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現実逃避でしか悲劇は乗り越えられない

2017年11月22日 | 事件

 

一番被害を被っている人が周りから「泣け」とか「悲しめ」とか要求される社会におさらばを

 現実逃避でしか悲劇は乗り越えられない

    ハフポスト 2017年11月22日

 黒岩揺光

1981年、新潟生まれ。米マイアミ大学国際学部卒業、オランダのユトレヒト大学院修了後、2006年に毎日新聞社に入社。2010年からケニアのダダーブ難民キャンプの国連機関やNGOで支援活動。2014年からジュネーブで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に勤務。2016年、妊娠した国連職員の妻に寄り添い、ヨルダンで主夫。長男誕生の翌日、妻が出血多量で亡くなり、日本へ帰国。現在、新潟の実家で子育て奮闘中。著書に「国境に宿る魂」(世織書房)、「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(UCAN)。ブログID。http://adventurebyyoko.blog3.fc2.com/

 

   就職相談を持ち掛けた元TBS記者からのレイプ被害を告発した伊藤詩織さんの著書「Black Box」(文藝春秋)を一気に2回も読んでしまった。私が特に共感できたのは、「魂を奪われた」体験をした人に対して、社会が「もっと悲しんでくれないと」と被害者面を要求することに、伊藤さんが心を痛めていること。そして、その社会が勝手に作り上げた「被害者」のイメージにより、伊藤さんのレイプ被害に遭ったという主張を疑う人まで出ていることに、私は憤りを感じた。

 例えば、伊藤さんが被害を受けた数時間後に、相手からかかってきた電話に普通に応対していることや、3日後には伊藤さんから相手に相談内容について進捗状況を伺う短いメールを送っていることに対して、「レイプされてそんなことができるだろうか?」などと疑問の声が上がっている。

 アマゾンのレビューには、「殺されるかと思うほど怖い思いをし、レイプと確信した女性が、その後自分から、あのようなメールを送る。どう言い訳をしてもどう見ても多少の(性行為の)同意というものが垣間見えてしまう」などの書き込みがあった。

 全く違う体験ではあるが、私は昨年9月、長男出産後に妻が亡くなり、「魂を奪われた」ような気持ちになった。そんな自分の体験と照らし合わせてみても、伊藤さんの行為に不自然さは全く感じなかった。

 妻を亡くした直後、私は現実逃避でしかこの悲劇を乗り越えられないと思った。新生児の息子と二人っきりになったら、妻を失った喪失感に押しつぶれそうになるため、できる限り家族や友人と一緒にいるようにした。さすがに就寝時までは一緒にいることはできず、消灯した瞬間、妻を失った現実が一気に表面化し、暗闇にそのまま自分が飲み込まれてしまうような孤独感に襲われた。

 亡くなった3日後には自宅近くのテニスコートで大声をあげながらテニスをしていたし、毎晩の様に、友人数人に家に来てもらい、一緒に夕食を共にし、時には、歓声を上げながらボードゲームに熱中した。そんな私を見て、妻を亡くしたばかりと想像できる人はいなかったかもしれない。

 人間は想像を絶する悲劇を体験した時、できる限りそれ以前の日常とつながりを保ち、悲劇が起こったこと自体を否定することで、その困難を乗り越えようとすることもあるのではないか。多くの友人が憐みの目で私に接してきたが、逆に、そういう友人とは付き合いづらかった。それより、まるで何もなかったかのように、以前と変わらない態度で接してくれる友人の存在の方が数倍ありがたかった。

 伊藤さんも同じように、元TBS記者と何もなかったかのように接することでしか、生き延びることができなかったのではないか。全く違うケースだから比較しようがないが、私も、妻が亡くなって4時間後に、妻の執刀医(過失致死罪で起訴)に会いに行った。

 映画の様に泣き崩れることも、取り乱すこともなかった。妻の死因について知りたかったというのが一番の理由だが、悲劇が起きる前の強い自分がいるということを自分や執刀医に示したかったというのもあったのかもしれない。

 伊藤さんが毎日10キロ走ったり、キックボクシングに没頭するのにも共感した。運動は頭を真っ白にしてくれるから、悲劇が起きた世界から一瞬解放された気分になる。私の場合、以前から毎日運動していたというのが大きいが、0歳児を抱えるシングルファザーが毎日運動するというのは結構ハードルが高い。

