新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞で、最低限の食料の入手さえ困難になる人が今年は世界で倍増し、2億6500万人に上る可能性があると、国連世界食糧画(WFP)が4月21日発表した。
昨年は天候の異常や経済危機のため1億3500万人が食糧危機に陥っていたとのことであるが、今年はコロナウイルスの為新たに日本の人口に相当する人々が食料入手困難者になると言うから恐ろしい。現在日本ではコロナウイルス騒動の最中でもスーパーには食料が十分あるので買いだめをしないようにとの政府のお達しもあり、食糧危機などは頭の片隅にもない。
しかし日本の食料自給率は40%以下である。輸入元の国で不作になってしまったり、戦争などの情勢によって輸入が出来なくなったりすると、途端に食料不足に陥る可能性が高い。世界の食料事情が日本の食糧事情と直結しているのだ。
さて、新型コロナウイルスが問題になり始めていた2月2日、東アフリカのソマリア政府はバッタの大量発生で食糧危機が発生しつつあると国家非常事態を宣言した。
当時、バッタの被害は東アフリカ一帯に広がり、国連の食糧農業機関(FAO)もソマリアでは25年、ケニアでは70年に一度の危機として緊急事態を宣言した。この地方では今年雨が異常に多かったことから植物が繁茂し、バッタの急速な大繁殖を招いたとのことだ。
このバッタは風に乗って1日に100〜200キロも移動しながら、行く先々で農作物や果物を食い荒らすそうだ。1平方キロメートルに集まる比較的小さな群でも、1日当りで人間3万5000人とほぼ同じ量を食べ尽くすと言うから恐ろし食欲だ。
2月にはパキスタンとインド北西部に到達、間もなく中国国境を侵犯する勢いを見せているようだ。中国はコロナ騒動に引き続きバッタ騒動に悩まされそうであるが、中国のこと人畜への被害は二の次として大量の殺虫剤を空中散布して防ぐであろう。
過去に日本でバッタが大量発生した事実は無いようであり、現在中国に迫るバッタも日本には来ないだろうと高を括っているが、日本には莫大な森林資源がある。バッタが杉を食べるか知らないが、万が一やってきて食べるとなるとその被害は甚大になるだろう。
このような野生動物の大発生は、食べ物が豊富にあり、天敵がいないと起こる一種の自然現象であり、歴史的にも多くの例を見ることが出来る。古くは1284年ドイツのハーメルンの町にネズミが大繁殖した時の話として”ハーメルンの笛吹き男”が有名である。
日本でも1949年にドブネズミにより愛媛縣戸島のトウモロコシやサツマイモが全滅したこと等、鼠の大発生は各地で報告される。現在でも都会の飲食街に鼠の多いことは有名で、今回のウイルス騒動で夜間閑散とした街に鼠が走り回っているとの報道もある程である。
生き物にとって豊富な食料の存在と天敵のいないことは天国たる条件だ。バッタにしても鼠にしても天敵は人間だ。人間にとっての天敵は疫病だ。現在最強の疫病が新型コロナウイルスであるが、恐らくその内人間が駆逐するであろう。
しかし、天敵がいなくなっても地球上の食料には限界がある。人間にとって地球が天国であることは、永久に保証された話ではない。2020.04.29(犬賀 大好-595)