日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

福島第1原発の廃炉作業は?

2017年02月25日 09時29分24秒 | 日々雑感
 東北大震災に伴う福島第1原子力発電所の1号機から3号機における炉心融解事故の後始末は 想像以上に困難であることがますます明らかになってきた。福島第1原発の4つの原子炉の内、1号機から3号機は炉心が融解しており、炉心の内部がどのような状態になっているか、未だに不明のまま、廃炉の見通しも立っていない。

 2013年、福島第一原発の廃炉作業に必要な技術の研究開発を目的として、技術研究組合である国際廃炉研究開発機構(IRID)が設立された。構成メンバーは、日本原子力研究開発機構、産業技術総合研究所や原発プラント・メーカーの他、電力会社である。日本の総力を挙げて廃炉作業に臨む組織のように見える。しかし、国際云々と謳ってはいるが日本が主体であり、その後の動きを見ると、寄せ集めの感は免れない。

 さて、正常に運転停止した場合の廃炉であっても、日本では経験が無く大変な作業が予想されるのに、未だに原子炉内部の様子が分かっていない。電源停止による炉心融解の為、原子炉内部は放射線量が高く、人間による直接的な調査が出来ないのが最大の原因であろう。

 このための一つの方法として、宇宙線が大気に衝突した際に生じる ”ミュー粒子” を利用し、レントゲン写真のように建屋を透視して溶け落ちた核燃料を捜す新しい技術により、1号機では原子炉の中に核燃料が見当たらないことを突き止めた。すなわち1号機の原子炉格納容器内で核燃料は大部分が格納容器内に落下し、冷却水に浸かっているらしいと分かったが、それ以上のことは分からない。

 廃炉作業の前段階で核燃料を取り出すことが必要となるが、どのような状態になっているかが分からなければ、取り出し方も分からない。このような状況ではロボット的なものが必要不可欠になる。ロボット的と表現したが、どんな悪環境の中でも自在に動き回り、必要な情報を集め、かつ物を移動することが出来るとの何か理想的なものを表現しているだけで、具体的な形が分かっている訳ではない。鉄腕アトムが理想的なロボットに近いが、アトムのように大空を自由に動き回る能力ではなく、僅かな隙間を見つけて自在に動き回る能力が必要となる。

 東京電力は1月26日、2号機の原子炉格納容器の本格調査を始め、原子炉直下で黒い塊や強い放射線量を確認した。報道でははっきりしないが、人間が棒の先にカメラや線量測定器を付け容器内に押し込んで測定した結果であるようだ。このような手法では棒の届く範囲に限られ、また曲がった先での観測は無理だ。

 そこで次には自走ロボットが必要になる。自走ロボットの理想形は、電池等のエネルギー源を搭載し、各種観測機器を有し、障害物を自分で判断して回避し、しかも小さい障害物であれば把持し移動する能力を有する移動ロボットであろう。しかし現在の技術の総力を挙げても当分の間出来そうにない。

 東電は2月16日、IRID開発の調査ロボット ”サソリ” を格納容器内部に入れた。このロボットは、各種の観測機器を有しているが、レールの上をクローラと呼ばれるキャタピラーで動き、電源ケーブル等のひも付きロボットであり、理想形とは程遠いが、最初のロボットとしては仕方がない。

 しかし、途中左側のベルトの動きが鈍くなり目標の原子炉の真下まで進めず、また後戻りも出来なくなったため、回収を断念し、今後の調査の支障にならないよう、レールの脇に移動させたうえでケーブルを切断し、放置する措置がとられたそうだ。

 原因はロボットの駆動輪に異物が入り込んで動かなくなったと判断しているようであるが、本当であれば初歩的なミスである。本来であれば、様々な環境の中で試験し、滑らかに動くように試行錯誤している筈だ。

 IRIDは、日本の最高の知能を集めた組織の筈だが、開発体制にも懸念が生ずる。”船頭多くして船山に登る”状態になっていなければよいが。それとも単に人数合わせのために集められた凡才集団か。

 東電はロボットが集めたデータを分析するとともに、今後の調査計画を検討するとしているが、新たな設計には半年を要する。また、1号機、3号機の核燃料は水中に没している可能性が高く、更に水中用ロボットの開発が必要となるかも知れない。

 東電作成の中長期ロードマップ(2015年6月作成)には、燃料の取り出し方法の確定時期は、2018年度上半期と記されている。まだ、核燃料の在りかも分からない状況では時間的な余裕があるとは言えない。IRIDによると、福島第一原発1~3号機の格納容器調査にかかる事業費は、14~17年度で計約70億円と見込んでいるが、こんなものでは済まないであろう。2017.02.25(犬賀 大好-315)

