超高齢化社会の日本において、現在、認知症を発症している人は推計540万人で、2025年には730万人へ増加し65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると厚労省研究班の調査が明らかにしている。
さて、現在新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、2週間後には東京で五輪の開催式が迫ると言うのに第4回目の緊急事態宣言が出されることになった。緊急事態宣言でもまん延防止措置でも、自粛が要請され、不要不急の外出は控えるようにとのことだ。
認知症の予防には、適度の運動や他人とのコミュニケーションが有効であるが、この点自粛要請は認知症の促進に直結する。また、新型コロナウイルス感染症にかかった人は、脳が最高で10年も老化する可能性があるという研究結果が発表されたそうだ。脳の老化と認知症の関係は不明だが、十分考えられる。
更に、梅雨明けが迫り、猛暑が差し迫っている。熱中症の予防に為、外出は避け自宅での自粛が望まれるが、これもまた認知症にとって有難くない。
認知症のうち、およそ半数はアルツハイマー型認知症で、次にレビー小体型認知症、そして血管性認知症と続き、これらは三大認知症といわれ、全体の約85%を占めている。残りの15%の認知症の中には、治るタイプの認知症などがあるそうだが、ほぼ現状では不治の病だ。この病気の治療薬の開発はノーベル賞級の価値があり、製薬会社は競って開発を急いでいることだろう。
アルツハイマーは、脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質がたまり、脳細胞が壊れて死んでしまい減っていくことで起こる。このアミロイドβは加齢により増えやすくなるため、高齢者が発症することが多い。ただ、30~50代の若い人が発症することもあるそうだ。アミロイドβがなぜ蓄積されるかが分かれば、治療薬開発のヒントになるだろうが、この蓄積の進行は遅く、2~30年罹って症状が現れるそうで、開発の難しさを予想させる。
6月7日、米食品医薬品局(FDA)は、日本の製薬大手エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」を承認したと発表した。これまでは進行を一時的に遅らせる薬しかなく、原因とされる物質に直接作用する治療薬の承認は世界初だそうだ。
FDAは承認理由について、患者の脳内に蓄積し発症に至るとみられる物質アミロイドβが、同薬の投与によって一貫して減ることが臨床試験で確認されたと説明しているが、異議を唱える専門家も多いらしい。
アミロイドβの蓄積は徐々に進行し、症状は何十年後に現れるとのことで、早期発見は難しいとの話だ。治療薬「アデュカヌマブ」が、どのようにアミロイドβに作用するか分からない。それを取り除き、脳細胞が再生させるのであれば完璧な治療薬となろうが、どうであろうか。
新型コロナウイルス用のワクチンは予想外の速さで開発されたそうだ。医学の進歩は早い。認知症の治療薬の早期開発を願うばかりだ。
2021.07.10(犬賀 大好ー718)