日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

豊洲への安心移転は都政の信頼回復が第一歩

2017年03月29日 17時51分23秒 | 日々雑感
 昨年末、豊洲市場敷地内の9回目の地下水モニタリング調査の結果、環境基準値を超える有害物質が検出された。1~8回の調査ではすべて基準以下であり、最終の安全確認調査である筈の9回目で異常値が出てしまった。

 3月19日、地下水モニタリングの再調査結果が公表された。再調査対象の29地点のうち、やはり複数地点で基準を超す有害物質が検出された。濃度は9回目の検査結果と大差ないとのことだ。

 兎も角、8回目までの調査結果と大きく異なることが再確認された訳であるが、都は敷地内の地下水位を一定に保つ管理システムが8回目の調査以降に本格稼働しており、地下水の変動が影響したという見方を示している。恐らくその通りであろう。従って、これらの値は時間がかかるであろうが何れ下がっていくと予想される。

 ここで言う環境基準とは、飲み水として求められる指標で、”人間が70年間、毎日2リットル飲み続けても健康に影響がない濃度”との定義である。環境基準値を超えた有害物質が検出されたといっても、それがそのまま人体に入る訳でない。例え入ったとしても、即害を及ぼす量ではないだろう。しかも土壌汚染対策等に関する専門会議は建物内はアスファルトなどで遮断されており、直接人体に触れることは無いので、安全であると結論づけている。その通りと思うが、都政はすっかり信用を失っており、何を言っても信用されない。

 東京都は、豊洲移転に関しては色々な面でご都合主義や集団無責任体制がまかり通ってきた。例えば、建物の下は盛り土される筈であったが、実際には地下空間になっていた。この件に関しては当時の担当者が何名か処分されたが、真相は不明のままであり、また組織自体が抜本的に改変された訳ではない。今ような状況で、建物内がアスファルトで地下と遮断されているから安全と説明されても、納得できる筈が無い。現体制は、例えひびが入って有害物質が漏れ出てきても公表しないに決まっていると思われている。

 小池知事は安全と安心が確立されたわけでは無いと、2017年3月24日の定例会見で、築地移転に関する自らの判断を避け、「市場のあり方戦略本部」(仮称)を新たに立ち上げることを表明した。中央卸売市場など関係各局が参加し、これまでの専門家会議や東京都のプロジェクトチームなどの議論を集約しながら、移転問題や今後の市場のあり方について集中的に協議すると説明している。

 小池都知事は、結論をこの戦略本部に丸投げしたと思われるが、築地移転の方向は見えてきた。十中八九築地移転の方向で進むであろう。小池都知事も来る7月の都議会議員の選挙の焦点としない意向を表明した。

 豊洲市場への移転をめぐって、東京ガスへの免責を誰が承認したかに関し、都議会の百条委員会も開かれ、用地を保有していた東京ガスとの買収交渉を担った浜渦武生元副知事が証人喚問された。小池知事は ”一つ一つが積み重なり、どこに齟齬(そご)があるか明らかになってくるのではないか” との期待を語っていたが、結局有耶無耶になりそうである。

 瑕疵担保責任を免れたのは、東京ガスにとって大金星であった。この見返りを都は誰が受け取ったか、先の百条委員会では問題にされなかった。また、盛り土費用として計上された資金が一体何に使われたのか、東京都に譲渡後の汚染対策工事の不透明さという問題も当初から指摘されているが、こちらも有耶無耶である。

 石原前都知事は、百条委員会で自らの責任は棚に上げ、現在移転に関し混乱しているのは現都知事の小池氏の不作為と非難しているが、都民の税金の使われ方の監督責任はしっかりと反省して貰わなくてはならない。当然都議の責任も大きい。

 小池都知事は築地移転問題は7月の都議選挙での焦点にならないと表明し、この問題は峠を越えたと考えているようである。豊洲移転に関しては、都民の安心を得無くてはならない。安心を得るための第1歩は、都政の信用回復である。信用回復の第1歩は豊洲移転に使われたお金の納得できる説明である。2017.03.29(犬賀 大好-324)

