日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

英国の移民流入制限と真のグローバル化

2017年01月28日 09時35分41秒 | 日々雑感
 英国のメイ首相は1月17日、欧州連合(EU)からの離脱に向けた政府の基本方針を明らかにした。”より強く、より公正で、真にグローバルな英国” を基本理念とするとのことだ。メイ首相は、他のEU加盟国との自由貿易をできるだけ続けたいとしつつ、一方では移民の流入を制限すると表明している。しかしながら、EU側は人の移動の自由と単一市場を切り離すことはできないという姿勢を崩さず、双方の立場は大きく隔たったままである。メイ首相は、この難問を如何に解決するのであろうか。

 これまで、世界が突き進んできたグローバル化の流れは、経済の格差等の欠点を露わにした。例えば、国際NGO「オックスファム」は1月16日、2016年に世界で最も裕福な8人の資産の合計が、世界人口のうち、経済的に恵まれない下から半分(約36億人)の資産の合計、約4260億ドル(約48兆6千億円)に匹敵すると発表した。富の集中は極端化しているのだ。

 また、1988年から2011年の間に下位10%の所得は年平均3ドルも増えていないのに、上位1%の所得は182倍になり、格差が広がっていると指摘している。グローバル化の欠点が明らかになってきた現在、何らかの対策が必要なことは言うまでもない。

 さて、科学分野の研究水準は世界でも最高峰といわれる、ケンブリッジ大学はイギリスの名門である。産学連携が盛んで、大学周辺にはベンチャー企業や金融機関が集積し、学園都市を形成している。それを支えていたのが、世界からの資金や有能な人材の流入であり、グローバル化の典型と思われるが、メイ首相の言う “真にグローバルとは” 何を意味するのか是非知りたいところではある。

 移民の流入の制限とグローバル化は直感的には矛盾すると思われるが、日本では矛盾しているとは思われていないようだ。日本は移民政策を拒否しているが、いつの間にか、技能実習制度等により日本で暮らす外国人は、在日韓国、朝鮮人らの特別永住者の他、国への届け出によると90万人余り(15年秋時点)と増加しているそうだ。額面上は移民を否定しているが、実質的には移民政策を実行していると思った方が良いかも知れない。

 日本は、自動車産業を代表に輸出で外貨を稼ぎ、グローバル化の恩恵を受けている。また、TPPは頓挫したが、それまで推進し、これからの日本はグローバル化でしか生き残れないと主張してきた。日本ではグローバル化と移民の制限は矛盾しないのだ。既に自動車産業には大勢の外国人労働者が働いている。彼らのために日本人の雇用が奪われているとの話は聞かれないどころか、少子化に伴う労働者不足を補っている。

 英国は、元々旧植民地のインド、香港、中近東、アフリカなどの出身者が多数居住しているが、 2004 年以降は年平均 24 万人の移民の流入があるそうで、外国人労働者の総数は日本よりはるかに多いだろう。

 また、英国は、かって IT 技術者、医師、看護師などの不足を解消しようと移民規制の緩和に動き、その際、高技能人材は積極的に受け入れるものの、未熟練労働者や不法就労移民の入国は制限する方針だったそうだ。しかし、2000年以降のEU加盟国の増加と共に英国への移民流入は政府の想定外に急増し現在の状況になっているとのことだ。

 EU の基本原則で、EU 加盟国内からの移民に関しては、「人の移動の自由」を保障しているため、このような事態に及んだとして、英国国民はEU離脱を選択したのだ。

 メイ首相は、高技能人材は受け入れ、未熟技能者は拒否するとの考えであろうが、これが真のグローバルと言えるのであろうか。

 一方、我が日本でも、”日本版高度外国人材グリーンカード”が3月より始まるそうだ。これは高技能人材には永住許可の申請に必要な在留期間を5年から3年に短縮する等、人材確保のための施策だ。世界は優秀な人材を求めたがっている。

 恐らく、英国でも日本と同様に、良いとこどりの政策が行われるのであろうが、真にグローバル化と胸を張れるであろうか。2017.01.28(犬賀 大好-307)

