菅首相は、新型コロナウイルスの感染再拡大が続く東京都に対し、7月12日から8月22日まで緊急事態宣言を発した。16日には梅雨明け宣言もされ東京五輪の開幕が1週間後に迫り、予想通り猛暑の中で五輪は挙行されることだろう。
さて、緊急事態宣言を受けて、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は7月8日、東京と埼玉、千葉、神奈川の1都3県で行われる五輪競技を無観客で開催すると発表した。無観客を決定する5者会談でIOCのバッハ会長は有観客を主張し、また14日菅総理と会談した際にも感染状況が好転すれば有観客にするように菅首相に要請したとのことだ。
有観客化は入場券の再発行など現実問題として無理な点も予想されるが、この点のみならず会長は日本のコロナ感染の現状を全く認識していないと思われる。感染状況がこれ以上悪化すれば、五輪中止もやぶさかでないとでも言っていたならば、IOCに対する好感度は上がっていただろうに。IOCの下部組織のJOCは一体何をやっているのだろう。
東京都は14日、新型コロナウイルスの感染者が新たに1149人と発表した。1日の感染者が1000人を超えたのは5月13日以来約2カ月ぶりで、緊急事態宣言は正しかった。しかし、東京都だけではなく周辺3県への発令も望ましかった。
バッハ会長は選手に向けたビデオメッセージで、”最も重要なのは大会が開催されることだ”と言ったそうだ。IOCは、アスリートがこれまでの努力を発揮させる自己実現の場を提供するのがオリンピックの役目であると考えており、アスリートの自尊心をくすぐり最大限の努力をするようにけしかけているのだ。これがIOCのアスリートファーストの考えだ。
ところで、無観客と言っても大会関係者は除外されるのだそうだ。大会の直接の運営者の参加は納得できるが、飲食しながらの見物は、ローマ時代の円形競技場コロッセオでの見物を決め込む貴族気取りであろう。
開会式に先立ち、組織委員会は18日、バッハ会長などを招いて東京の迎賓館で歓迎会を開き、日本側から菅首相や小池都知事、橋本会長の他か、森前会長も出席し、出席者は40人余りになる見通しだそうだ。正に五輪貴族様の歓迎会だ。
さて、23日より東京五輪が始まる。開会式では、無観客でも恒例のマスゲーム等は行われるようで、テレビを通して世界中の人々がそれなりに盛り上がるであろうが、出演者は盛りに欠けるだろう。炎天下で行われる競技もいろいろありそこでのアスリート達の奮闘が見ものであるが、それより五輪貴族たちの振る舞いに興味ある。報道規制も当然あるだろうが、SNSの発展した現在、実態がさらけ出されるであろう。2021.07.17(犬賀 大好ー720)