豊洲移転への今後の課題

2017年02月22日 09時49分50秒 | 日々雑感
 東京都の築地市場から豊洲市場の移転をめぐり、1月14日に開催された専門家会議において、それまで定期的に行ってきた地下水モニタリング調査の9回目の結果が公表されたが、予想を超える悪い結果であり、豊洲市場の今後の扱いに関して一層不透明になった。

 これまで検出されないことが無いシアンが初めて検出され、調査地点のうち72地点で基準を上回るベンゼン、ヒ素、シアンのいずれかが検出されたのである。その検出量も、ベンゼンは最大で環境基準の79倍、ヒ素は最大で環境基準の3.8倍、検出されないことが基準のシアンは最大で1リットル当たり1.2ミリグラム検出であった、との公表内容であった。

 そもそも、今回の9回目の検査は一連の検査の最後の検査であり、安全であることを最終確認するためとの位置づけであった。ここで安全であることが確認されれば、これまで延期されてきた移転の時期もかなり明確になり、市場関係者も一安心となる筈であった。

 専門家会議では、”なぜこうなったのか、原因究明が必要”、”地下水の採取方法などにミスがあったことも考えられる”として、引き続き複数の検査機関でチェックするよう都に求め、都もその方針のようだ。今回の検査を行った企業はそれまでの検査機関とは別のようであり、ここにおいても都の行政の不透明さが窺い知れる。

 朝日新聞の世論調査(2月21日報道)によれば、豊洲市場の移転中止が43%で、目指すべきの29%を上回ったとのことであるが、筆者は余程のことが無い限り、目指すべきと考える。これまでに多額の投資をしてきたこと、また今後の安全対策次第で都民の安心・安全が得られると思うからである。

 これまで、土地の汚染に関しては専門委員会が扱ってきた。この委員会は予定地の土壌汚染調査を行ったうえで、生鮮食料品を扱う豊洲新市場において、どのような対策を行えば、健康への影響が出ないようにできるのか、また、生鮮食料品への影響を防止できるのかを科学的に検証し、食の安全・安心に十分配慮した土壌汚染対策を提言としてとりまとめてきた。

 しかし、専門委員会で健康への影響が出ないとする指標は、厚生労働省が許容一日摂取量(ADI:人が毎日一生涯摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量)より決めている値を基に、環境省が環境基準法で決めた基準値であろう。この基準値は毎日摂取されることを前提として決めた値であり、毎日豊洲経由の食材を食べるわけでもないので、基準値を多少超えたところで、そんなに問題になることは無いわけだ。

 また、化学物質などの環境リスク評価で知られる産業技術総合研究所名誉フェローの中西準子氏は、土壌汚染が存在すること自体が問題ではなく、土壌に含まれている有害物質が人の体に入る経路があるのかどうか、入ったとしてどれくらいの量なのかということが問題である、と指摘している。

 すなわち、いくら土壌汚染があったとしても、それが人の口には入らなければ問題ではなく、それらについて議論しないまま、地下水からベンゼンやヒ素が検出されたと大騒ぎしていること自体が大きな問題だと言っている。全く同感である。

 豊洲移転を全うするためには都民の安心・安全を得ることが最低限必要である。このためには次の二つのなすべきことがある。

 一つは、土壌に含まれている有害物質が人の体に入る経路の遮断、すなわち地下水は一切使用しないことや空気は強制循環の徹底、等を図るとともに、それでも人体に入ったとしてどれくらいの量なのかを明確にすることである。築地市場ではまぐろを床に直接おいて”せり”を行っていたが、豊洲では床にすのこを敷き、そこに並べる等の工夫をする必要が出てくるかも知れない。この件は、専門委員会の活躍に期待したい。

 それにも増して重要なのは、都の信用回復である。建屋の下に盛り土をする件に関して、いつの間にか盛り土の代わりに地下室が設けられていた。誰が何の目的で設けたか、未だ明らかになっていない。近く100条委員会の開催が決まったとのことであるが、信用回復に役立つであろうか。都庁に蔓延る無責任体質が根源と思われるが、小池都知事の手腕にも期待がかかる。2017.02.22(犬賀 大好-314)

