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伝子組み換え作物(GMO)に逆風

2016年09月18日 | 社会・経済

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 モンサント買収背景に米農業界の変調

JACOB BUNGE - The Wall Street Journal. - 2016年9月15

   世界の農業関連業界で大規模な企業合併が相次いでいる背景には、米農業界の変調がある。農場を支配してきた遺伝子組み換え作物(GMO)に逆風が吹いているのだ。

   米国の農場に20年前に登場して以来、遺伝子が人工的に操作された種子はまるで携帯電話と同様になった。つまり、多機能かつユビキタス(いつでもどこでも利用可能)だ。科学者は種子の中に、害虫を寄せ付けず、強い除草剤を浴びても生き残り、少ない水でも生き延び、飽和脂肪の少ない油を作り出す遺伝子を組み入れてきた。その結果、農家の「素人化学」は姿を消した。米農務省の推計では、今年の大豆の作付面積の94%、トウモロコシの作付面積の92%に、こうしたバイオテクノロジー(生物工学)を利用した種子が植え付けられている。

    現在の農業から得られる利益の少なさを考えると、遺伝子が組み換えられた種子の高くなる一方の価格に農家がついていくのが難しくなりつつある。作物の種子にかける費用は1996年以降で4倍近くまで膨らんだ。この年は、モンサントが業界で初めて、バイオテクを利用した種子を市場に投入した年だ。その上、主要穀物の価格は3年間下がりつづけており、多くの農家は今年、赤字になりそうだ。

   バイオテクを利用した農業には限界があることも分かってきた。除草剤に抵抗力を持った雑草も出てきたため、農家は幅広い種類の化学薬品の購入を余儀なくされるようになったのだ。中には昔ながらの種子を探し始めた農家もある。バイオテクを利用した作物から得られる利益が小さくなっているためだ。

  「バイオテクの種子に払う価格では利益が得られない」と、オハイオ州で農業を営むジョー・ローガンさんは話す。今春、ローガンさんが大豆の種1袋に支払った金額は85ドル(約9000円)で20年前の約5倍だという。来年の春はお金を節約するために、バイオテクが使われていない大豆とトウモロコシの種子を購入する予定だと話す。

   こうした圧力が世界有数の種子・農薬サプライヤーの間の合併ブームに火を付けた。ドイツの製薬・化学大手バイエルは14日、米除草剤・農業バイオ技術大手のモンサントを総額660億ドル(約6兆7800億円)で買収すると発表。世界最大級の農業化学企業が誕生することになる。米化学大手のデュポンとダウ・ケミカルは合併を目指しており、最終的には両社を併せた農業部門と他の2部門を別会社として独立させる計画だ。スイスの農業化学大手シンジェンタは2月、中国化工集団(ケムチャイナ)からの430億ドルでの買収提案に合意したと発表した。モンサントからも買収提案はあったが、シンジェンタはこれを拒否した。

   作物価格の下落に対応するため、農業化学業界はコスト削減とスケールメリットの構築を目指している。種子や化学薬品、肥料、トラクターメーカーなどは作物価格の下落により、製品の値下げと人員削減を強いられてきた。

  「作物(関連株の)ブームは終わった」。米証券会社スタンフォード・C・バーンスタインのアナリストらは昨年、収穫期を迎えた米中西部の農業地帯を調査した報告書の中でこう明言した。2年続けて過去最高の収穫高を記録した後で、さらに昨年も大豊作となったからだ。

   米農務省によると、作物の豊作が続いたため、米国の二大穀物の価格が急落した。米国の農家の収入は今年、総計で昨年より92億ドル少なく、2013年より42%少ない。

   トウモロコシと大豆、小麦の価格は現在の安い水準が向こう10年間は続くと農務省は予想している。種子を扱う企業がインフレ率を上回って値上げをすることは向こう3年から5年間は難しくなる、とバーンスタインはみている。

