ごまめ~の~いちょかみ・Ⅱ

趣味(落語と本)の話と大好きなうどんを中心に、ごまめになってもいちょかみで幅広くお届け

イーハトーブの数式~大西久美子

2019-05-01 05:06:07 | 本の少し
 ☆☆☆

新鋭短歌シリーズ20の本。

短歌というのは、最後にはそのひとなり、そのひとの生活環境が滲んでくるものです。
短歌の指導をうけている牛先生が、短歌には季語はありませんが、
しいて言えば、“私”そのものが、季語ではないかと、名言ですな。

短歌を詠みだして、一番最初に抵抗あったのが、
自分の思いが丸裸になることでした。

でも、気が付かない自分の奥の想いとじっくりはなしができるよい機会と
思ってから、短歌が身近に感じるようになりました。

数学に関する仕事に就かれているようで、論理と情緒の相反する要素が、
短歌の中で、化学反応しているようで楽しい。

例によって気にいった短歌を紹介

はじめから結論をもってゐるらしい父の主治医はわたしを見ない
読みさしの岩波文庫が置いてある父の書斎にまた冬が来る
もぎたてのレモンのやうにかをるだらうあなたの選ぶ夏の絵はがき
むづかしい数式みたいに連絡のつかないきみのメールアドレス
開いたら袋の中で割れてゐる鳩サブレーのまるいおなかが
伸びてゐる自分の影の先端に触れることなく上る坂道
ほどけない結び目みたいにややこしい味でありしか小倉トースト
コーヒーの香りをデスクに置いたまま朝までひとりの余白に眠る
一度だけハンドルネームが暴かれてほんとのわたしを見せてしまった

コメント
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