防衛省の研究助成を考える

2017年01月25日 09時30分13秒 | 日々雑感
 防衛省は、大学、独立行政法人の研究機関や企業等における独創的で、将来有望な研究を育成するために、安全保障技術研究推進制度を実施している。

 28年度新規採用テーマの例として、”海棲生物の高速泳動に倣う水中移動体の高速化バブルコーティング” がある。これは水中移動体の摩擦抵抗の低減を目指すものである。例えばタンカーでは、船にかかる全抵抗のうち摩擦抵抗が約7割を占めているそうだ。近年の原油価格高騰により、船舶の省エネルギー化が求められており、水中でも空気層を保持することを可能とする塗膜を表層に形成する新しい技術の開発を目的にしている。実現されれば産業界には大いに役立つ技術である。

 この研究テーマは、兵器とは全く関係ない船舶の効率的走行のように思われ、なぜ防衛省がこんなところに資金を出すのか不思議な気もするが、即潜水艦の高性能化に資すると分かれば納得がいく。このように、ほとんどの技術はその使われ方により、兵器になったり民生用になったりする。

 2017年度の防衛省予算案に、大学などの研究機関を対象にした研究費制度の費用として、概算要求通り、110億円が盛り込まれた。15年度が3億円、16年度が6億円であったことを考えると、異常と言える伸びだ。自民党の国防部会が科学技術の促進が技術的な優位につながる、とし大幅増額を要求していたのに、応えたのだ。

 一方、国の厳しい財政状態を背景に大学への運営費交付金は16 年度の国立大学等の法人化以降、27 年度までほぼ毎年度減少し、約1500億円削減されてしまったそうだ。28 年度の国立大学法人運営費交付金は、国立 86 大学・4研究機構(90 法人)に総額1兆 945 億円であるので、ほぼ7%減少したことになる。教職員の人件費や基礎的な教育研究環境の整備費は、運営費交付金でなければ確保できず、大学における任期付き教員と称する派遣社員化や研究費の削減となって現れているようだ。

 大学の研究費を削減する一方で、防衛省の研究補助金を増すとは、あからさまな軍事研究への誘導だ。これに対する対策は、各大学によって異なる。日本学術会議でも軍事と学術を巡り議論が続いているが、テーマ内容で区別するのは土台無理であり、恐らく研究者個人に ”モラルを守れ” 程度の抽象的なガイドラインを設ける程度が結論となろう。

 一方では、技術の進歩は著しく、民生品の性能が向上し軍需品の差がどんどん無くなっている。代表的な巡航ミサイルであるトマホークは、設定された目標に向かって地形を判別しつつ超低空飛行で突っ込む誘導ミサイルである。このミサイルにソニー製の民生用のテレビカメラが使用されていることが、一時期話題になった。テレビカメラは誰でも容易に手に入れることが可能だ。その使用目的まで制限して販売することは不可能だ。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が新たに開発した高さ9メートル50センチほどの世界最小クラスのミニロケットは、今年1月15日打ち上げに失敗したが、コストを抑えるため家電製品などに使われるものと同じ民生用の電子部品が使用され、また地上との通信用機器にも使われていたとのことだ。こうした民生用の部品使用が失敗に関係しているかどうか不明ではあるが、何度かの試行錯誤を繰り返せば、この技術もいづれは確立される。今後民生用部品がどんどん増え小型衛星の打ち上げが安価になれば、災害予想等で大いに社会に役立つ。この技術は当然兵器にも適用される筈である。

 技術は ”両刃の剣” である。民需用が軍需用に適用されるのは、止められない。研究者は、少しでも多くの研究資金が必要であるが、個人的には兵器の開発などしたくはない筈だ。テーマが民需用であれば心のわだかまりは低減する。この感覚麻痺に政府の狙いはあるのだろう。
2017.01.25(犬賀 大好-306)