神の存在と論理的思考

2017年02月18日 09時39分53秒 | 日々雑感
 トランプ新大統領の登場で、米国社会の分断が話題になっているが、その分断は色々な面に現れている。その一つが保守層と知識層の分断であるが、米国民の半数近くが未だにダーウィンの進化論を信じていないと聞くと、月に人類を送り込んだのは同じ米国人かと、思わず耳を疑ってしまう。

 しかし、ダーウィンの進化論を信じないからと言って、現在の最新技術を否定する訳ではないだろう。すなわち、神の存在を信ずることとインターネット等の使用は少しも矛盾しないのであろう。現実は現実として受け入れ、すべて神様のお陰とすれば良いだけのことである。

 ルネッサンス期における科学の進歩は、神様の存在を肯定した上で神様は一体何を考えているのだろうとの好奇心に基づいていた、と聞いたことがある。未知の領域に対する好奇心があれば、論理的思考と科学の進歩はあるのだ。

 現在科学の進歩は目覚ましいが、その進歩は更に新しい謎を生む。例えば、生命の起源である。旧約聖書ではアダムとイブが人間のご先祖様であると説いている。遺伝子に関する知見が進んだ現在の科学では、原始生命体や共通先祖から古細菌と真正細菌が生まれ、古細菌より真核生物へと進化し、更に人類に進化した、と信じられている。古細菌や真正細菌の存在が確認され、その遺伝子構造が解明され、どのように人間に進化していったかが、ある程度解明されたのだ。

 しかし、原始生命体や共通先祖はどうやって生まれたかは謎のままである。ここで改めて神様を持ち出し、人知の及ばぬ目的でお創りになったと納得すれば一気にことは解決する。しかし神様は何の目的でどうやって作ったかを知りたくなるが好奇心だ。

 また、原始生命体や共通先祖の存在が確認されても、更にその先祖は何だろうかと、そもそも地球の誕生は、宇宙はどうやって出来たのか、ビックバン以前の宇宙はどうであったか、突き詰めて考えていくと、どこかでどうしても神様を持ち出したくなる。この意味で、科学がいくら進歩しても、AIの進歩がいくらあっても、神様はその姿を変えて、いつまでも存在し続けるであろう。

 先端的な科学を追及する人も、神様の存在を信じざるを得ないような現象の不思議さによく遭遇する。そう考えると、先進国であっても、宗教を心底信じている人がいても何ら不思議ではない。問題は神様の存在する深さである。始めから盲目的に神様の存在を信ずるのと、深く考えた末に神の存在を信じざるを得なくなったのでは雲泥の差がある。

 アダムとイブの存在を何も疑わずに信ずる人は、論理的な思考結果よりも、聖書の内容が唯一である。論理的な思考は苦手であり、結果として論理的な思考を神様が邪魔していると言えるかも知れない。

 今回の米国大統領選挙では、大勢の白人の福音派キリスト教徒がトランプ氏に投票し、極めて重要な役割を担ったとのことだ。米ABCニュースの出口調査によると、白人福音派の81%がトランプ氏に投票しているのだそうだ。福音派と言えば、ダーウィンの進化論を否定し、アダムとイブを人類の先祖とする人々であろう。これが、米国における、保守層と知識層の分断の顕著な例であろう。

 トランプ米新大統領は、大統領令により、イスラム7ヵ国からの米国への入国を禁止した。テロを防止するためだとの理由である。このこと自体は非常に分かり易い主張だが、単純な発想だ。

 このことからも、トランプ氏はテロ発生の理由を深く論理的に考えていないと言える。これまでテロを起こした人にイスラム系の人が多かっただけの理由で入国を禁止して、テロ撲滅できると考えているのだろうか。トランプ氏はキリスト教徒に間違いないだろうが宗派は不明である。氏の単純さが単に世間受けのためか、宗教的なものから来るのか分からないが、前者であることを願うばかりである。そうであれば、根が深くないからである。

 米国始め世界は移民排斥運動が高まりを見せているが、米国やヨーロッパ各国が難民受け入れを拒否すると、世界は一層不安定となり、テロの脅威は増すだろう。トランプ大統領はテロの根源は貧困にあることを認識し、貧しさの原因はどこにあるか、自国第一主義はテロを生むことを論理的に自覚すべきであろう。2017.02.18(犬賀 大好-313)

都の参考人招致と都議の責任

2017年02月15日 09時01分12秒 | 日々雑感
 2011年に東京都が豊洲市場の土地を東京ガス株式会社から取得したことをめぐり、都内の住民たちは”汚染の事実を知りながら高額な代金を支払ったのは違法だ”として、石原元都知事に購入代金578億円余りを支払わせるよう訴えを起こしている。