 それでも、家族や友人に1時間だけみてもらって、ランニングやウェートトレーニング、テニスやバスケットボールをしたり、子どもを背負ってハイキングに行ったりしている。

 目の前で妻を失って自己肯定感が著しく低下し、周りからの何気ないコメントに心を痛めることが多く、それについて誰かに相談しても「ヨーコーがあまり悲しそうにしていないからじゃないかな」と逆に責められてしまう。「なんでそんなに冷静でいられるんですか?今ここで泣いてもらってもいいんですよ」とか言ってくる友人もいた。

 妻を突然失って悲しくないはずがない。悲しみ方は人それぞれであり、誰もが映画の様に人前で泣き崩れるとは限らない。なぜ一番の被害者である私が、「悲しめ」とか「泣け」とか周りから要求されなければならないのか?妻が亡くなる以前と同じように人前で振舞うことで悲劇を乗り越えようとしているという発想があってもいいのではないだろうか。

 私は勝手に伊藤さんの人生と私の人生にいくつかの類似点を見出してしまった。高校時代に米国に渡ったこと。海外生活が長いこと。若い頃にジャーナリストを志し、メディア業界で働いたこと。そして、魂を奪われた体験をし、同じような被害者が出ないよう刑事告訴に踏み切って社会に訴えていること。

 だから、正直、あまり客観的に本を読めている自信がないが、読者の勝手な「被害者像」を伊藤さんに押し付けて、彼女の主張自体に疑問を呈することだけはやめてほしい。伊藤さんには、自分が社会に対して抱いていたモヤモヤを、明確に言語化してくれただけでなく、他にも様々な大事なメッセージを込めた本を出してくれたことに心から感謝したい。

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ようやく本腰 野党超党派で“詩織さんレイプ事案”徹底追及

     日刊ゲンダイ11.22

21日、参院議員会館で、野党議員が超党派で「『準強姦事件逮捕状執行停止問題』を検証する会」を立ち上げた。

  安倍首相と昵懇の元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(51)が、ジャーナリストの伊藤詩織さん(28)を2015年4月にレイプしたとする疑惑が主眼だ。

  呼びかけ人は、自由党の森ゆうこ参院議員や立憲民主党の阿部知子衆院議員、希望の党の柚木道義衆院議員ら8人。維新も含めて全野党が、きのうの検証会に参加し、警察庁と法務省からヒアリングを行い、山口氏への逮捕状が逮捕直前に執行停止になった経緯についてただした。

  この問題の最大の焦点は、警察上層部がレイプ事件の捜査に介入し、山口氏の逮捕にストップをかけたのかどうかだ。レイプを告発された山口氏が、安倍首相と極めて親しいために、疑いを招いている。

ところが、省庁側は、この日も「個別事案についてはお答えできない」の一点張り。逮捕状の執行停止を「決裁」した中村格警察庁総括審議官(当時、警視庁刑事部長)の「決裁文書」については、「把握していない。文書を残すかどうかは場合による」(警察庁)と答え、議員らが「オカシイよ、それ!」と語気を強める場面があった。

   詩織さんが、レイプ事件を訴えてからすでに半年。やっと全野党が超党派で結集して“詩織さん事案”の追及に本腰を入れ始めた形だ。それにしても、なぜ、野党の動きはここまで遅れたのか。

  「恐らく理由は2つです。1つは、今年9月に検察審査会で『不起訴相当』の判断が下され、刑事事件としては一応の決着がついたこと。もう1つは、民進党が事実上解党したことで追及しやすくなったことでしょう。事件を握りつぶした張本人と言われている中村格総括審議官は、民主党政権時代に官房長官秘書官を務め、自民が政権を奪取した後も留任している。民進党は、民主政権時代の弱みを握られているからか、あるいは恩義があるのか、これまで中村氏の捜査介入疑惑について国会で大きく取り上げられなかったようです」(永田町関係者)

   要するに、民進党が分裂した今、中村氏に“忖度”する必要はなくなったというワケ。今後、国会の場で焦点となるのは、まさに「不当介入があったか否か」である。どこまで証拠を出させることができるか、野党の本気度にかかっている。