トランプ新大統領の対ロシア政策

2017年01月21日 09時48分51秒 | 日々雑感
 本日(21日)早朝、トランプ新大統領の就任演説が行われた。しかし、これまでの大統領のように世界に向けた格調高いものではなく、選挙戦におけると同様な国内向けの演説であった。これを切っ掛けに世界は大きく変わると予感させもした。

 さて、昨年11月8日の大統領選において、民主党の中枢組織などがサイバー攻撃されたのはロシアが関係していたと、米国中央情報局(CIA)等は結論付けたとの報道があった。これを受けて、オバマ大統領は29日、米駐在のロシア外交官ら35人を国外退去処分にするとの報復措置を発表した。

 これに対し、プーチン大統領はロシア側のサイバー攻撃疑惑を否定するとともに、報復措置をしないと発表した。まさに大人の対応であると感心させられたが、国際政治はそんなに単純ではなさそうだ。

 通常ロシアは過剰なほど反応するが、今回は対抗措置を控えている。これは、米国新大統領のトランプ氏が米情報機関による見方を一蹴していることが一因と思われる。

 しかし、今月11日に行われた記者会見で、大統領選中に民主党本部のメールサーバーなどがハッキングされたのは、ロシアによるものだと公的に初めて認めた。それまで頑として認めてこなかったロシアの介入を認めたのは、情報機関のトップがトランプ・タワーを訪れ、2時間に渡ってロシアのサイバー攻撃に関する説明を行った結果のようである。しかし、トランプ氏が本当に確信したのかどうかは、不明である。

 そもそもロシアはこれ以前から大規模なサイバー攻撃を繰り返してきたようであるが、情報通信技術の総本山の米国情報機関でさえ、なぜ防ぐことが出来なかった不思議である。今回の選挙ではサイバー攻撃が無くても結果は変わらなかったと言われているが、選挙結果を左右するようなことがあれば、民主主義の破壊であり、恐ろしい事態が予想される。ある意味、核兵器攻撃に匹敵する。

 トランプ氏の次期大統領当選を祝して、プーチン氏は電報で、共に露米関係を改善し世界の安全保障問題に取り組んでいこうという歓迎のメッセージを送ったそうだ。そもそもトランプ氏がプーチン氏と仲が良いのは、トランプ氏の事業がロシアと深く結びついているためと勘繰られる。不動産事業などを通じてロシア政財界の要人と昔から付き合いがあったとされるが、ロシアとの間に何らかのつながりが存在するのかは目下のところ不明のようだ。

 さて、迷走していたトランプ大統領の国務長官選びが、やっと決着したようだ。米石油大手エクソンモービルのティラーソン元最高経営責任者(CEO)がトランプ政権の外交を担うことになったとのことだ。

 ティラーソン氏は上場する世界最大級の石油メジャーで10年にわたりCEOを務めてきた。プーチン大統領と親密な仲であることも知られており、ロシアで着々とエクソンの権益を拡大してきたそうだ。従って、ロシア絡みの経験は豊富で、ロシアと太いパイプを持つそうだ。

 ティラーソン氏は2011年、ロシアの国営石油会社ロスネフチと歴史的な合弁事業の合意にこぎつけた。しかし、その合意は、2014年に始まった米政府の対ロ制裁の影響で停止に追い込まれた。ティラーソン氏とトランプ氏の関係は不明であるが、トランプ氏は対ソ制裁の解除を匂わせており、ティラーソン氏の新国務長官就任とも関係があるものと勘繰られる。

 トランプ氏は経済封鎖解除と引き換えに核兵器削減を進めるとの大義名分を掲げているが、どうもトランプ氏の対ロ政策は余りにもビジネスファーストを感ずる。ロシアと米国が経済を通して交流が深まり、仲良くできるに越したことは無いが、地球資源の独占が目的であるような気がしてならない。2017.01.21(犬賀 大好-305)

オリンピック開催費用の削減のためIOCは努力を

2017年01月18日 09時29分42秒 | 日々雑感
 8000億円で開催できるとして手を挙げ、開催が決定した東京オリンピック・パラリンピックは、一時期2兆円~3兆円要するのではないかと心配させた。昨年末になって、ようやく4者協議が開催され、組織委員会が大会全体の総費用が1.6兆円~1.8兆円となる試算を発表した。開催が決定してから、3年以上経つが、まだなお推測部分が多く気休めの数値の気がする。実行段階になると予算をオーバーするのが日本の常識であるので、恐らく簡単に2兆円を超えると予想される。 

