日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

世界の新型コロナウイルス用ワクチンの開発・獲得競争の激化

2020年07月29日 09時02分40秒 | 日々雑感
 先進国の間で開発途上にある新型コロナウイルス用ワクチンを巡る争奪戦が過熱しているようだ。世界中でウイルスが蔓延し、どの国も喉から手が出るほどワクチンを欲しがっており、最初に開発した企業は名声を得るとともに、大儲けできることは明らかで、開発競争が激化している背景だ。

 開発で先行すると言われる英国のオックスフォード大学が関与するワクチン開発に英国政府は88億円を投資し実用化に成功すれば1億回分の供給を受ける契約をしたそうだ。同時に、米国は1284億円を投じ3億回分を確保、独仏伊のEU包括的ワクチン同盟は4億回分を確保、日本も協議中とのことで、世界を上げて争奪戦が繰り広げているのも、現状感染拡大を抑える有効な手段が他に無いことを物語っている。

 世界一の感染者数を誇る米国のトランプ大統領は、ワープ・スピード作戦と称し、ワクチン開発に1兆7千億円の巨額を投じている。11月に大統領選を控え、感染拡大が止まらない現状に、藁でも掴みたい気持ちの表れであろう。

 世界の開発プロジェクトは莫大な開発資金を得て競争を繰り広げ、複数の候補は開発の山場とされる第3段階の最終臨床試験へと進んでいるようだが、報道される進捗状況も単に計画を述べているのか、実際に着手しているのかよく分からない。

 7月20日、先述のオックスフォード大のチームが人に投与する初期の臨床試験で安全性と免疫反応を起こす効果が確認されたと、英医学誌で発表した。次の段階では1万人以上が参加する臨床試験の予定だとのことだが、具体的日程は示されていない。

 米モデルナ社は、2020年6月11日、新型コロナウイルス感染症ワクチン候補の第3段階の試験を7月に開始する計画だと発表した。この試験は一般的には治験の最終段階であり、今回は米国内の約3万人を対象としているようで、昨日28日ようやく開始されたとの報道があった。

 モデルナ社は初期の臨床試験で抗体の生成に成功したとの報告をしているが、一部の参加者は疲労・頭痛・悪寒・筋肉痛などを訴えたが、深刻な副作用ではないと主張しているようだ。どうも成果を焦っているようにも思え先行きが心配される。

 米ジョンソン・エンド・ジョンソン社(J&J)も7月16日、開発中の新型コロナウイルスワクチンの最終段階の臨床試験を当初は2021年前半と想定していたが、早ければ9月に前倒しすると発表した。

 J&Jはワクチン開発と並行して量産の準備も進めており、実用化できれば2021年内に10億本の供給を計画するが、あくまでも希望であり前のめり感は免れない。

 中国でも国を挙げての開発が進むが、先進諸国の期待は概して大きくないようだ。しかし、先進諸国は遺伝子を利用したワクチンの開発一辺倒であるが、中国のワクチン候補には従来の手法による不活化ワクチンもある。遺伝子利用のワクチンは動物には適用されているが人間には許可されたことが無いとのことで、どこかに落とし穴があれば中国の不活性ワクチンが脚光を浴びるかもしれない。

 世界は未完のワクチンの獲得競争が激しいが、第3段階の臨床試験には数千人から数万人の被験者が必要であり、これから被験者の獲得競争が激しくなるとの識者の意見もある。2020.07.29(犬賀 大好-621)

新型コロナウイルスワクチンの開発の道のりは遠い

2020年07月25日 09時07分28秒 | 日々雑感
 コロナウイルスを鎮静化させる重要な要件は免疫の獲得である。このため一度感染し抗体を身に付けるか、あるいはワクチンの接種により抗体を身に付けるかである。しかし、最近抗体が余り長持ちしないとの説が有力になってきた。 

 新型コロナウイルスの遺伝子が二重らせんという安定的な構造を持つDNAではなく、一重らせんのRNAであるため、その構造が不安定で、変異し易い特質を有するのだそうだ。従来からあるインフルエンザウイルスもRNAであり、インフルエンザのワクチンを打っても長期間持続しないのは、流行している間にウイルスの遺伝子が変異し、ワクチンが効きにくくなったり、まったく効かなくなったりするのはこのためだそうだ。

