「東京新聞」社説2020年8月29日
安倍晋三首相(自民党総裁)が辞意を表明した。持病の潰瘍性大腸炎の再発が理由だという。健康悪化が理由ならやむを得ない。憲法を軽んじる「安倍政治」を転換する機会でもある。自民党は速やかに後継総裁を選び、山積する課題への対応に万全を期すべきだ。
首相はきのう午後五時からの記者会見で「八月上旬に潰瘍性大腸炎の再発が確認された。国民の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、首相の地位にあり続けるべきではないと判断した」と述べた。
◆任期途中2度目の辞任
二〇一二年十二月に政権復帰した首相は昨年十一月、第一次内閣と合わせた「通算」在職日数が憲政史上最長となり、今月二十四日には、第二次内閣以降の「連続」在職日数も大叔父の佐藤栄作首相の二千七百九十八日を超え、史上最長を更新したばかりだった。
党総裁としての任期は来年九月まであり、首相としては新型コロナウイルス対策に取り組み、来年に延期された東京五輪・パラリンピック開催を花道に、退く道筋を描いていたに違いない。
首相自ら「アベノミクス」と呼んだ経済再生策は新型コロナの影響もあって国民の実感に乏しい。「戦後外交の総決算」とした北方領土返還や北朝鮮による拉致問題も前進がない。第一次内閣に続く道半ばでの病気退陣に首相は「痛恨の極み」と述べた。
とはいえ首相交代は第二次内閣以降の「安倍政治」を転換する機会でもある。
首相はこの七年八カ月間に特定秘密保護法やカジノ解禁法、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法など、国論を二分する法律を、野党や国民の反対を押し切って次々と成立させてきた。
歴代内閣が違憲としてきた「集団的自衛権の行使」を、一内閣の判断で一転容認し、他国同士の戦争への参加を可能にする安全保障関連法の成立も強行した。
◆憲法軽視の「一強政権」
さらに憲法五三条に基づく臨時国会の召集要求も拒否してきた。一五年は召集せず、一七年は要求を三カ月以上放置し、召集日に衆院を解散した。新型コロナや豪雨への国会対応が求められる今年も召集を拒否している。
憲法を尊重し、擁護すべき立場にありながら改憲を主張し、現行憲法と誠実に向き合わない姿勢を見過ごすわけにはいかない。
また、長期政権は「安倍一強」とも呼ばれる政治状況を生み、与党議員や官僚らの間に、首相ら政権中枢に過度に配慮する忖度(そんたく)をはびこらせた。
格安での国有地売却が問題視された森友学園を巡る問題では、官僚機構のトップとして君臨してきた財務官僚が、公文書偽造に手を染めるにまで至った。
首相と親密な関係にある加計学園の大学の獣医学部新設を巡る疑惑や、公的行事である「桜を見る会」の私物化問題も、一強に起因する弊害と言えるだろう。
法務官僚の違法な賭けマージャンや、財務次官の女性記者セクハラ行為など「統治機構の根腐れ」ともいえる深刻な状況も生んだ。
後継首相は、こうした憲法を軽んじ、統治機構の根腐れを生んだ「安倍政治」を、どう転換するのかも問われることになるだろう。
安倍氏の辞意表明を受けて自民党は後継総裁選びに入る。
「ポスト安倍」を選ぶ総裁選には、自民党の岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長らが立候補に意欲を示しているほか、安倍政権を支え続けてきた菅義偉官房長官を推す声もある。
総裁選は任期満了の場合、一般党員を含めた選挙となるのが通例だが、任期途中の辞任など緊急を要するときは、国会議員と地方代表による両院議員総会で決めることができる。この場合、国会議員票の比重が重く「永田町の論理」による総裁選びとなりかねない。
国政に空白は許されないのは当然だが、政権の連続性を理由に、安倍首相の意向が強く反映されたり、国民の思いと懸け離れた総裁選びにすべきではない。
可能な限り、国民により近い党員の意思が反映されるような総裁選となることが望ましい。党内有力者の話し合いによる選出など断じてあってはならない。
◆速やかに国民の信問え
自民党総裁選は、一政党の党首選びではあるが、首相候補を選ぶ選挙でもある。国民に開かれた論戦にすべきは当然だろう。各候補は新型コロナ対策など緊急を要する課題にどう取り組むか、自らの理念や政策を丁寧に語るべきだ。
誰が党総裁になろうとも、首相就任後、速やかに衆院を解散し、主権者たる国民に信を問う必要もある。立憲民主、国民民主両党の合流話が進む野党側も、選挙準備を急ぐべきだ。次の衆院選は政権選択にふさわしい選挙となることを望みたい。
国民の声を聴く体制などみじんもない。二階氏を中心に「三密」政治がなお健在である。
今日の気温24℃―18.7℃であるが、最低気温はまだ下がる可能性が強い。待ちに待った雨である。
昨日術前の検査がすべて終わった。9/1入院、手術の予定。石だけを取るのではなく、臓器(胆のう)自体を取ってしまうという。ブログもしばらく休みます。