 東京大会の次の2024年の五輪開催地は、今年の9月、ペルーのリマで開催予定の第130次国際オリンピック委員会(IOC)総会で決定するそうだ。当初は26に及ぶ都市が立候補を検討していたが、次々と撤退した。その理由の多くが巨額の開催費用が必要とのことで、地元住民の反対によって立候補を断念した都市も少なくないとのことである。

 開催する金があれば住民サービスの為に使えとのことであろう。当初は、モロッコのカサブランカ、インドのニュデリー等も開催の意志を示し、そこでの開催に大きな期待を抱いていたが、途中で断念してしまった。そして最終的に立候補しているのはフランスのパリ、ハンガリーのブダペスト、アメリカのロサンゼルスの3都市だそうだ。

 リオデジャネイロの五輪が南米初ということで決まったように、ブタペストもハンガリー初であり、個人的には大いに期待している。IOCも多彩な都市での開催を望んでいるようであるが、経済面の課題があり住民の反対も根強くあるといわれ、見通しは暗い。

 ブタペストを除けば、パリとロサンゼルスとなり、いずれも3回目になる。つまり五輪開催が可能で立候補できるのは、経済的に余裕のある限られた都市になってしまうのだ。ともあれ、この流れでは今後の五輪は毎度お馴染みの都市で何度も行われる大会になってしまうわけだ。

 それを避けるために、開催費用を低く抑えることが今後の優先課題になっており、IOCも開催都市には約15億ドル(約1740億円)の支援金も準備したり、既存施設の活用や分散開催などを本格的に推奨するなど努力はしているようだ。

 さて、過去の五輪開催費用はどれくらいかかっていたのであろうか。各種発表されているが、ばらつきも多い。インフラ整備等に要した費用を五輪開催費用に含めるか等、考え方によって大幅な開きが出てしまうのであろう。ロンドン五輪(2012年開催)は、100億ドル~150億ドルであり、リオ五輪は(2016年開催)50億ドル~120億ドルと、言われている。1ドル100円で換算すれば、100億円は1兆円となるので、1兆円程度の費用がかかってしまうのであろう。

 ”オリンピックは参加することに意義がある” の精神からすれば、IOCの言うように、各大陸での多彩な都市での開催が理想的であろう。そこで経費削減のためにIOCは更なる努力をするべきだろう。

 例えば、参加種目の制限である。ほとんどのスポーツ種目には、オリンピックの他に世界選手権とかワールドカップがあり、その違いが問われている。ゴルフやテニスなど、毎週、毎月のように世界の選手が参加する試合が行われているのに、わざわざオリンピックで行う必要は無いであろう。

 また、オリンピックは国を代表して試合に臨む名誉のためとの大義の下、賞金は出ない。名誉は腹の足しにならないと、賞金の出ないオリンピックに、何か理屈をつけて参加しないトップ選手もいる位だ。一層のこと、アマチュア選手に限る等の、本来の姿に戻すべきであろう。また、サッカーのように年齢制限を設ける等、オリンピックならではの工夫も必要だ。

 また、競技場の広さ、あるいは観客席の数を最小限に制限すべきだ。会場が大きく、大勢の観衆を動員した方が、選手の励みにもなり、盛り上がることは間違いないであろう。世界新記録等は世界選手権やワールドカップに任せておけばよい。記録より、記憶に残る競技に徹底すべきであろう。

 IOCは、各種目の代表の国際連盟等の意見を聞き過ぎているのではないか。各団体はアスリートファーストとばかり、贅沢を押し付けてくる。もっとリーダシップを発揮し、経費削減のため独自の考えを前面に押し出すべきだ。2017.01.18(犬賀 大好-304)