 東京都は2001年に築地から豊洲への移転を決定したが、所有者の東京ガスは同年土地に汚染が残ることを明らかにし、2007年に開かれた専門家会議でも基準値の4万3000倍ものベンゼンや860倍ものシアン化合物が測定されたことを明らかにしていた。それにもかかわらず2011年に都は土地代金を払ってしまった。汚染を知りながら購入したのは犯罪である。これが、原告の主張である。

 築地市場の移転先はなぜ豊洲でなければいけなかったのか?、都はなぜ汚染を知りながらしかも瑕疵担保の責任を放棄してまで買収したのか?、豊洲新市場の建屋の建設費用は妥当であったか?、都が盛り土は完了したとして支払ったであろう汚染対策費用はどこへ消えたのか?、豊洲移転絡みの疑問がいろいろ浮かび上がる。

 2月7日、自民党が主導権を握る都議会の豊洲市場移転問題特別委員会は、石原元都知事、土地取得交渉を担当した浜渦元副知事、地下水のモニタリング調査で採水や分析を行った業者等を参考人招致し、土地取得の経緯を明らかにすることを決めた。

 都議会がようやく重い腰を挙げたわけであるが、これも先日行われた千代田区長選挙の影響である。この選挙において、自民党都連の推薦した候補が小池氏の推薦する候補に大差で負け、尻に火が付いたからである。

 この参考人招致で土地取得等の詳細が明らかになるであろうか。石原氏は喜んで参考人として出頭すると表明しているが、恐らく責任の所在は藪の中のままで終わるであろう。都庁に集団無責任体制が出来上がっていたと思われるからである。長である石原氏の責任が一番大きいが、都議会議員の無責任さにも呆れるばかりである。この夏の都議選での形勢が不利になると見るや、慌てて参考人招致を取りまとめるとは、自己ファースト以外の何物でもない。

 そもそも、東京ガスは豊洲の地で1956年からの約32年間、都市ガスの製造・供給を行っていた。当時の工場では、石炭を蒸し焼きにして石炭ガスを取り出し都市ガスとしていたが、その精製過程において、触媒としてヒ素化合物を使用していた。また、ベンゼン、シアン化合物が副産物として生成されていた。その後、都市ガスは天然ガスが主力になったため、東京ガスは工場撤廃を決定した。

 東京ガスは、当初から土地の汚染がひどいため、工場跡地では食べ物を扱うにはふさわしくないと認識し、ショッピングモールやマンションのための再開発を考えていたようである。

 一方東京都は、築地市場の老朽化に伴って移転先を探しており、豊洲の工場跡地が築地市場から近いこともあって魅力的に感じていたに違いない。売るのを渋る東京ガスを説得するために、瑕疵担保の責任の必要はないと迫ったに違いない。汚染の問題は現代の技術で容易に克服できると高を括っていたのであろう。

 大雑把に言って、こんなところが土地取得の経緯であろう。一連の手続きの中で不明朗な点があったかも知れないが、それを正すのが都議会の議員の役目であった筈だ。当時石原氏の権力は絶大で都の役人は何も言えなかったのであろう。しかし、議員は何を言っても首になる心配はない筈だ。何も言わなかったのは怠慢か、不勉強か、何かの利権のおこぼれを頂戴していたのであろう。石原氏の参考人招致はあまり期待できないが、せめて都議の責任を明らかにしてもらいたいものだ。

 さて、豊洲新市場の費用は全体で、2011年は3926億円であったが、2015年3月の時点で5884億円と膨らんだ。建物の建設費は2752億円となり、当初の予定990億円から急膨張した。大震災後の材料や人件費の高騰があったためと説明されているが、それだけとは到底思われない。都議の皆様は納得していたのだろうか。

 移転の経緯に関しては大よそ想像がつく。万が一石原氏の責任が明確になったとしても、石原氏がどんなに資産持ちであっても、578億円の賠償金は払えないだろうし、またそうはならないだろう。それより、移転費用の高騰等の原因を突き止めてもらいたいものだ。豊洲移転の件では頭の黒いネズミが沢山群がっていることを、小池知事も示唆している。

 さて、参考人招致は決まったが、その時期、運営法に関しては、15日現在も決まっていないとのことだ。参考人招致で頭の黒い都議が明らかになるのを恐れているようにも見える。2017.02.15(犬賀 大好-312)