サウジアラビアの民主化は必要か

2017年03月25日 09時42分50秒 | 日々雑感
 アラブ諸国で最大の経済規模を誇るサウジアラビアのサルマン国王が3月12日、特別機で国賓として来日した。サウジ国王の来日は46年ぶりで、最大約1500人の大訪団が同行したそうだ。宿泊する高級ホテルは客室稼働率が上がり、移動用のハイヤーでも思わぬ ”サウジ特需” が生まれたそうだ。都内の百貨店や高級ブランドも大訪団の消費に期待を寄せていたとのことであるが、結果はどうであったろうか。

 イスラム諸国は概して政情不安定というのに、国王以下要職の面々が大挙して国外に出ても国内の治安は大丈夫かと、テレビでの黒塗り高級ハイヤの長い列を見ながら感じた。世界最大級の原油輸出国サウジアラビアは、政府歳入の7割を賄う原油産出があり、豊富な資金のお蔭で、国王以下大挙して海外に出ても国民は平穏に生活する余裕があるものと見える。

 サウジの統計局が発表した2010年の人口統計は約2700万人であるが、サウジアラビア国籍が約1900万人、外国人労働者が約800万人であり、総人口の約30%が外国人のようだ。この数値から底辺の労働は外国人により支えられていると思われる。サウジアラビア人の大半は豪勢な暮らしをしているいるに違いないが、1900万人全員がそうではないだろう。

 サウジアラビア国民はイスラム教徒が100%であると公表されているが、これは他の宗派や宗教の存在を公式に認めていないという建前によるものだそうだ。広大なアラビア半島には古来から無数の部族が生活しており、定住民だけでなく今なお遊牧民もいるそうだ。また、サウジアラビアは、イスラム教を国教としており、スンニ派が85~90%占めているようであるが、各地に点在する部族には、色々な宗派があるようだ。

 1962年のイギリス映画に ”アラビアのロレンス” という映画があった。オスマントルコからの解放を勝ち取るため、イギリス人のロレンスが各地の部族を集め勝利を得るが、結局各部族の離散により、失意の下に帰国する話であった。今もって、アラビア半島のあちらこちらには、少数部族が生活しており、王族であるサウド家による長年の中央集権化政策・部族解体政策にも関わらずサウジアラビア人という統一民族意識の形成には至っていないそうだ。

 さて、サウジアラビアはサウード家を国王に戴く絶対君主制国家であり、前近代的なイスラム法に基づく法制度や人権侵害に対しては欧米諸国だけでなく、他のイスラム諸国からも抗議が尽きないそうだ。これに対し、自由民主主義の守護・伝道者をもって任じるはずのアメリカ合衆国でさえ抗議や制裁を行なうどころか、友好関係を築いている。この矛盾は、サウジアラビアの批判国に対する石油輸出停止などの報復を恐れているためであり、国交断絶や経済制裁などを発動する先進国は皆無となっているようだ。

 しかし、時代はすこしづつ変わりつつある。最近北米のシェール革命により、米国は世界1の石油産出国になり、サウジアラビア離れが進んであるからである。また、OPEC諸国の内部分裂等により、原油価格が急落し、サウジアラビアの経済が苦境に陥っているとの話である。このため、今回のサルマン国王の訪日も、石油依存脱却を図るため外国からの投資を呼び込む狙いがあるとみられている。

 米国のサウジアラビア離れや外国資本の国内浸透により、今後サウジアラビアの国内事情も急激に変化すると予想される。これまでの、イスラム法に基づく人権政策も変わらざるを得ないだろう。しかし、サウジアラビア国内に米国的民主主義が馴染むかとなると疑問である。

 チュニジアで2010年から2011年にかけて起こったジャスミン革命により独裁政権が倒れて、中東各国の民主化運動のさきがけとなった。しかし、アラブの春からちょうど7年経ち、チュニジアの革命による希望はどこかに消えてしまった。現在の政治的な混乱は2万人以上の若者を海外に流出させた。縁者びいき、派閥主義、保守主義、等が原因とのことであり、恐らくその背景には部族間の対立があるのではないかと思われる。この混乱の解消のためには、ある程度の教育と経済の安定に基づいた民主化が必要であろうが、部族間の対立を乗り越えるためには多大な努力を必要とするだろう。

