインフレによる解消が真の目的であると。

 しかし、500兆円のバラマキがあっても、2017年内には物価上昇は生じ無かった。これは黒田日銀総裁の誤算であったが、当然経済素人の予想からも外れた。原因は色々指摘されているが、バラマキが国民に平等になされず、大企業に偏ったことが大きな原因であろう。

 前述の専門家の副作用に関するもっと分かり易い説明が欲しいが、逆に誰にでも理解できる説明がなされると、異次元金融緩和は一気に吹き飛ぶ恐れがあるかもしれない。このため、漠然とした説明しか出来ないと考えると、空恐ろしくなる。

 日銀も国債買い取り量を維持すると言いながら、実際には減らしており、そろそろ緩和縮小だと市場が気が付いてくれるのを待っているようだ。

 某財務省幹部も、日銀が路線変更に動き始めたと市場が感じた時に、市場がどう反応するかが読めないし、その際に混乱するリスクを怖れていると発言している。

 しかし異次元緩和による副作用は終了宣言直後の混乱ではなく、これまでに市場に投入されたお金が引き起こす災いであろう。この金が回収されて初めて副作用が解消された、無事出口にたどり着いたと宣言できるのではないか。異次元緩和は簡単に始められたが、無事出口にまでたどり着くのは容易でない。2018.01.20(犬賀 大好-409)

始めるのは易しいが止めるのは難しい

2018年01月17日 09時33分58秒 | 日々雑感
 高速増殖炉、”もんじゅ”は、核燃料サイクルの中核をなし、使った以上の燃料を生み出す夢の原子炉になるはずであった。50年以上前から開発が始められ、また完成から約24年の歳月が過ぎたが、事故等のため、運転できたのはわずか250日に過ぎないとのことだ。

 2016年に政府の廃炉決定により、これまでに費やした予算1兆410億円は水泡と帰し、夢の原子炉はまさに夢として幕を閉じることになる。

 昨年12月、日本原子力研究開発機構は、完了までに30年を要する廃炉計画を原子力規制委員会にようやく申請した。

 しかし、今回、全体の4段階の行程中、第1段階に当たる核燃料等の取り出し工程のみが示された。すなわち、本年度中に核燃料や冷却用ナトリウムの抜き取りを始め、2022年までに完了し、第2段階以降でナトリウム機器の解体撤去、建物の解体撤去へと進み、2048年までに廃炉完了するとの計画であるが、あくまでもそうしたいと言う希望の計画であろう。

 第1段階におけるナトリウムの抜き取りなどは初経験であり、計画通り進むか甚だ疑問である。このような状況下で第2段階以降の計画を練るなどとは、やる気が起こらないのは当然である。

 廃炉計画が順調に進んで30年、その間従事する人間も大幅に入れ替わるであろう。もんじゅの建設開始時には、完成すれば日本のエネルギー問題は解消されるとの大きな希望があった。希望があれば、自然人材が集まり、意気も高まる。

 これに対し、廃炉での仕事は後始末、後かたずけであり、尻ぬぐいである。廃炉を無事終了させても後世に名を遺すことにはならないだろう。これでは、意欲ある若者の参加も期待できない。これからしても、計画遅れは必須であろう。

 解体などの廃炉費用は約1500億円、このほか人件費等維持管理費約2250億円と、総額3750億円必要になるとのことだ。もんじゅの廃炉費用は、その出力28万キロワットに対して3750億円と、一般的なもの(100万キロワット級原発で3000億円程度)と比べて規模の割にかなり割高だ。しかも計画遅れは費用増となること必須であり、3750億円を大幅に上回るであろう。

 日本はこれまで、技術は無限に進歩するとの信仰の下に、原発ゴミの処分法も高速増殖炉技術もその内何とかなるだろうと、能天気に問題を先送りしてきた。核燃料サイクルの破綻は、もんじゅが冷却用のナトリウム漏れ事故を起こした20年以上前から予想できた筈なのに、核ごみ処分の検討など何もしてこなかったとは、呆れるばかりである。

 何事も、始めることは易しいが、中止するのは難しいことは世の常である。プロジェクトが大きくなればなるほど、また国家プロジェクトであればその傾向は強くなる。国家プロジェクトの場合、担当する官僚は2、3年で交代するようだ。自分の任期の内に、先輩の始めた事業を中止することは、村八分の覚悟が必要だろう。従来踏襲は出世の条件でもあるからだ。

 民主党政権時代のダム建設の見直しでも、中止に対する官僚の激しい抵抗があったようだ。八ッ場ダムの建設では、当時の前原国交大臣が八ッ場ダム建設中止を打ち出した。理由は八ッ場ダムの建設開始当初の目的が無くなったことであった。しかし、中止の場合、地方自治体への工事負担金の返還や、地元住民対応など、様々な作業が必要であった。しかし官僚の協力が得られず、民主党は後始末に嫌気がさしたのか、ほったらかしにしたままであった。結局自民党政権で建設は再開されることになり、民主党の没落の一因を作った。

 現在、政府、日銀は異次元金融緩和を続けているが、一向にいつ中止するかの議論は聞こえてこない。これも又、始めることは易しいが、中止することは難しいの典型例である。2018.01.17(犬賀 大好-408)