 2002年から翌年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)も原因ウイルスはコロナウイルスの一種で免疫持続期間は平均して約3年とされていたが、この3年の間に変異していたと推測される。

 しかし、新型コロナウイルスの場合変異のスピードが非常に速く、中国で発生して以来、世界各地に広がっていく過程で変異を繰り返し、5月末ですでに数百の変異が出来たとの報告もあるのだそうだ。SARSのワクチンが今もって開発されていない理由をよく知らないが、ウイルス変異に原因があるとすれば今回のウイルスワクチンの開発は一層困難と思われる。

 実際、一度感染し完治した人が再び感染する例が海外のみならず日本でも報告されている。感染による抗体とワクチンによる抗体が同じであるかよく知らないが、短期間に再感染するのはウイルスの変異以前に抗体そのものが長持ちしない特質があるのかも知れない。このような話を聞くと、目下最終の臨床試験に入ったとの報告のあるワクチンも先行きが決して明るくなさそうと感ずる。

 更に、ワクチン開発には副作用という大きな関門を乗り越えなくてはならない。ワクチン開発では症状に効果があると分かりながら、臨床試験の段階で副作用が出て、100億円、1000億円ものお金がパーになったというケースは枚挙に暇がないそうだ。

 1976年に米国で新型インフルエンザの流行に備え、見切り発車で全国民へのワクチン接種を始めたものの、四肢や顔、呼吸器官に麻痺などが起こすギラン・バレー症候群などの副作用が出て投与中止になるという悲劇的な事件が起きたこともあったそうだ。

 開発競争の先頭を走るオックスフォード大学のグループが、今月20日、人に投与する初期の臨床試験(治験)で安全性と免疫反応を起こす効果が確認されたと発表したが、副作用を評価する臨床試験はこれからのようで、道のりは遠い。

 ただ、こうした副作用はワクチンには付き物なのだそうだ。副作用は人によって現れ方が様々であり、しかもすぐに現れるとは限らず、この評価には数千人程度の健康な人と長い時間を要する。

 さて、日本でもワクチン開発が進められているが、このような試験を実施するためには安全性が最重要であり、爆発的な感染が抑えられている今の日本でやるのは非常に難しいとのことだ。2020.07.25(犬賀 大好-620)

森友学園問題の本質は忖度問題

2020年07月22日 09時10分08秒 | 日々雑感
 森・加計学園問題が風化しつつある現在、森友学園に関する財務省の決裁文書の改竄を担わされ自殺した近畿財務局の男性職員の妻が国や財務省の佐川元理財局長に賠償を求めた裁判が、7月15日、大阪地方裁判所で1回目が行われ、この問題が再び蘇ってきた。 

 そもそもこの森友学園問題は、安倍首相の昭恵夫人が森友学園の名誉校長になり、国有地が安価に払下げられていることが明らかになったことから始まった。安倍首相がもしこの件で”私や妻が関係しているとなれば、首相は勿論議員も辞める”と言いきったことから、首相側近や高級官僚が証拠となりそうな文書を隠したり改竄するように部下に指示し、部下はそれに従ったとされる事件であり、安倍政権にとって思い出して欲しくない事件である。

 この事件の流れは大筋世間に広がっている通りであろう。しかし、政治家や高級官僚の部下に対する指示は、決して具体的で無く、部下は顔の表情や声のこの調子でその意向を汲み取らねばならず、事件が発覚しても上の責任が問われないような仕組みが出来上がっているため、裁判でも事件の全貌は決して明らかにはならないだろう。

 相手の気持ちを忖度することは一を聞いて十を知る能力でもあり、通常非常に便利なコミニュケーション能力である。しかし、上司の意向を忖度するこのような仕組みは上司にとって都合の良い部下の能力である。官僚は黙って上司の意向を忖度し、下に向かって少々具体化して指示すれば良いが、下になる程実務を担わなければならず、責任回避が難しくなる。