 サウジアラビアは、外目には政治、経済は安定している。基本的人権が侵されているといって、ここに欧米的な民主主義を導入しようとするのは、一般国民の幸せになるであろうか。2017.03.25(犬賀 大好-323)

ポスト真実では自信をもってウソを語る

2017年03月22日 09時27分58秒 | 日々雑感
 ポスト真実(Post-Truth)とは、感情や個人的信念に訴えるものが、例えウソであっても事実より影響力を持つ状況を示す言葉とのことである。この言葉は、先の英国におけるEC離脱を問う国民投票や米国大統領選挙で有名になった。すなわち、ポスト真実が世論形成に大きな役割を果たし、想定外の政治状況を作り出してしまった。

 日本語的には ”ポスト何とか” とは、ポスト安倍のように、安倍首相の後は誰が首相になるかと言った時間的に後の話題の議論のときによく使われる。しかし、英語的には、時間的より空間的な意味で使われるのではないかと思われる。すなわち、ポスト真実とは真実の背後にある虚偽を示すような感がするが、どうもすっきり頭に入ってこない。

 世界は様々な問題に直面している。例えば、難民問題である。特に中東における政治の不安定さは、多くの難民をヨーロッパ各国に送り出した。難民を受け入れる国では、人道問題として受け入れてみたものの、職を奪われることや福祉関係の財政の逼迫となり、移民排斥運動が次第に顕著になってきた。もともと、中東における政治の不安定さは、先進国が中東の国々に民主主義を普及させようと介入したのが切っ掛けであり、善意からであったとしても原因は先進国にある。

 この問題に直面し、各国の指導者は人道問題と自国経済安定の相反する難問に抜本的な解決策が見いだせず四苦八苦している。中東の安定には、イスラム原理主義、民族問題、取り巻く国々の思惑が入り乱れ、将来の道が開けない袋小路に陥っている。

 最近勢力を増大し始めた移民排斥運動は、自国第1主義であり、他国や他民族のことには目を瞑る。そこで、自国から移民さえいなくなればすべてうまくいくと、一見もっともらしい論理を振りかざす。

 難民発生の根本原因など考えることなく、目の前の出来事しか考えないで、人を煽る言葉がポスト真実であろう。そこにおいては、嘘であっても、自信をもってウソを語らなくてはならない。

 ポスト真実の流行は、米国やヨーロッパ特有の現象かと思っていたが、日本でも同様な現象は起こっている。ただし、それにより世論を形成するほど大きな影響力を持つまでになっていないと思うが、真実を隠ぺいするために嘘を平気でつき周りをたぶらかす点では、ポスト真実であろう。

 稲田朋美防衛相は13日の参院予算委員会で、”(森友学園関連の)裁判を行ったことはない”と、自信たっぷりに断言していたが、14日午後の衆院本会議で一転、”今朝の報道において、13年前の裁判所の出廷記録が掲載されました。夫の代わりに出廷したことを確認できましたので、訂正し、お詫びいたします”と謝罪した。13年前の出来事で忘れることも多々あると思うので、あれほどはっきりと断言するのは逆に不自然と思っていたが、証拠を突き付けられたので、観念したのであろう。

 彼女の言い訳が奮っている。”私としては自らの記憶に基づいて答弁した。虚偽の答弁をしたとの認識はない”と述べた。客観的事実があったとしても、記憶に無いと言えば、嘘をついたことにならないとの主張だ。しかも、外部から証拠を示されているのに、自発的に調べて確認したかのような言い訳は、何とも見苦しい。彼女はポスト真実で、日本の安全を守る防衛大臣の職を全うすると主張するのであろうか。都合の悪いことを隠すのは、戦争中の大本営発表の得意とするところであった。

 籠池森友学園園長は、小学校の新設を認可してもらう為に、私学審議会に”愛知にある進学校に推薦入学枠を確保してる”と虚偽の報告していた。籠池氏は全体がウソで固められおり、何が真実か分からないくらいであるが、こちらもポスト真実で小学校を設立しようと思ったに違いない。

 更に、築地市場から豊洲市場への移転の遅れに対し、石原慎太郎元都知事は自分の責任を忘れ、小池都知事が豊洲への移転を作為的に遅らせていると主張した。石原氏は、日頃から自分は ”もののふ” と自負していたが、責任を他人に押し付けるとは、武士、いや人間の風上にも置けない人間であると露呈してしまった。石原氏はポスト真実で責任を逃れようとしているとしか思えない。
2017.03.22(犬賀 大好-322)