   バイオテクを利用した種子を製造する根拠は単純だ。ただ1種類の万能除草剤を使っても育つような作物を作れば、農家が購入する化学薬品の数が減る。作物が独自に害虫を殺す毒素を分泌すれば、殺虫剤への依存も減らすことができる。米国では広大な作付面積のトウモロコシ、大豆、綿がうってつけの市場だった。

   モンサントや他の種子企業は「ラウンドアップ・レディー」――同社の除草剤「ラウンドアップ」に耐えられるように操作された種子――と呼ばれるバイオテク種子を割高に販売してきた。この種子で作物を育てれば、理論的には農家が化学薬品や人件費に使うお金を節約できるため、その分を農家とメーカーで分け合う形だった。

   モンサントはやがて、後に業界のスタンダードになる計算式を作った。バイオテク種子を使った農家が殺虫剤や人件費で節約できる1ドルのうち33セントを「テクノロジー料」という名目で種子の価格に上乗せし、モンサントが懐に入れるというものだ。

   モンサントはその後、ラウンドアップに含まれる万能除草成分のグリホサートに耐えられる大豆の種子と、作物を枯らすような虫を寄せ付けないトウモロコシの種子を市場に投入した。

   21世紀の幕が開ける頃までには、米国の大豆畑の半分以上、トウモロコシ畑の4分の1にバイオテクで操作された品種が作付けされるようになった。それは同時に種子にかかる費用の増大も意味していた。農務省のデータによると、2006年には大豆の種子の平均価格は10年前の2倍になっており、トウモロコシの種子は63%値上がりした。

   同じ時期、農場には警鐘を鳴らすような事態も発生していた。オヒシバやボウムギのような雑草がグリホサートに耐性を持つように進化したことを、科学者が確認したのだ。

   さらに、もっと厄介なヒユ科のウオーターヘンプやパーマーアマランスがグリホサートに耐性を持ち、作物を枯らし始めた。これらの「スーパー雑草」を駆除するために、農家はジカンバや2,4-Dといった以前の強力な除草剤を使ったり、時にはくわで雑草を取り除いたりしなければならなかった。

   作物の収穫量が上昇し続ける種子の価格に追いつけなくなるケースが多くなっていった。農務省のデータによると、平均的な大豆農家の場合、1エーカー当たりの収穫量はこの10年間でわずか4%増の48ブッシェル(1ブッシェル=約35リットル)にとどまり、種子の価格の上昇ペースを下回っている。トウモロコシの収穫量は21%増となった。

   ウィスコンシン州でトウモロコシと大豆、小麦を育てているジム・ジマーマンさんは、バイオテクブームにはいくつか問題はあるものの農業を良い方向へ変えたと話す。

   ジマーマンさんはラウンドアップ耐性のトウモロコシと大豆を植えたおかげで、トラクターの燃料代と人件費を数万ドル単位で節約できたと言う。長年にわたって節約できたおかげで、子供たちを大学に入れられたとも話す。来年の春もバイオテクを利用した種子をまく予定だ。

   モンサントの最高技術責任者(CTO)で1980年代に同社の遺伝子組み換え作物(GMO)の開発に携わったロブ・フレーリー氏は、農家の人々はGMOを手放すことはないとみている。「この2~3年の価格のように経済的に困難な状況の中にあっても、農家の人たちはハイテクの種子を買うだろう。殺虫剤などに使うお金を節約することができるからだ」

   農務省によると、2013年以降、世界中で生産されるトウモロコシ、大豆、小麦の量は消費量を上回っている。トウモロコシの価格は2008年につけたピークの1ブッシェル=8ドル前後から2014年半ばに約半分にまで落ち込んだ。それ以降は3.50ドルから4ドルあたりで取引されている。大豆は2012年のピークから46%値下がりした。

   モンサントは最新かつ最良の種子を以前の製品よりも高い価格で販売する予定だ。古い製品は値下げする可能性が高いという。全体的にモンサントの製品価格は「ほんの少しだけ」上がるとフレーリー氏は述べた。



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