 内閣府が高級官僚の人事権を握ったことで、このシステムはすっかり確立されたようだ。上の覚え目出度くなれば出世すること間違いない。佐川元理財局長も一時は国税庁長官に出世したが世間の非難を浴び、辞任を余儀なくされた。また、今月14日に高級官僚人事の発表があったが、公文書改ざん問題発覚時に対応で中心となった幹部2名が事務次官と主計局長に昇進したのも思った通りの筋書きだ。

 自殺に追い込まれた職員はノンキャリアーで実務を担当し文書の改竄をやらされ、常日頃公務員は国民の為に働くことをモットーにしていただけに自責の念にかられたのであろう。原告側が真実を知りたいとの訴えに対して、被告側は「職務中に行った行為で他人に損害を与えた場合、賠償責任は国が負い、公務員個人は責任を負わないという判例が確立している」と主張して、無罪を主張している。

 佐川元局長が誰の指示で動いたかは状況的には明らかであるが、証拠の無い忖度の世界の話であり、裁判でも恐らく明らかにすることは出来ないだろう。佐川氏が例え名前を挙げたとしても証拠がないで押し切られ、天下り先を失うだけであろう。佐川氏もこのことを十分承知しており、どこかの天下り先で秘かに余生を送る道を選ぶであろう。

 さて財務局も二度とこのような事件が起こらないように組織を見直す等を約束しているが、忖度の世界まで踏み込むことは出来ないだろう。麻生財務相は、公文書の改ざんは由々しきことであり、現場が抵抗していたが本省に押し切られたようで、二度とこのようなことがあってはならんと、他人事のように話しているそうだが、現在の忖度システムを決して手放さないだろう。2020.07.22(犬賀 大好-619)

日本の地球温暖化対策は遅々として進まず

2020年07月18日 09時07分34秒 | 日々雑感
 2020年7月豪雨と名付けられた集中豪雨は、洪水や土砂崩れ、河川の決壊等を招き、インフラや交通にも大きな影響が及ぼしている。原因は線状降水帯の発生とのことであるが、更に元を質せば海水温の上昇にあるとのことだ。つまり地球温暖化が影響しているのだ。折りしも新型コロナウイルスが全国に蔓延しており、当初インフルエンザ等の風邪の原因になる菌は暑さや湿気には弱く、梅雨の時期になれば自然に終焉すると、今こそ地球温暖化が役立つ時が来たかと秘かに期待していたが脆くも崩れ去った。

 さて新型コロナウイルス騒動の為かこのところ地球温暖化の話題は影を潜めている。さて、今年11月開催予定の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けて、この2月末までに削減目標を見直し再提出する必要があった筈であるが、日本政府の見直し論議に関しては全然聞こえてこなかった。このところ小泉進次郎環境大臣の存在感がすっかり薄れている。

 小泉氏は昨年9月環境相に就任し、12月11日、COP25の閣僚級会合に出席したが、日本では石炭などの化石燃料発電が大半を占め、大量の炭酸ガスを排出していると各国から批判され面目丸つぶれになった。そこで今年のCOP26までに石炭火力発電の廃止など脱炭素に向けた具体策や現状の温暖化ガス削減目標の見直しを纏め名誉回復する必要に迫られていた。

 そこで環境省内に有識者検討会を立ち上げ、そこで世界の3分の2以上の国で太陽光と風力の電気が最も安くなっている、等の知見を得たようであるが、それを生かした具体的な対策を纏めるに至っていないようだ。

 経済産業省の2019エネルギー白書によれば、日本の電源構成は2016年から2030年までに再生可能エネルギーの利用を16%から22~24%と増加、原子力も3%から20~22%と増加を予定し、石炭火力発電は35%から26%と減少を目指しているが、世界の潮流から大きく外れている。今年のエネルギー白書には小泉大臣の意見が多少反映されるかも知れないが、日本の将来の電源構成を決めるのは経産省であり、環境省は恐らく歯ぎしりすることになるであろう。

 今年7月9日、政府の経協インフラ戦略会議で石炭火力発電を輸出する場合、相手国の脱炭素化に向けた方針を確かめない限り原則公的支援を行わない、との方針が打ち出したが、輸出相手国の温暖化対策の話であり、日本の話ではない。また、国内のメガバンクや主要な商社も火力発電には投資をしない方針を打ち出しているようだが、国や電力各社は大転換できずに火力発電を手放そうとしない。