日本の良いとこ取りの移民政策

2017年02月11日 14時57分39秒 | 日々雑感
 トランプ新大統領の難民入国拒否の大統領令を巡って、米国内ばかりでなく、世界も巻き込み大騒ぎである。主要各国政府はトランプ氏の移民へのこの対応を人道上の問題として非難しているが、我が日本の政府はだんまりである。これはトランプ氏への遠慮ではなく、これまで日本は難民を拒絶してきた関係上、何も言えないのだ。 

 法務省は、2015年難民認定を申請した外国人は過去最多の1万901人に上ったが、そのうち実際に難民として認定した人はわずか28人だったことを2月10日速報値として明らかにしている。これでは、難民入国拒否と何ら変わらない。

 今なお混乱の続くシリアから、これまで約480万人が難民として国外へ脱出していると言われ、主要国のこれまでのシリア難民受け入れは、米国が約6万人を始めとして万単位を受け入れている。国土の狭いスイスでさえ6700人とのことである。

 一方我が日本は、2011年以降、63人のシリア人が難民認定を申請しているが、認めたのは3人だけとのことだ。このままでは、先進国の仲間に入れてもらえないと、難民受け入れの代わりに、シリア、イラクの難民と国内避難民向けに約1千億円を支援すると表明している。これらの国の国内事情は混乱しているが、この金が果たして有効に使用されるのであろうか。はなはだ疑問である。

 と言っても、日本は、これまで特定国の難民を受け入れたことがある。1万人超えるインドシナ難民(1970年代後半~2005年)や123人のミャンマー難民(2010年~)である。しかし、彼らの対応に苦慮したためか、これ以降一般難民の受け入れには門戸を閉ざしている。

 世界には難民があふれており、受け入れの弊害が顕著になってきたため、ヨーロッパ各国では移民を拒絶する政党が勢いを増している。これらの政党は移民排斥と共に、自国第1主義を掲げ、保護主義を目指しているため、グローバル化を目指す日本にとって頭の痛い難問となっている。また、これらの政党は日本の移民政策を称賛しているようであり、日本にとって何とも皮肉な話である。すなわち、日本の移民政策は、良質な移民のみを選択して受け入れようとしているからである。

 これまで難民問題を金で解決しようとしていた日本政府は、先進国に仲間入りするために、今年から5年間で、シリア難民の留学生とその家族を計300人規模で受け入れる方針と決めた(2月3日報道)ようである。微々たるものであるが一歩前進であろう。

 法務省の発表によると、平成26年末現在における中長期在留者数は約176万人、特別永住者数は約36万人で、これらを合わせ登録された在留外国人数は約212万人となり、前年末に比べ,2.7%増加したとのことである。一方平成28年1月1日現在の不法残留者総数は約6万人だそうで、それでも現在の日本は人手不足状態であり、更に少子化時代を迎え、一層の人材難が懸念される。

 これを解決しようと、政府は、難民ではなく品質の高い外国人労働者を向かえようと努力している。その一つが、”日本版高度外国人材グリーンカード” であり、3月より始まる。グリーンカードとは永住権を約束するもので、得やすくするため2012年にポイント制を導入した。例えば、研究者の博士号取得者は30点のポイントが与えられる等である。今回は永住許可の申請に必要な在留期間を5年から3年に短縮したそうだ。更にポイントが80点以上の対象者は最短1年とするとのことだ。昨年10月末までに高度外国人材に認定されたのは6298人。20年末までに1万人認定する予定だそうだ。

 外国人の受け入の代表例が技能実習制度だ。2014年の外国人研修生・技能実習生数は約18万人で、更に増やす予定だ。そのために滞在期間を3年から5年に延ばし落ち着いて仕事に取り組めるように改善した。対象職種は70種を超える。昨年末には、技能実習制度の対象職種への介護職種の追加を行うこととした。これまで経済連携協定によるインドネシア、フィリピン、ベトナムからの受入れがあったが、労多くして益少なしとのことで結果的に帰国する人が大半であったそうだ。現状日本国内では介護職のなり手が不足しており、規制を緩和することにより外国人介護職を増し、国内の不足を補おうとするわけである。

 米国始め世界は移民排斥運動が高まりを見せているが、日本の今の状態では世界のこの風潮にくみすることになる。米国やヨーロッパ各国が難民受け入れを拒否すると、世界は一層不安定となり、テロの脅威は増すだろう。日本も良いとこ取りばかりでなく、人道的な立場から難民を迎え入れる何らかの算段が必要となるであろう。2017.02.11(犬賀 大好-311)