誰も経験したことのない地球環境の変化

2017年03月18日 09時38分33秒 | 日々雑感
 ようやく本格的な春となり、花の季節と心浮きだつ。しかし、この後、あの猛暑がやって来ると思うと、今から憂鬱になる。歳のせいもあろうが、年々暑さが堪える。間違いなく地球温暖化が進行中と思うが、トランプ米国大統領はまやかしと一蹴した。人的な影響による地球温暖化はこれまでに誰も経験したことの無い現象なので、信用し難いのは本当であろう。経験者はどこかにいないであろうか。

 米航空宇宙局(NASA)は、昨年5月、太陽系外に1284個の新惑星を発見したと発表した。そこで確認された惑星のうち、550個は地球のような岩石惑星で、更にその内の9つは、それが周回する恒星の ”居住可能区域” 内にあるとのことだ。人間が生きていくためには、水や空気等、地球上の環境と同等の環境が必要であるが、ここで言う居住可能区域とは、最低限水を液体状に保持できる表面温度である位の意味であろう。

 恒星は通常高温で光輝いているため遠方からでも観察できるが、その表面は灼熱地獄であり生物が居住できるような環境ではない。生物が住める環境はその恒星を周回する星にある筈と惑星が注目される訳である。もし望遠鏡で惑星の存在が確認出来れば、当然恒星からの距離も分かり、その表面温度を推定することが出来、その惑星が居住可能区域かの判定が比較的容易に出来るのであろう。

 今年2月にも、NASAは地球から40光年先の恒星「TRAPPIST-1」に、地球サイズで生命居住可能な3つを含む7つの系外惑星を発見したと発表した。先に発見された1284個との関係は不明であるが、1つの恒星に7つもの惑星が発見されたのは初ということだ。

 生命居住の可能性があると聞くと、すぐに人間と同様な、あるいはもっと知的な生物の存在を思い浮かべるが、現地球上にも様々な生物が居住しており、人間は生物全体からすれば極一部に過ぎない。地球の誕生以来46億年間生物は進化し続けており、途中恐竜のように絶滅した生物も多々いるが、古細菌まで含めると進化の過程のほぼすべての生き物が生存しているのではないかと思える。

 生命とはその内部での物質交換と外部との物質のやりとり(代謝)、および同じ型の個体の再生産(遺伝と生殖)にあると考えられている。地球上に生命がどのように誕生したかは謎であるが、これだけ夥しい数の生物が生きていけるとは、地球環境の素晴らしさを感じざるを得ない。同時に、極一部である筈の人間が地球全体の環境を破壊しつつあるのは、自然に対する驕りとしか言いようがない。地球温暖化等のため、人間何世代か後には今以上の過酷な世界が待っていると予想されるのに、今が良ければとの風潮が強く、何も我慢する必要が無いとしているのだ。

 さて、この広い宇宙に地球と同じような環境の星が存在するとなると、どこかの星には古細菌レベルの生物が、また別の星には人間より遥かに知恵のある生物がいてもよさそうである。遥か彼方の星に人類より知能の進んだ生き物がいた場合、彼らが、その星の環境を守りつつ、あるいは改善しつつ、どのように進化できたかを是非知りたいところである。

 さて、40光年の距離とは、光の速さで40年かかると言うことだ。現在最速のロケットの早さは、30Km/秒程度であろうので、光の速さの1万分の1程度である。すなわちこのロケットでそこにたどり着くだけでも40万年かかる計算になる。電波を利用した通信でも片道40年かかるのでは、コミニュケーションどころの話ではない。

 Science Fiction(SF)の世界では瞬間移動と称する超能力がある。空間を歪めるとか、飛び越えるとか、魔訶不思議な技術であるが、そんな技術が開発されれば、40光年先の知恵者から地球の将来を診断して貰えるかもしれない。いや、瞬間移動の技術があれば、相談以前にもっと快適な世界を探して、地球を飛び出した方が手っ取り早い。

 春眠暁を覚えず。こんな空想をしてうつらうつらしている間にも、あの猛暑が迫って来る。2017.03.18(犬賀 大好-321)