 東京電力ホールディングスと中部電力の国内火力事業を統合したJERAは昨年7月同社が保有する低効率な石炭火力発電所について2030年度に向けた廃止を進め、最新技術を採用することで環境への負荷を抑えていくとの方針を示したが、CO2排出量がゼロになる分けでもなく、しかも発電電力量に占める石炭火力の割合は1割強で実現できたとしても微々たる影響に過ぎない。

 とかく前例踏襲第1主義の官僚には方針の大転換が出来ない。つい最近、防衛省関係でイージスアショアの設置に関し大転換があったが、これは河野防衛相のリーダシップによるものであり、大いに存在感を示した。小泉環境相もこれにあやかりたいのであろうが、環境相の権限は限られている。2020.07.18(犬賀 大好-618)

来年の東京五輪に新型コロナウイルス用ワクチンは間に合わないだろう

2020年07月15日 09時06分02秒 | 日々雑感
 世界保健機関(WHO)によると、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発プロジェクトは現在世界で120以上が進行中だそうだそうだ。ワクチンの役目は人体に抗体を作ることであり、従来の方法は活性化または不活化のウイルスそのものを体内に入れて抗体をつくる方法であり、開発に時間と、費用を多大に要した。

 最近、遺伝情報や遺伝子組み換え技術を使う新しいタイプのワクチンの開発が試みられ、この種のワクチンは開発期間を大幅に短縮できる可能性があり、中にはゼロからワクチンを作りわずか数カ月で臨床試験に持ち込むことができたと述べる企業もあるのだそうだ。しかも大量生産が容易で、製造コストも安く出来る利点、更にウイルスそのものではないので病原性はなく、安全性が高いという利点もあるのだそうだ。

 現在遺伝子を利用したワクチンは家畜には使われているが、人間への使用はまだ承認されていないそうだが、上記の利点によりこの技術を取り入れた数多くのワクチンの開発が試みられ、早期に使用できる期待が膨らむ。

 ワクチンの開発過程においては臨床試験が必須であり、早い所では臨床試験を始めた企業もあるようだが、従来型のワクチンと同様に3段階の試験を踏まなくてはならない。

 第1段階では数十人程度の健常者に接種して安全性を簡単に確認する。第2段階では数百人の健常者で抗体の出来具合や年齢による違い、投与法などを検討する。最後の第3段階では数千人以上の大集団に接種し、副作用も含めた安全性確認と免疫の有効性を調べるのだそうだ。

 副作用は個人差や症状が出るまでに時間がかかる等、安全性の確認には膨大な時間を要すると思われる。この過程でワクチン候補の9割は実用化できず失敗に終わると言われている。

 また、ノーベル医学・生理学賞を受けた本庶佑教授は新型コロナウイルスはその構造が不安定で、遺伝子が変異し易いため、効果的なワクチンを作るのは難しいと述べている。すなわちインフルエンザのワクチンを打っても効かないことが多いのは、流行している間にウイルスの遺伝子が変異し易いため、ワクチンが効き難くなったり、全く効かなくなったりするのだそうだ。

 このような関門を突破し、無事開発されたとしてもワクチンの使用はまず開発した国が優先されるであろう。そこで日本国内に早期に安定供給するためには、国内で開発・製造する必要があることになる。

 各国の開発が急であるが、日本も負けていない。バイオベンチャーのアンジェスは6月に、大阪大学と共同開発した新型コロナウイルス向けの遺伝子ワクチンの臨床試験を開始したと発表した。健康な成人を対象に、筋肉内にワクチンを接種し、安全性と免疫原性を評価するそうだからまだ第1段階の試験だ。試験期間は2021年7月31日までを予定している。国内で最初の治験とのことだが、結果が分かるのは来年の夏だ。東京五輪の開催までに間に合わなさそうだ。

 また、大阪市に本社を有するアストラゼネカ株式会社は、日本国内における供給に向けて、日本政府と具体的な協議を進めることに合意したと6月26日発表したが、同社のワクチン開発がどの程度進んでいるかよく分からないが、随分先走っている感もする。2020.07.15(犬賀 大好-617)