政府は今月27日、長崎県が昨年4月に申請したカジノを含む統合型リゾート(IR)の整備計画を認定しない方針を固めた。これにより、日本のIR実現に向けて手続きが進むのは大阪府・市による計画のみとなる。来年の大阪万博の開催で右往左往している関係者を見ると、将来のIRもこのまま順調に進むとは思えない。
IRが実現に向け第一歩を踏み出したのは2016年のIR推進法の成立からだ。観光振興の起爆剤になると期待されるIRは多くの自治体が関心を示した。当初は東京、大阪、愛知、福岡あるいは千葉、横浜など大都市圏を擁する地域や、北海道、沖縄といった観光に強い地域、さらにはリゾート型IRを志向する和歌山や長崎など数多くの地域が積極姿勢を示した。しかし、IRと称しても実際に儲がでるのはその中に設けられるカジノ位であり、ギャンブルと言った負のイメージが強く、地元住民の反対の声は強かった。
政府が2021年10月~2022年4月に申請を受け付けたところ、大阪と長崎の2カ所が計画を提出していた。当初参加に意欲を示していた横浜市は、2021年9月に反対派の市長がカジノを含むIRの誘致撤回を宣言した。IRは観光振興の起爆剤と言っても、カジノが無いIRは問題外として、市の事業者公募に応募した2グループの代表社が計画の中止を表明した。一方2023年8月下旬、山下ふ頭の将来的な活用方法を話し合う「山下ふ頭再開発検討委員会」が始まり、ここでカジノの無い観光振興が話し合われるだろう。
また、国から認定されなかった長崎の計画では、年間約670万人の来訪を想定しており、初期投資額は4383億円を見込み、2027年秋ごろの開業を目指す内容だった。長崎県の計画に関し有識者委員会は、出資予定者の一部が資金提供の確約を示す資料を提出していないことやギャンブル依存症対策より利益が優先される恐れがあることへの懸念も示していた。
大阪の計画は 世界最高水準の成長型IRの実現を図ることで、成長産業である観光分野の基幹産業化を図るとともに、大阪・関西の持続的な経済成長のエンジンとして、その成長力及び国際競争力を持続的に強化し、府市は増税をすることなく、新たな財源を確保し、観光や地域経済の振興、財政の改善への貢献を持続的に発現すると高らかに歌っている。しかし大阪万博における理念と実体の乖離を見ると、正に絵に描いた中身のない餅でしかない。
また、2025年大阪万博の会場予定地でもある夢洲はゴミの焼却灰や土砂で造成された埋め立て地で、地盤沈下や液状化の可能性が指摘されている。このため、府・市は液状化対策に約255億円が必要と見込んでおり、この費用は土地を所有する市が全額を負担するとしており、早くも市の増税は避けられない。
吉村大阪知事は今月4日、府庁内で記者団に、IR事業を予定通り進めていきたいと述べたが、まずは大阪万博の円滑な実行であろう。
2023.12.30(犬賀 大好ー972)