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幼児教育無償化ー政府のコレジャナイ感満載の政策

2017年11月06日 | 教育・学校

無償化「認可外保育所排除」でもたらされるのは、より激しい保活地獄

 この方針が、なぜ途方もなくダメなのか。できるだけ簡単に解説いたします。

 駒崎弘樹  2017年11月06日  

 待機児童問題が深刻化しているにもかかわらず、幼児教育無償化など、コレジャナイ感満載の政策を出している政府。

 たもホームラン級の的外れな政策を検討していることが分かりました。

 

認可外保育施設 無償化せず 政府検討、財源に限度 毎日新聞

 https://mainichi.jp/articles/20171105/ddm/001/010/097000c

  自民党が衆院選の公約に掲げた幼児教育・保育の無償化について、認可外保育施設の利用は無償化の対象に含まない制度設計を政府が検討していることが分かった。

 

  東京都の認証保育所など認可外保育施設に通う子どもは17万人以上おり、不平等だと批判が出る可能性がある。与党内でも配慮を求める声が出ているが、財源の大枠は固まりつつあり調整は難航しそうだ。

  この方針が、なぜ途方もなくダメなのか。それを保育園経営者であり、国の有識者会議委員である私は、できるだけ簡単に解説いたします。

 【認可外保育所とは何か】

  まず前提として、認可外保育所とは、その名の通り、「厚労省の認可を受けていない保育所」なんですが、広義と狭義の意味があります。

  広義には、「厚労省の認可を受けていない保育所全般」なので、厚労省からは認可を受けてないけれど、内閣府から補助を受けられる「企業主導型保育」や東京都から認定されて補助を受けられる「認証保育所」も含んでいます。

 狭義には、上記のような自治体等が認定する準認可とも言うべき存在を抜いた、純粋にどこの公的機関からも認可されていない施設です。

  政府は「認可基準に満たないものまで無償化の対象にすると、政府が推奨していると受け止められる」ことを懸念しています。

 さて、政府方針の何が問題なのでしょうか。

 【認可外に入園する家庭は、「認可に入りたかった家庭」】

  厚労省の13年調査によると、認可外利用の約4割は、認可に入りたかったけれど、空きがなくて入れなかった家庭です。

この数値は「指数的に無理と言われたから、申し込まなかった」という人はカウントしていないので、実際は大半の家庭が入れるなら認可を希望していたと思われます。

 さて、認可に入れなかった家庭は、何か彼らに落ち度があったのでしょうか。

 ありません。

  自治体は児童福祉法の24条で、「必要な保育を確保するための措置を講じなければならない」と決められているのに、それを彼らが守っていないがための、犠牲者なのです。

単に自治体(と自治体を補助している国)の供給能力がないから、本当は保育を必要とする人全員に保育園を提供しなくてはいけないにも関わらず、勝手に足切りしているだけなのです。

 こうした犠牲者に対してのみ金を取る、という保育制度はあまりにも不公正ではないでしょうか。

 【格差を広げ、少子化に】

  今ですら、認可保育園に入れた家庭と入れなかった家庭には、大きな格差があります。それが、認可園のみ無償化で、他は有償だとすると、格差は大きく広がります。まさに、天国と地獄です。

保活の激化は子どもを産み育てることの心理的ハードルを高め、出産マインドを縮小させます。すると、少子化を促進することにつながっていきます。

 【待機児童対策にまで悪影響】

  さらに、政府が進めている待機児童対策にまで大きなダメージを与えるでしょう。

  というのも、認可外保育所を無償化対象外から外す、ということは、内閣府が懸命に推し進めている「企業主導型保育」も無償化から外れるということです。

企業主導型保育は、通常の認可保育所よりも認定基準を緩くしつつ、補助は認可並みというもので、内閣府の旗振りによって昨年度スタートにも関わらず、現在871箇所、約2万人の子どもたちの受け皿になっています。

 しかし、無償化対象から外れれば、一気に参入にストップがかかるでしょう。

 なぜなら、認可との価格差があまりにつきすぎ、待機児童解消後は全く成り立たなくなるのが目に見えているためです。

 同様に、認証保育所や自治体認定の各所「準認可保育所」の先行きも絶望的となり、参入がなくなるのは当然のこと、廃園も増えて行くでしょう。

 【幼児教育無償化は低所得層に限れ】

  このように、認可外保育所排除は、何の意味もないどころか、認可保育所に入れなかった家庭をさらに痛めつけ、さらに待機児童対策にブレーキをかけることになるでしょう。

 この原因は、明らかに無意味な幼児教育無償化にあります。3-5歳の高所得者層の保育料まで無償化してしまうことで、財源が足りなくなり、認可外保育所を排除せざるを得なくなるわけです。

 よって、政府の全面無償化を以下のように修正して行くべきです。

 (1)0-2歳は低所得層のみ無償化(現行通り)

  (2)3-5歳の全面無償化予定を、低所得層のみに絞る

  (3)認可に申し込んで認可外保育所に入園した家庭には、差額保育料を補助

  (4)全面無償化撤回によって得られた予算を、全入化に振り向ける

 政府のコレジャナイ感満載の政策が、一刻も早く改められることを、願うばかりです。また、こうしたダメな政策について、徹底的な検討をしていただくためにも、国会では十分な論戦を尽くして頂きたいと思います。

 以上、保育園現場からでした。

 駒崎弘樹

1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、日本初の「共済型・非施設型」の病児保育サービスとしてフローレンスをスタート。展開。また10年から待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開。政府の待機児童対策政策に採用される。以後、内閣府非常勤国家公務員、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員、内閣府「新しい公共」専門調査会推進委員などを歴任。著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)、『働き方革命』(ちくま新書)ほか。一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2か月の育児休暇を取得。