米経済とトランプ新大統領の評価

2017年01月14日 13時31分35秒 | 日々雑感
 2016年、米国経済は順調な回復を続けており、失業率は約9年ぶりの水準に回復し、物価上昇率も、連邦準備制度理事会(FRB)が重視する指標は年1.4%まで回復したようだ。トランプ次期米大統領の活躍を待たなくても、米経済は好調のようである。

 例えば、2016年の米国の新車販売台数は、2年連続で過去最高を更新したとのことだ。低金利政策で自動車ローンの金利低下に加え、ガソリン価格が低下したことが原因とのことである。低金利政策の影響は住宅ローンの金利低下にも現れ、着工件数も堅調のようである。

 2008年9月に起きたリーマンショックでは、サブプライムローンが有名になった。これは低所得者向けの住宅ローンであったが、今回は自動車ローンの先行きが危ぶまれているらしい。すなわち、米国の自動車販売台数が伸びたとはいえ、現在の米自動車ローン残高は過去最高のおよそ100兆円に達しているそうだ。その内およそ35~40兆円がサブプライムな自動車ローンとのことだ。

 米国はサブプライム住宅ローンで痛い目にあっている筈であるのに、同じ過ちを犯そうとしている。自動車購入者が住宅購入者と別の人間か、あるいは貸し出す方が手の込んだ旨い細工をしているのかも知れないが、儲けを当て込んだローンである限り、住宅ローンと ”同じ穴のむじな”であることには間違いないだろう。

 今年は買い替え需要が一巡し、金利上昇も予想されることから、米国の新車販売は減少に転ずると予想され、この問題が顕在化するかも知れない。

 このような懸念材料を抱えながらも、全体として、米経済は順調である。これを受けて、昨年12月連邦公開市場委員会(FOMC)は、一年ぶりの0.25%の利上げを全会一致で決定した。

 目下最大の関心事はトランプ次期大統領が掲げる景気刺激策だ。トランプ氏は大規模な減税に加え、10年間で1兆ドルのインフラ投資を公約する。米経済は好調な上、更にこの公約が実施されるとインフレになるとの懸念で、FRBは今回、来年の利上げペースをの見通しをこれまでの年2回より年3回に引き上げた。

 トランプ大統領は ”雇用第1主義” を掲げ、雇用確保に力を入れている。そのため、メキシコに工場を移転しようとする企業に対しては、輸入関税を課すと、ツイッターで脅している。ツイッターは、公式の意見ではなくその場の思い付き発言に過ぎないと思われるが、企業は敏感に反応している。

 昨年11月、空調機器大手、キャリア社は1400人の雇用を3年かけてインディアナ州からメキシコに移転する計画を発表していたが、トランプ氏の批判を受けて撤回した。フォード・モーターは3日、メキシコに16億ドル(約1900億円)投じて建設予定の新工場を取りやめると発表。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は8日、ミシガン州とオハイオ州の2工場に10億ドルを投じて設備の最新化を図ると発表した、等である。

 関税の変更は、北米自由貿易協定(NAFTA)全体にかかわる問題で、議会がすんなり了承するか疑問であるが、ツイッター効果は抜群である。こんなに簡単に予定変更しても良いのかと、他人事ながら心配する。

 一方、米国全体では完全雇用状態らしい。米国に工場を戻した場合、そこで働く労働者は白人優先と思われが、経営者側は低賃金で済む外国人労働者の方を選択するであろう。また、移民制限を実施した場合、更なる労働力不足となり、賃金高騰を招き、競争力が低下する懸念がある、等色々心配しだすと何かをなすことが困難になろう。

 所謂知識階級はこのような理屈を並べ、有効な手は打てないと、白人労働者階級への手当に手をこまねいていたのかも知れない。ラストベルトにおける白人労働者は理屈はどうでもよく、過去の繁栄が欲しいだけだ。この意味で、トランプ大統領の手腕が試される訳だが、トランプ氏が言うほど単純では無い。これまで以上に称賛されるか、一気に人気が落ちるか、大した時間をかけずに決着するのではないかと思う。
2017.01.14(犬賀 大好-303)