トランプ大統領のWTO軽視政策

2017年03月15日 15時28分49秒 | 日々雑感
 米通商代表部(USTR)は3月1日、年次報告書を議会に提出した。報告書はトランプ政権の通商政策を初めてまとめたもので、その中で他国の不公正な貿易慣行に強力な対応策を取る方針を示し、世界貿易機関(WTO)の決定が米国の主権を侵害しているとみなせば従わない可能性があると表明した。貿易問題ではWTOの決定を尊重したオバマ政権の方針から大きな転換となる。

 トランプ氏は、大統領の選挙期間中でも、為替操作や不公正な政府補助金、知的財産の盗用、国営企業など市場をゆがめる行為をトランプ政権は”容認しない”と主張していたが、いよいよ具体的に動き出したのだ。対象は中国のみと思っていたが、そんなに甘くはなかった。

 その一環であろう、米政府が日本の農業や自動車市場の解放を求める意見書をWTOに提出していたのだ。今月8日にスイス・ジュネーブで開かれた日本の貿易政策に関するWTOの会合で米国の代表が声明を発表したのだ。トランプ政権が日本の貿易政策について公式に見解を示したのは初めてのようである。WTOは加盟国の貿易政策について数年おきに審査しているため、今年の日本の審査向けに出されたのだそうだ。

 トランプ氏は以前から、日本製の車は米国でよく売れるが、米国製が日本では売れないのは、日本政府が妨害しているからだと訴えていた。米国車の輸入関税はゼロの筈であり、何を見当違いしているのだろうと思っていたが、改めて日本の自動車市場の閉鎖性に強い懸念を示してきた。市場開放に向けて日本国内ルールや規制の変更を訴えてきたのだ。

 規制と言えば、日本の道路交通法は世界に冠たる厳しさがある。例えば、セグウェイなどで知られる立ち乗り型の電動二輪車は米国では公道を自由に走れるが、日本では特別な場所でしか走ることが出来ない。個人的には日本の狭い道では、4輪の小型車を禁止にして電動2輪車や電動車椅子のみを通行可能にしたいくらであるが、現状到底無理であろう。トランプ氏を日本に招き浅草周辺でも観光を兼ねて歩いてもらい、米国と日本の道路事情の差を充分知ってもらいたいものだ。

 一方農業に関しては、日本は米国の農産物にとって4番目に大きな市場だが、相当な障壁が残っているととして、関税の引下げを求めてきた。米国の貿易収支は全体では赤字額が増大しているが,農産物は米国にとって貴重な貿易黒字である。主な輸出品目は,大豆、トウモロコシ、綿花、小麦、果実、だそうで、日本の他、カナダ、メキシコや中国が輸出相手国だそうだ。

 米国の農業政策は,1930年代の大恐慌の時期にその基本が形成され,農家の経済的安定を目的として導入された農産物価格安定政策はその後も続けられ、現在でも手厚い農業保護を行っておるそうで、日本の農業保護政策が一方的に非難される話ではなさそうだ。

 WTOが生まれた背景には、1929年からの世界恐慌で保護主義が世界的に広がり、第2次世界大戦につながったとの反省がある。戦後、自由貿易を促進しようと関税貿易一般協定(GATT)ができ、それを引き継ぐ国際機関としてWTOが1995年に発足した。

 トランプ大統領は米国第1主義を掲げ、TPP離脱を表明し、保護主義に走るのではないかと懸念されている。WTOの活躍の実情はよく分かっていないが、WTOのお陰で世界の貿易ルールの枠組みは過去何度か大変な騒動を乗り越えてきたそうだ。

 近年、中国の台頭により先進国の工業が衰退し、経済のグローバル化が格差拡大をもたらしたとされ、自由貿易の行き過ぎの弊害が露わになってきた。一方、食料問題はその国の安全保障上からも重要であり、各国の農業の保護政策はある程度やむを得ないと思うが保護主義の行き過ぎは国同士の争いになると歴史が教えている。

 自由貿易と保護主義の兼ね合いが重要となろう。これらの問題をWTOが単独で解決するのは至難の業であろうが、何とか頑張って欲しい。2017.03.15(犬賀 大好-320)